第29話 愛唯と孝の100分の1男性専用スマホ不正使用騒動
愛唯です。
ほぼ毎日、購買で扱っていないものや欠品を探して、私とバカ(=孝)と学外にデートに出ている(第22話、第25話)。
しかしだ。。。
付き添い1人につき、外出時間は1時間だ。すなわち、私とバカ(=孝)の学外デートは1時間に限られるし、しかもI大周辺に限られる。。。
はっきり言って、不満だ。。。
ある日、課室で私はバカ(=孝)に不満を漏らした。
私は頬を膨らませて、バカ(=孝)に語った。
「孝~、またトランクに入って、守衛を突破しようよ~(第17話、第20話)。
もっと遠くへ行って、もっと長く二人でデートしたい~!」
バカ(=孝)は困った表情で、GPSスマホを取り出し、語った。
「僕を含め、100分の1の男性は、
この特別製GPSスマホで行動を監視されています。
ですから、無理です。」
私はそのとき、単純にGPSスマホをバカ(=孝)が身に着けているのが原因だと思ったんだ。。。
つまり、、、
『GPSスマホはバカ(=孝)以外の誰かが持っていれば良いんじゃないか?』
って。。。
だからね。。。笑顔でバカ(=孝)にネダッたんだ。。。
「孝~、そのスマホ貸して?」
そして、右手をバカ(=孝)に差し出した。
バカ(=孝)は戸惑いながら、100分の1の男性のGPSスマホを手渡した。
すると、私はそのスマホを優子に手渡し、優子に語った。
「優子、そのスマホ、ちょっと預かっていてくれない?」
そして、私はバカ(=孝)の手を引っ張り、孝に語り掛けた。
「さ! 孝、出かけるわよ!」
そう、バカ(=孝)がスマホを身に着けていなければ、バカ(=孝)は外出したってわからないと思ったんだ。
あのときは。。。
バカ(=孝)はあわてて「ヤバいことになるから」と抵抗したが、私は構わずバカ(=孝)の手を引っ張り、課室を出て、駐車場まで歩こうとした。
が! 課室を出て、ちょっと歩くと、突然、バカ(=孝)の左腕につけたスマートウオッチから大きな警報音が鳴り響いた!
バカ(=孝)は「やっぱり!」と叫ぶと、有無を言わさず私の腕を振り払い、課室に走って行った!
私も戸惑いながらバカ(=孝)を追いかけて課室に行くと、優子に手渡したGPSスマホからも大きな警報音が鳴り響いていた!
バカ(=孝)は優子に向かって叫んだ!
「優子さん! すぐ、スマホを返してください!」
優子は戸惑いながら、「うん」というと、預かっていたGPSスマホをバカ(=孝)に手渡した。
バカ(=孝)はGPSスマホを受け取ると、GPSスマホとスマートウオッチの双方から鳴り響く、警報音を止めた。
その数分後だったと思う。
数人の守衛さん達が課室に走ってきた。そして守衛さんの一人がバカ(=孝)を見つけると、大声で罵った。
「また、お前か~!」
まあ、バカ(=孝)は100分の1の男性専用GPSスマホを2度もハッキングした過去があるのでね(第28話)。。。
守衛さん達からは目をつけられているのさ。。。がはは。。。
バカ(=孝)は守衛さん達に頭を下げ、謝った。
「すみません。
GPSスマホとスマートウオッチを離した位置に置いてしまいました。」
守衛さん達が課室から去ると、バカ(=孝)は私に苦笑いを浮かべて語った。
「100分の1の男性専用のGPSスマホは、スマートウオッチと離れた場所にあると、
警察や自衛隊に瞬時に連絡が行く仕組みになっているんです。」
私は頬を膨らませて不平を言う。
「それじゃあ、、、
スマートウオッチを外して、スマホと同じ場所において、
出かければ良いでしょ?」
バカ(=孝)は顔を横に振り、申し訳なさそうに話した。
「100分の1の男性専用のスマートウオッチは、
許可された場所以外で外せば、警察や自衛隊に瞬時に連絡が行きます。
許可された場所でも一定時間外せば、警察や自衛隊に連絡が行きます。」
私は戸惑いながら問うた。
「100分の1の男性は全員、
スマートウオッチを24時間装着しなくちゃいけなくて、
しかも、装着しているか監視されているってこと?」
バカ(=孝)は黙って頷いた。
私はなお戸惑いながら問うた。
「でもさー、そのスマートウオッチを、時々、、、
課室とか、教室とか、図書館とか、寮の部屋で外しているじゃん。。。」
孝はスマートウオッチを見せながら説明した。
「このスマートウオッチは外すのが面倒にできているんですよ(第28話)。。。
だから、蒸れるんですよ。。。
なので、一時的に外しても良い場所を設定可能になっています。。。。
その一時的に外しても良い場所が、
課室とか、教室とか、図書館とか、寮の部屋になっている訳です。。。」
私は「そういうこと」と呟いた。
でも、同時に
『スマートウオッチをバカ(=孝)の代わりに、
誰かが身に着けていて、
かつスマホを持っていれば良いんじゃないか?』
って思ったわけ。。。
だからね。。。私はバカ(=孝)に笑顔で語った。
「孝、そのスマートウオッチを外してくれる?
ここは課室だから、一時的に外せるんでしょ?
そのスマートウオッチとスマホを見せて?」
バカ(=孝)は戸惑いながら、スマートウオッチを外し、スマートウオッチをスマホ私に手渡した。
私はスマートウオッチとスマホを瀬名に手渡した。
そして、瀬名に笑顔で語った。
「瀬名~。そのスマートウオッチを身に着けてくれない?
そしてスマホも預かってくれない?
それなら、孝の外出が可能になるし。。。」
バカ(=孝)は叫んだ。
「それ、もっとヤバいことになります!」
そして、瀬名に近づこうとした。
だが、私は孝と瀬名の間に入り、孝を制すると、瀬名に言った。
「構わないから、瀬名、スマートウオッチを身に着けて!」
瀬名はおそるおそるスマートウオッチを身に着けた。するとすぐにスマートウオッチとスマホから大きな警報音が鳴り響いた。
慌ててバカ(=孝)は瀬名に言った。
「瀬名さん! 急いでスマートウオッチを外してください!」
瀬名は「はい」と言うと、スマートウオッチとスマホをバカ(=孝)に手渡した。
バカ(=孝)はスマートウオッチとスマホを受け取ると、スマートウオッチを身に着け、警報音を止めた。
しかし、数分後、再び、守衛さん達が課室まで走ってやってきた。
そして、バカ(=孝)を見つけると、「またまたお前か~!」と罵った。
この時も、バカ(=孝)は守衛さん達に頭を下げ、「いたずらしてすみません」と謝った。
だが、1日に2度も100分の1の男性専用のスマホとスマートウオッチのいたずらしたので、守衛さん達に謝るだけで済まず、バカ(=孝)は撫山教授に呼び出された。
バカ(=孝)はため息交じりに撫山教授の個室に向かった。
約30分後、げんなりとした表情でバカ(=孝)が戻ってきた。
そして、私に語った。
「撫山先生から叱られました。」
(ごまかし笑い)がはは。。。
バカ(=孝)よ、スマン!
バカ(=孝)はスマートウオッチを私にかざし、話を続けた。
「このスマートウオッチには個人認証機能があるんです。。。
登録された本人以外が身に着けると、
即、警察や自衛隊に連絡がいく仕組みになっているんです。。。」
私は戸惑いながらバカ(=孝)に問うた。
「スマートウオッチは本人が身につけなきゃいけないし、
スマホはスマートウオッチの近くないといけないってこと?」
バカ(=孝)は黙って頷いた。
100分の1の男性が身に着けているGPSスマホとスマートウオッチは半端ないのだ。
そして『半端ないレベルで100分の1の男性は行動を監視されている』のだ。
私は思わずバカ(=孝)に問うた。
「なぜ、こんな仕組みになっているの?」
バカ(=孝)は答えた。
「おそらく、
『誘拐・拉致された時、
なるべく早く警察や自衛隊に連絡が行くようにするため』
と思います。
スマホかスマートウオッチの片方だけ、
または両方を捨てるだけで連絡がいきますから。。。」
私はつぶやいた。
「そうか。。。」
私はふと思い、バカ(=孝)に問うた。
「スマートウオッチはどういう仕組みで個人認証をしているの?」
バカ(=孝)は首を傾げて答えた。
「さー、、、生体認証なんでしょうけど、、、
『脈拍パターン』とか『手首の血管の形』とか言われています。。。
でも、秘密だそうです。
つまり、仕組みは教えられていません。」
すると、バカ(=孝)はつぶやいた。
「そうか。。。どういう仕組みになっているのだろう?」
そう、私はバカ(=孝)の悪癖、『知的好奇心を刺激されると、止まらなくなる』(第28話)をうっかり刺激してしまった。
(やけ笑い)がはは。。。
バカ(=孝)は「調べてみよう」と呟いた。
バカ(=孝)はスマートウオッチを手に取り、調べようとした。
だが、その寸前で、里子が孝の腕を握り、制止した。
里子は私とバカ(=孝)を罵った。
「孝! 調べるのはあんたの勝手だけどね!
また、ハッキングの時のように、調べ始めたら、
数分で守衛が駆けつけてくるんじゃないの!? (第28話)」
優子も私とバカ(=孝)を罵った。
「愛唯! 孝!
私達(=愛唯と孝の除いたCCコース3年クラスメート)まで巻き込まないで!
何回、課室に守衛さん達が駆け込んできたと思っているの!」
瀬名も私とバカ(=孝)を罵った。
「愛唯さん! 孝さん!
さっきから、さんざんスマホとスマートウオッチから、
大きな警報音を私達(=愛唯と孝の除いたCCコース3年クラスメート)は
聞かされているんですよ!」
優子、瀬名、里子だけじゃなくてね。。。
他のクラスメートからも、入れ代わり立ち代わり、私とバカ(=孝)はガミガミ叱られました。
特に、私からスマホやスマートウオッチを渡され、大きな警報音を身近に聞いた優子と瀬名の怒りは激しかった。
はい。。。
私とバカ(=孝)は、ただ平謝りするしかありませんでした。。。
愛唯、孝:「「はい、、、すみません。。。」」
CCコース3年生への謝罪が終わった後、私はバカ(=孝)に話しかけた。
「でもさー。
スマートウオッチの個人認証の仕組みが分かれば、
スマートウオッチをだまして、外出可能だよね~?」
バカ(=孝)は笑顔で返す。
「そうですね。。。
個人認証となると蟹江教授の研究分野だから、
来年4年生になったら、蟹江教授の研究室に行きますか。。。」
私も笑顔で返す。
「そうね、蟹江教授のもとで技術を学んでトライしましょ。」
この会話を見た、優子と瀬名と里子はあきれて、会話を始めた。
優子は顔を横に振り、語った。
「あの二人(=愛唯、孝)、全く懲りてない。。。」
里子はため息をついて語った。
「本当、あの二人(=愛唯、孝)は『I大の最凶最悪コンビ』ね。。。」
瀬名は天井を見上げて語った。
「しょうがないから、撫山先生に相談するわ。。。」
かなり後になって、瀬名から教えてもらったんだけど、瀬名は撫山教授の個室を訪れ、相談したんだって。。。
でも、撫山教授から、「放っておけ」と返されたんだって。。。
撫山教授は笑顔で瀬名に話す。
「100分の1の男性の専用スマホとスマートウオッチは、
わが国技術のトップオブトップを集めたものだ。
最先端の技術を知り、研究や開発することは、高い山を登るようなものだ。
まだ、孝君は大学3年生で、その山の険しさを知らぬ。
孝君は来年4年生になる。そして、孝君は大学院進学希望だ。
4年生になり、そしてさらに大学院に進めば、
嫌でもその山の険しさを知るだろう。。。
山の険しさを知れば、100分の1の男性の専用スマートウオッチの
個人認証の仕組みを知ることの難しさがわかるはずだ。
しかも、さらにスマートウオッチをだますと言うのは、
もっと高い山を越えなくてはならぬ。。。
その難しさが分かれば、そんなことあきらめるさ。。。」
実際、バカ(=孝)は次の年、4年生になり、さらに次の年、大学院に進む。
でも、最先端の技術を知ることや研究することや開発することの難しさを身をもって知ったんだ。
そしたら、あのバカ(=孝)、撫山教授の予測通り、100分の1の男性の専用スマートウオッチの個人認証の仕組みを知ろうとはしなかったよ。
がはは。。。