S-24(瀬名ルート・第24話) 【独自ルート】瀬名、孝の母について語る。(後半)
(前話からの続き)
【空想・瀬名目線】
私はうなずき答えた。
「ええ。。。
私も、一度、孝さんと一緒に、孝さんの実家に訪れて、
ちゃんと挨拶したいと言ったのだけど、、、
孝さんのお母さんから断られたの。。。
それだけでなく、孝さんからも、孝さんの妹さんからも
『やめた方が良い』
って言われちゃったの。。。」
里子さんは驚き、尋ねた。
「え!? 一体なぜ?」
私(=瀬名)はため息をついて、答えた。
「孝さんの妹さんの話だと、
『100分の1の男性がいる家って珍しいから、
周囲から数奇の目で見られていて、
孝さんがいるかいないか、常に監視されている』
そうなの。。。
で、、、土日休日に孝さんが、実家にいようものなら、
『あまり親しくもなかった小学校時代の女子クラスメート』とか、
『近所の人』が娘を連れて、押し寄せてくるんだって。。。
それだけでなく、親戚や、孝さんのお母さんが勤める会社の同僚・上司が
娘さんを連れてくるんだって。。。
困ったことになるから、孝さんのお母さんは、孝さんに、
『実家に帰ってくるな』
と言ってあるんだって。。。」
(第34話)
私(=瀬名)は話を続けた。
「しかも、孝さんの妹さんは4月には高校3年生になるから、
受験勉強に集中させないといけないの。。。
(第14話)
だから、孝のお母さんから、
『孝さんを実家に連れてくるな』
と、念押しされちゃったの。。。」
里子さんは天井を見上げ、ため息をついた。
私は苦笑いを浮かべたまま、顔を横に傾け、話を続けた。
「テレビ会議の後、綾子に訊いたの。。。
綾子の恋人、俊君も同じだって。。。」
里子さんは、久美子さんのスマホに電話を掛けた。
もちろん、久美子さんの恋人の竜二さんの実家について問うた。
すると、久美子さんは電話越しでこう答えた。
「ああ、、、
竜二が実家に帰ると、いろんな人が押し寄せてくるけど、、、
すでにたくさん恋人がいることを見せつければ、
大概はあきらめて帰っていくから、、、
竜二は、よく実家に帰っているわね。。。」
(第36話)
里子さんは久美子さんの通話を切ると、「モテ男は違う!」(S-21)とぼやいた。
私(=瀬名)は、里子さんが通話を切るのを待って、話を続けた。
「実は、テレビ電話の後、1時間後くらいに、私(=瀬名)のスマホに、
孝さんのお母さんから電話があったの。。。」
里子さんは驚いた。
「え?」
私(=瀬名)は里子さんを無視して、話を続けた。
「孝さんのお母さん曰く、
『もう、孝さんの実家は、孝さんにとって安らぎの場ではないの。。。
そして、孝さんのお母さんでさえ、
I大で軟禁されている孝さんに会うには、許可がいるそうなの。。。
孝さんのお母さんは、孝さんにもう【何もしてあげられない】。』
て。。。」
(第34話)
私(=瀬名)は里子さんを見つめ、話を続けた。
「私、孝さんのお母さんから、
『孝さんをお願い』
って、頼まれちゃった。。。」
(第34話)
私(=瀬名)は顔を横に振り、里子さんに語り掛けた。
「孝さんのお母さんは、今、『とっても寂しく、悲しい』んだと思う。。。」
里子さんはハッとして、私に語った。
「実は、私(=里子)の近所に、1人だけ40歳未満の男性が助かったんだ。。。
それは17歳の男の子で、
今、NOH市が準備した高校生用の寮に住んでいるんだって。。。
入寮した当初は、その男の子の父親の話だと、
母親は『泣いてばかり』だったんだって、、、
『ようやく助かって、1年以上入院して、
退院したばかりだと言うのに、、、
やっと孤独と罪悪感から立ち直ったばかりだと言うのに、、、
それなのに、それなのに、、、【引き裂かれた】。。。』
って。。。」
里子さんはため息をつき、話を続けた。
「たぶん、孝のお母さんも、、、
その近所の男の子の母親のように、『寂しく、悲しい』んだろうな~。。。」
そう、孝さんをはじめ、100分の1の男性は一昨年の10月のパンデミックから入院し、昨年11月に退院した。
入院期間は1年以上にわたる。
そして今月、3月から、家族から引き離され、事実上の軟禁生活を送っている。
家族は、昨年の11月から、2月末までの3か月余りしか、一緒に暮らせなかったのだ。
その間、退院してきた100分の1の男性の、孤独と罪悪感を癒さなければならなかった。
孤独と罪悪感を癒すのに、かなりの月日を費やしたはずだ。
『1年余りの看病』から解放され、やっとの思いで『孤独と罪悪感を癒した』と思ったら、今度は『引き裂かれてしまった』のだ。
家族、特に母親は、どんなに『悲しく、寂しい思い』をしているのだろう?
里子さんは続けた。
「もし、弟の篤志が生き残っていたら、、
弟と家族は引き裂かれただろう。。。
折角生き残ったと言うのに。。。
弟が亡くなった時、母は半狂乱だった。。。
(S-6)
弟が生き残っても、引き裂かれたら、、、
母は近所の母親のように、泣いてばかりだったかもしれないな。。。」
私(=瀬名)は「そうか」とつぶやいた。
そして、天井を見上げ、語った。
「兄、直志が生き残っていたら、、、
兄はNOH大に軟禁され、私は何もできないわ。。。
でも、兄、直志には恋人がいなかった。。。
NOH大で1人になった兄を心配することしかできなかった。。。」
【空想・里子目線】
私、里子も思った。もし、弟、篤志が生き残ったら、寮で1人となった弟を心配することしかできなかったと。。。
弟、篤志は理数系で女子クラスメートは少なかった。
でも、その女子クラスメートに弟、篤志を『託すより方法がない』のだと。。。
まあ、弟、篤志には恋人がいなかったんだけど。。。
でも、もし弟、篤志に、恋人がいたのなら、いや恋人ができたのなら、、、
孝のお母さんと同様、『弟、篤志をお願い』と、恋人にお願いするより『選択肢がない』のだ。
『恋人に託すより選択肢がない』、孝のお母さんは、今、どんなに『寂しく、悲しい』のだろう?
【空想・瀬名目線】
私(=瀬名)は里子さんを再び見つめると、話しかけた。
「私の実家はマンションにあるのだけれど、、、
マンションに暮らしていた100分の1の男性は、
兄を含め全員亡くなってしまったわ。
でも、一人娘がいる夫婦がいて、その娘さんは結婚して、
パンデミック前は夫と、3歳になる一人息子と、
別の場所に暮らしていたの。。。
夫はあのウイルスで亡くなり、
3歳の一人息子、つまり、その夫婦の孫が奇跡的に生き残ったの。」
里子さんは驚いた。
「え?」
私(=瀬名)は里子さんを無視して話を進めた。
「その娘さんは夫が亡くなったので、母子家庭になってしまったわ。
娘さんは一人働き、生活を再建しなければならなかった。
でも、100分の1の男性の誘拐・拉致が頻発している中、
3歳の男の子を1人残して働きに行く訳にもいかないわ。。。」
里子さんは戸惑いながら問うた。
「で、どうなったんだ?」
私(=瀬名)は目を閉じて、答えた。
「その夫婦はマンションを売って、
NOH市が準備した共同住宅に引っ越しっていったわ。。。
引っ越しの際、
『NOH市が準備した共同住宅は、マンションより古くて狭い。
でも、娘と孫を守るためには、仕方がない』
と言ってね。。。」
私(=瀬名)は目を開き、里子さんを見つめ、問うた。
「その夫婦は、どんな思いで、
マンションを売り、共同住宅に引っ越していったのだろう?」
里子さんは目を閉じて、黙って、顔を横に振った。
不意に私(=瀬名)は思い出し、吹き出した。
私(=瀬名)は微笑み、里子さんに語り掛けた。
「(吹き出して)ごめん。ごめん。
話をテレビ会議に戻すと、孝のお母さんが、
『やりたいことができないとき、すべきことをしなさい』
と言ったけど、孝の妹さんの話だと、続きがあるんだって!」
(第34話)
里子さんは興味深そうに問うた。
「え!? それで?」
私(=瀬名)は微笑みながら答えた。
「孝さんのお母さんは、孝さんに、
『あなた(=孝)が罵倒されたってことは、
あなた(=孝)が【生き残った人間として相応しくない】ということ!
だから、あなた(=孝)は【相応しい人間にならなければいけない】の!!
だったら、あなた(=孝)は、今、【何をしなければいけないの!?】』
って、罵ったんだって!」
(第34話)
私(=瀬名)は微笑みながら続けた。
「孝さんはしばらく考えて、
『学生のうちは勉強しなければいけません。』
と答えたそうなの。
そしたら、孝のお母さんは
『だったら、勉強しなさい!
第一、あなた(=孝)には、【くそ真面目しか取り柄がない】の!!
あなた(=孝)から、くそ真面目をとったら何が残るというの?
この【大バカ】!!!』
って、孝さんを罵ったんだって!」
(第34話)
里子さんは笑って答えた。
「ははは! 孝のお母さんって面白い!」
(第51話)
里子さんは微笑みながら語り掛けた。
「それにしても、『ツートップ』の孝が【大バカ】かよ?
じゃあ、『スリーバック』の私(=里子)は、【どんなレベルのバカ】なんだ?」
私(=瀬名)も微笑みながら返した。
「それを言えば、私(=瀬名)だって、【大バカ】よ。
私(=瀬名)だって、孝さん同様、クソ真面目しか取り柄がないもの。。。
それなのに、大学再開直後はやる気なんてなかったし。。。」
(S-9)
里子さんは笑って返した。
「ははは! そうか、私達(=里子、瀬名)は、揃いも揃って、【大バカ】か?」
私(=瀬名)も笑って返した。
「ははは! そうね!」
【空想・里子目線】
夕方となり、私、里子は自宅に帰った。
私(=里子)は帰りの車を運転しながら、あることを思っていた。
100分の1の男性は、友達を全て亡くし、軟禁で家族からも切り離された。
今、孝や竜二を始めとした、『100分の1の男性を支えるのは、恋人しかいない』ことを。。。
私(=里子)は改めて思った。
瀬名や久美子を始めとした、恋人達は大変なのだと。。。
そして、私(=里子)は思う。
『もし、聡(=里子の亡き恋人)が生き残っていたら、
私(=里子)1人で、聡(=里子の亡き恋人)を
支えることができたのだろうか?』
と。。。
私(=里子)には、その自信が全くない。。。
『無理だ! 私(=里子)では。。。』と思いながら、私(=里子)は自宅へ車を走らせていた。。。
次話は2025年2月17日の午前0時に更新予定です。




