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40歳未満の男性が100分の1となった世界。絶望の社会を明るく生きる女の子、愛唯(メイ)  作者: U.X.
番外編(その2) もし、瀬名が孝と恋人になるルートがあったとしたら
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S-29(瀬名ルート・第29話) 里子、浩司と再会する。(上)

【実話・里子目線】

 

この空想において、S-27で、私、里子はオタマで竜二を殴った。

 

このイベントにより、浩司は、私、里子が同じ大学に通っていることに気付くはずだ。

 

 

 

 

 

そして、リアルストーリーでも起きた次のイベントが発生するはずだ。

 

以降は第121話で少し触れている、『私(=里子)と浩司との再会シーン』である。

 

 

 

 

 

大学3年の大学祭の後、私(=里子)は、大学に通う車の中で、たまにこんなことを思っていた。。。

 

 

 

人は忘れられた時、本当の死を迎えるという。

 

私、里子は恋人の聡と、弟の篤志をパンデミックで亡くした。

 

聡は孝が弔ってくれた。親友の竜二も聡を覚えていてくれるだろう。

 

少なくともこの2人が生きている間、聡(=里子の亡き恋人)が本当の死を迎えることはないだろう。

 

 

 

でも、弟の篤志はどうだろう?

 

篤志を弔ってくれた友人はいない。

 

そう、聡と篤志を比べたとき、篤志の方が本当の死に近い。

 

だって、篤志(=里子の亡き弟)を覚えているのは、両親と私だけだから。

 

 

 

あのウイルスは99%の40歳未満の男性の命を奪った。

 

聡(=里子の亡き恋人)のように、わずかでも友人が生き残っている男性は、たぶん圧倒的少数派だろう。

 

 

 

ほとんどは篤志(=里子の亡き弟)のように、両親や姉妹や恋人しか亡くなった男性を覚えている人はいないだろう。

 

そう、『本当の死を迎えつつある男性の方が圧倒的多数』だろう。

 

 

 

それは『わかる』。

 

それはわかるが、姉として、弟、篤志を覚えている人が一人でも多くいてほしい!

 

そんな願いは、このパンデミック後の世界では、トンデモナイ願いなのは分かっている!

 

 

 

大学祭が終わって、1週間ほどたった時だった。

 

いつものように、授業が終わった夕方4時半、ラクロス部の練習のため、部室のある大学北側のプレハブ小屋に向かって歩いていた。

 

プレハブ小屋の近くに、一人のまだ童顔が残る男の子が立っていた。

 

 

 

誰だろう?

 

なんか見覚えがある。。。誰だっけ?。。。

 

 

 

でも、童顔が残っている、その男の子は1年生だろう。。。

 

ラクロス部にこんな恋人がいる新入部員っていたっけ?

 

 

 

そんなことを思いながら、プレハブ小屋に近づいて行った。

 

その男の子は私(=里子)に気が付くと、私(=里子)に近づき、私(=里子)に話しかけた。

 

「あなたの弟の友人で浩司と言います。

 

 何度か、あなたの弟と遊びに、

 あなたの実家にパンデミックの前まで遊びに行きました。

 覚えていませんか?」

 

 

 

その言葉に私(=里子)は驚き、ハッとした。

 

そうだ!

 

弟、篤志は、パンデミック前、友人数人を私(=里子)の家に連れてきていた!

 

その友人の中に、確かにこの顔の男の子がいた!

 

 

 

弟、篤志を覚えている男の子が生き残っていたのだ!

 

まだ、『篤志は本当の死を迎えていない』のだ!

 

 

 

それにしても、それしても、、、

 

なんという『奇跡』だろう!?

 

 

 

100分の1の確率にもかかわらず、篤志の友人が生き残っていた!

 

しかも、その生き残った男の子が、私(=里子)と同じ大学に入学していた!

 

トンデモナイ『奇跡』が私(=里子)に起きたんだ!

 

 

 

こんなにも、こんなにも、、、


うれしかったのは、、、


『パンデミック以来、はじめて』だ!

 

 

 

『とてもうれしかった』!!

 

 

 

私(=里子)は喜びに震え、思わず涙ぐみ、浩司に優しく語り掛けた。

 

「浩司君、よく生き残っていたわね。」

 

 

 

すると、浩司は部室の前でしゃがみ込み、大粒の涙を流し、嗚咽を始めた!

 

 

 

私(=里子)は慌てて、浩司に近寄った。

 

ラクロス部メンバ数名も何事かと浩司と私(=里子)を取り囲んだ。

 

その中に、キャプテンの美香さんがいた。

 

 

 

ああ、真美さん(S-12、S-21)はキャプテンを4月に交代していた。

 

というのも、パンデミック前からラクロス部のキャプテンでね、あしかけ2年もキャプテンを務めたので、「もう勘弁」と言うことで。。。

 

真美さんは4年生を2年留年し(第1話)、美香さんは3年生を1年留年した後に進級し、同じ4年生だ。

 

ラクロス部は留年したら退部だが、真美さんの場合、4年生や大学院生は強制的に留年させられたので仕方がない。

 

 

 

私(=里子)は美香さんに話しかけた。

 

「すみません、今日の練習、休みます。」

 

 

 

美香さんは戸惑いながら、「わかった」と言った。

 

私(=里子)は笑顔で浩司に話しかけた。

 

「浩司君、ちょっと話そうか?」

 

 

 

浩司は涙を拭い、無言でうなずいた。

 

私は浩司の手を引っ張って、図書館の視聴覚室に連れて行った。

 

 

 

もしや、孝や竜二のように、孤独や、生き残った罪悪感に苦しんでいないだろうかと(S-15)、心配になりながら。。。

 

 

 

 

 

図書館の視聴覚室に入ると、机を挟んで浩司を椅子に座らせた。

 

私(=里子)は、恐る恐る浩司に、優しく問うた。

 

「浩司君、、、孤独に悩んでいない?

 まさか、生き残ったことに罪悪感なんて、感じてないでしょうね?」

 

 

 

すると、浩司は再び大粒の涙を流すと、顔を下に向け、「はい」とだけ答え、嗚咽を始めた。

 

 

 

やっぱり、浩司も、孝と竜二と同様、孤独に悩み、生き残った罪悪感に苦しんでいたのだ!

 

生き残った浩司には、『何の落ち度もない』のに!!

 

生き残った浩司には、『何の罪もない』のに!!!

 

 

 

私(=里子)は椅子から立ち上がり、嗚咽している浩司の傍に行くと、浩司の肩を抱き、優しく浩司に語り掛けた。

 

「浩司君、あなたが生きていてよかった。

 弟を覚えていてくれた男の子の友人が1人でも生き残ってくれて、

 私はうれしい。」

 

 

 

いつの間にか、私(=里子)の両目から涙が流れていた。

 

浩司は私(=里子)に振り向くと、涙を流したまま、「ありがとうございます。」と答えた。

 

 

 

私(=里子)は思った。

 

 『もし、弟、篤志が生き残っていたら、

  目の前にいる浩司のように悩んだだろう。

  

  浩司を弟、篤志の代わりとして、姉として守ってやろう。』

 

て。。。

 

 

 







 


でも、『姉として守ると言っても、何をしたら良いのだろう?』


そうだ!


まずは、浩司の気分転換を図ってやろう!

 

そう言えば、浩司はI大の外に出たことがあるのだろうか?

 

 

 

私(=里子)は、浩司が落ち着いたのを見て、向かいの椅子に座り、笑顔で問うた。

 

「浩司君、I大の外に出たことある?」

  

 

 

浩司は顔を横に振って答えた。

 

「入学以来、外出の機会はなかったですから、

 大学の外にどんな店があるのかすら知りません。」

 

 

 

私(=里子)は「やっぱりね」とつぶやいた。

 

 

 

 

 

私(=里子)は浩司に彼の寮の部屋を案内してもらった。

 

その部屋の中で、傷んだもの、あるいは残り少なくなったものをチェックし、メモに取った。

 

 

 

次に、浩司と一緒に購買に行き、メモったものの中で、欠品しているもの、あるいはそもそも購買で扱っていないものを探した。

 

ま、要するに、リアルストーリーで愛唯と孝が外出するための口実を探すやり方と同じだ。(第22話、第24話)

 

 

 

すると、浩司の部屋の電動歯ブラシの替えブラシが傷んでおり、購買では替えブラシをそもそも扱っていないことがわかった。

 

もちろん、浩司に言って、浩司は担当教員に外出申請書を提出し、外出許可を得た。

 

浩司曰く、「はじめての外出許可」とのことだ。

 

 

 

 

 

私(=里子)は浩司を車に乗せ、家電量販店に向かった。

 

ダッシュで替えブラシを買うと、帰りに喫茶店に寄った。

 

もう夕方6時を回っており、一緒に夕食を食した。

 

 

 

パンデミックの前、私(=里子)、聡(=里子の亡き恋人)、久美子、竜二の4人で食事した思い出の店だ。

 

まあ、孝が第41話で言ったように、大学の近くは、NOH市のように洒落た店はない。

 

 

 

でも、安くて、おいしくて、お腹がいっぱいになる店は多いんだ。

 

これは後に愛唯が就職するRRFM社(第99話)の関連会社が、大学近辺にとても多くてね。


その従業員も使うからってのもある。

 

だから、部活している学生にはとてもありがたい店だ。

 

とくに、I大は土日は学食は営業していない。

 

そう、ラクロス部の土日の練習の合間の昼食によく使う店だ。

 

 

 

浩司は入学以来、初めての外食をとても喜んだ。

 

そりゃ、いつも夕食は、冷凍宅配弁当を部屋でチンして一人で食しているから、侘しいわな。

 

 

 

私(=里子)は食事をしながら、笑顔で浩司に問うた。

 

「浩司君、退院後、どのようにI大に入学したの?」

 

 

 

浩司は苦笑いを浮かべ答えた。

 

「昨年11月に退院したんですけど、

  

 高校の授業はリモートで、、、

 でも、パンデミック後は、実は一度も高校には登校せず、

 卒業しちゃいました。。。」

 

 

 

私(=里子)は驚いた。

 

「え!?」

 

 

 

私(=里子)の驚きをスルーして、浩司は少し寂しげに、話を続けた。

 

「どうも、パンデミックが起きた年の12月、つまり、一昨年の12月、

 僕が生き残ったことを、母は高校に伝えたんですが、、、

         

 翌日、高校から、

  『僕が生き残ったことは、クラスメートを始め、他人に知らせないように』

 と、連絡があったそうです。。。

         

 僕は入院中で、知らなかったんですけど。。。」

 

 

 

私(=里子)は更に驚いた。

 

浩司は今度は哀し気な表情になり、下を向いて、話を続けた。

 

「パンデミック翌年の10月、つまり去年の10月、

 リモートによる授業が再開されたんですけど、、、

         

 担任の先生が、リモート授業で使うPCを持って、

 僕が入院していた病室に来ました。

         

 と言っても、僕はクリーンルームにいたから、ガラス越しでしたけど、、、

         

 そのとき、担任の先生から、

  『3年生の男子生徒は、僕を除き、全員死亡した』

 と知らされました。。。」

 

 

 

私(=里子)は慌てて、浩司に問うた。

 

「ちょっと待って!

 確か、篤志(=里子の亡き弟)が通っていた高校は、

 男女合わせて約350名の3年生がいたはずで、

 3年生の男子生徒は200名近くいたはずだけど。。。」

 

 

 

浩司は哀しげにうなずき、答えた。

 

「ええ、僕を含め、約180名の3年生の男子生徒がいましたが、

 助かったのは、僕一人でした。。。」

 

 

 

浩司は哀しげな表情のまま、私を見つめ、話を続けた。

 

「病院に来た担任の先生から、

  『【君を守るため】だ。

          

   女子クラスメートには、君を含め、

   【男子生徒は1人残らず死んだと伝えてある。】

           

   女子クラスメートに、一切連絡を取らないように』

って、念押しされました。」

 

 

 

私(=里子)は天井を見上げた。

 

I大でもパンデミックの翌年のリモートによる授業再開では、孝が生き残っていたことを伏せていた。(S-9)

 

それはI大だけでなく、高校も同様だったのだ。

 

 

 

浩司は視線を下に向け、悲しそうに笑った。

 

「だから、ぼくは『幽霊』みたいなものです。。。」

 

 

 

私(=里子)は「そうか」とつぶやいた。

 

浩司の高校の女子クラスメートは、浩司は死んだと伝えてある。

 

でも、実際には浩司は生きている。

 

 

 

女子クラスメートからすれば、浩司は死んでいなくなったはずなのに存在している、『幽霊』みたいなものだ。。。


(次話に続く)

次話は2025年2月27日の午前0時に更新予定です。

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