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40歳未満の男性が100分の1となった世界。絶望の社会を明るく生きる女の子、愛唯(メイ)  作者: U.X.
番外編(その1) もし、優子が孝と恋人になるルートがあったとしたら
222/265

Y-26(優子ルート・第26話) 【独自ルート】優子、振り袖姿を孝に見せる。(後半)

【空想】

 

 

 

私(=優子)はこう続けた。

 

「100分の1の男性は大学の外に出ることが難しいから、

 この機会(=成人式)を逃せば、

 孝は一生、振り袖姿の女性を見る機会を失くすと思う。

         

 そして、孝は私の振り袖姿を見たいと言っている。

  

 もし、孝が、翔のように、

 『私の振り袖姿を見る機会のないまま、一生を送ったら』、、、

         

  私、『一生後悔する』と思う。。。

         

  だから、『どうしても孝に私の振り袖姿を見せてあげたいんだ。』」

 

 

 

その会話の中には、綾子以外の100分の1の男性の恋人達がいた。

 

その中に2年生の100分の1の男性、仁志の恋人、和香がいた。

 

和香が口を開いた。

 

「私と仁志の成人式は別の日だから、大丈夫だけど、、、

 でも、私にもパンデミック前には別の恋人がいてね。。。

 大学に入学して、すぐ、バイト先で知り合ったの。。。

         

 パンデミックがあったのは大学1年の10月だったから、

 たった半年の交際期間だった。。。

         

 でも、その恋人に、私の振り袖姿を見せてあげたかったな~。。。

         

 だから、私も、『仁志に私の晴れ姿を見せてあげたい!』」

 

 

 

私を始め、100分の1の男性の恋人達には、沈黙が流れた。

 

数秒の沈黙の後、綾子が口を開いた。

 

「私、地元の成人式を欠席する。

 そして、振り袖を着て、I大の講堂の前で、俊を待つ。

 そして、成人式を迎える、俊を見送るの。

 そして、俊の成人式が終わるまで、講堂の前で待っている。」

 

 

 

私は慌てて問うた。

 

「ちょっ、ちょっと、待ってよ。。。

 どうして?」

 

 

 

綾子は微笑み答えた。

 

「優子さんの言う通りよ。

  

 もし、俊(=綾子の恋人)が、

 『私の振り袖姿を見る機会のないまま、一生を送った』ら、

 私、一生後悔する。

         

 そんな後悔をするくらいなら、地元の成人式は欠席して、

 振り袖姿で、大学の講堂の前で、俊を待っていた方がましよ。」

 

 

 

私も微笑んだ。

 

「そうか。。。

 じゃ、私も地元の成人式を欠席して、

 振り袖姿で、大学の講堂の前で、孝を待っている。」

 

 

 

私と綾子さんだけでなく、地元の成人式を欠席してでも、振り袖姿で大学の講堂の前で待つという、恋人達が相次いだ。

 

最終的には9名の恋人達が、振り袖姿で講堂の前で待つことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその日、一人で実家に帰り、地元の成人式を欠席して、I大で開かれる孝の成人式に行くと言った。

 

参加するとは言っていないので、嘘は言っていない。

 

 

 

両親は戸惑いながら、理由を尋ねた。

 

私は正直に答えた。

 

 

 

まず、私は、翔(=優子の亡き恋人)は『私の振り袖姿を見ずに死にたくない』と言って、亡くなったことを話した。

 

私は『翔(=優子の亡き恋人)に、私の晴れ姿を見せてあげたかった!』と、ずっと思っていたことを。。。

 

 

 

そして、孝を始め、100分の1の男性は大学や企業に軟禁され、外出の自由や旅行の自由がないことを打ち明けた。

 

二人とも驚いていた。

 

だから、今回の機会を逃せば、一生、孝は私の振り袖姿を見ることは無くなることを話した。

 

 

 

その上で、孝に私の振り袖姿を見せなければ、一生後悔すると思うと話した。

 

 

 

母はため息をついて、私のわがままを聞き入れてくれた。

 

ただし、私と孝が結婚まで至らなかったことのため、見合い写真の撮影を条件とした。

 

 

 

もちろん、私はその条件を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

I大で開かれる成人式当日の朝9時半、私と綾子を始め、9名の恋人達は振り袖姿で講堂の前にいた。

 

もちろん、孝や俊君を始め、100分の1の男性達に、私達の晴れ姿を見せてあげるためだ。

 

私の振り袖は赤無地、綾子はピンクで花柄を施した振り袖だ。

 

 

 

 

 

9時45分頃、孝をはじめとして、100分の1の男性全員が背広姿で大学講堂まで歩いてきた。

 

そして、孝は私を見つけると、驚いて駆け寄ってきた。

 

「優子さん、、、どうして?」

 

 

 

私は笑顔で返した。

 

「だって、、、私の晴れ姿をあなたに見せてあげたくって。。。

  

 もし、今日、あなたに私の晴れ姿を見せてあげなければ、

 あなたは私の晴れ姿を見ずに一生を過ごすかもしれない。。。

         

 そんな後悔をしたくなかったの。。。」

 

 

 

 

綾子の恋人、俊君も戸惑いながら、綾子に駆け寄った。

 

「綾子、、、どうして?」

  


 

綾子は笑顔で答えた。

 

「あなたに、私の晴れ姿を見せてあげたくって。。。」

 

 


俊君はなおも戸惑い、綾子に問うた。

 

「成人式はどうしたの?」

 

 


綾子は笑顔のまま答えた。

  

「欠席したわ。。。

 だって、成人式に出席するより、

 あなたに私の晴れ姿を見せてあげることの方が大切だもの。。。」

 

 

 

俊君は涙を浮かべながら、綾子さんを抱きしめ、語った。

 

「ついさっきまで、、、

 もう、綾子の晴れ姿は、一生見えないものとあきらめていた。。。

  

 ありがとう。。。」

  

  

 

綾子さんは微笑んだまま、俊君を抱きしめ、答えた。

  

「うん。。。」

 

 

 

 

 

そんな、100分の1の男性達とその恋人達の集団に、いつもより上等な背広を着こなした撫山教授が、怪訝な表情で近づいてきた。

 

「優子君、どうして君がここにいる?

 そして、どうして、女子生徒達が振り袖姿でここにいる?」

 

 

 

私は笑顔で答えた。

 

「ここ(=講堂の前)で待っているだけなら、問題ないですよね?」

 

 

 

撫山教授は困った表情で返す。

 

「まあ、そうなんだが。。。

 この寒空の中を、振り袖姿の女の子を、ここで待たせておくというのは。。。」

 

 


私は笑顔で返した。

 

「でも、それを私は望んだんです。」

 

 

 

撫山教授は腕を組んで悩んだ。

 

「うーーーん。」

 

 

 

 

 

そのとき、「お願いです! 彼女達を講堂に入れてください!」との声が上がった。

  

その声の方向に顔を向けると、1人の黒いスーツを着た中年の女性が涙を流しながら、撫山教授に近づいてきた。

 

「わたくし、本日、この大学で成人式を迎える俊の母親です。」

 

 

俊君のお母さんは話を続けた。

 

「成人式を迎える男子生徒の肉親は、

 今日だけ特別とのことで、入校許可を得て、ここに来ました。

  

 俊の恋人である、綾子さんには、俊がパンデミックの頃、入院生活の時、 

 それはそれは、献身的に看病してもらいました。。。

       

 退院直後、俊の友人が全て亡くなったのを知り、

 俊が落ち込んでいるとき、綾子さんは俊を励ましてくれました。。。

  

 そして、今日、綾子さんはご自身の成人式を欠席してまで、

 俊のために、振り袖を着て、ここに来てくれました。。。」

 

 

 

俊君のお母さんは、涙を拭おうともせず、涙声で、撫山教授に縋り続けた。

 

「どうか、彼女達を講堂に入れてください。。。

 私は講堂の中に入らなくても構いません。。。

 

 私の代わりに、彼女達を、、、せめて、綾子さんだけでも、、、

 入れてもらえませんか。。。

 

 責めを負えと言うなら、私が負います。。。

 ですから、どうか。。。」

 

 

 

綾子は、俊君のお母さんに近づき、微笑みながら、首を横に振って、話す。

 

「俊君のお母さん、良いんです。。。

 これは、私が勝手にやったことなんですから。。。」

 

 

 

俊君のお母さんは涙を流したまま、綾子に語り掛けようとしたが、言葉が出てこなかった。

 

「でも。。。」

  

  

  

2人(=綾子と俊の母)の様子を見た撫山教授は意を決したように叫んだ。

 

「えーい! ちょっと待ってろ!!」

 

 

 

撫山教授は、事務棟へ走って行った。

 

 

 

 

 

それから、10分くらい経っただろうか。撫山教授は、燕尾服を着た学長とともに、大学講堂の前に来た。

 

学長は私達を一瞥すると、語った。

 

「女の子たちを同席者として認める。ただし、参列者ではない。

 あくまで、成人を祝うのは、男子だけだ。

 それで良いなら、講堂の中に入りなさい。       

       

 それから、男子も女子も、講堂の中の席は、自由に座って良い。」

 

 

 

つまり、これは、実質的には、私と綾子をはじめとした、女子の飛び入り参加を認めたも同じだ。

 

私達、振り袖姿の女子全員は、歓声を上げた。

 

学長も撫山教授も笑みを浮かべた。

 

 

 

私と孝は一緒に大学講堂に入った。

 

 

 

 

 

 

成人式が終わって、講堂を出ると、今度は芸術系の女子大学院生が待ち受けていた。


その女子大学院生は微笑み、孝に語り掛けた。


「全男子学生12名の水彩画の人物画を描くよう、言われています。

 どうですか?」

 

 

 

孝は笑顔で答えた。

 

「もちろん!

 

 でも、僕のほかに、優子さんも一緒に描いて欲しいんですが、、、

 良いでしょうか?」

  

  

  

その大学院生は、芸術系の先生を振り返り、芸術系の先生はうなずいた。


大学院生は微笑み、答えた。


「良いですよ。。。」

 

 

 

こうして、私と孝は、大学講堂をバックに、水彩画の人物画を描いてもらった。

 

この水彩画はカラーコピーを取り、オリジナルをもらった。

 

写真も良いが、水彩画も味があって良い。

 

 

 

このオリジナルの水彩画は額縁に入れて、今も飾られている。

 

 

 

 

 

成人式の後、孝に運転してもらって、写真スタジオに向かった。

 

もちろん、撫山教授から外出許可を得ている。

 

そして写真スタジオに向かったのは、母との約束を守り、私のお見合い写真を撮るためだ。

 

ま、ついでに私と孝が映った写真も撮ってもらったが。。。

 

 

 

お見合い写真はデジタルデータをもらったが、1枚、写真に焼き付けてもらった。

 

そして、その写真は翔(=優子の亡き恋人)に送った。

 

写真には1通の手紙を添えた。

 

当然、翔(=優子の亡き恋人)あての手紙で、内容は以下の通り。

 

『翔(=優子の亡き恋人)、

 2年遅れたけど、私の成人式の写真を送るわ。

 天国で私の晴れ姿を見て。』

 

 

 

 

 

【現在の愛唯と優子の会話】

 

 リアル愛唯:「一つ聞きたいことがあるんだけど。。。」

  

  

  

 リアル優子:「もう! なに?」

  

  

  

 リアル愛唯:「もしかして、リアルストーリー(第62話~第65話)でも、

        お見合い写真を翔君(=優子の亡き恋人)に送ったの?」

  

  

  

 リアル優子:「モチ!

  

        翔のご両親は喜んだみたいで、

        後で手紙をもらったよ!

         

        『翔の遺影の正面に来るよう、

         優子さんの振り袖姿の写真を飾りました!』って。。。」

  

  

  

 リアル愛唯:「がはは。。。

  

        あ! 私も健司(=愛唯の亡き恋人)に、

         

        成人式の時の振り袖姿の写真送ろうっかな?」

  

  

  

 リアル優子:「(慌てて)やめときな! 

  

        もう成人式から何年もなってるし、、、

         

        しかも、あんた結婚しているし。。。」

  

  

  

 リアル愛唯:「(残念そうに)それもそうか。。。」

  

  

  

 リアル優子:「ま、リアルストーリー(第62話~第65話)では、

        成人式の後、母と父と手分けして、

        手あたり次第、お見合い写真を送ったけど。。。」

  

  

 

 リアル愛唯:「あ! 孝にいっぱいお見合い写真が来た件ね(第65話)。。。」

 

 

 

 リアル優子:「私が送ったお見合い写真の一つが、翔あてだったのよ。。。

 

        もちろん、母は『仕方がないわね』って、言ってくれた!」

 

 

  

(次話に続く)


次話は2024年12月23日の午前0時に公開予定です。

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