第21話 恋人達の受難(その1) ー愛唯、下宿生活を始めるー
どうも、うっかり孝をリフォームして(第20話)、絶賛後悔中の愛唯です。
いやー、優子の懸念通り、うっかり100分の1の男性である、孝をリフォームしたもんだから、多くの女子生徒が孝に言い寄るわ。言い寄るわ。。。
その言い寄る女子生徒の一部は、昨日まで、図書館で孝を誹謗中傷していた奴なんだよ(第14話)。。。
あきれたわ。。。
まあ、昨日まで誹謗中傷していた奴の全員が、言い寄っているわけじゃないんだけど。。。
なんだかな~。。。
お前、昨日まで、孝にひどいこと言ってなかったけ?
おい。。。
見た目が変わったら、手のひら返したように、態度変えるのか?
おい。。。
ま、そんな奴、孝も相手しないし。。。
私も、追い返しているけどね。。。
ええ、、、第19話で孝を後ずさりさせた、私の『怖い笑顔』で。。。
私の隣に座っていた優子は、私の『怖い笑顔』を一目見て、
『悪魔の笑顔』と名付けやがりました!
誰が『悪魔』だ! 誰が!!
まったく。。。
でも、これじゃあ、落ち着いて勉強できないので、平日については、場所を図書館から課室に移しました。
もうCCコースの女子クラスメートとは和解しているので(第18話)、こっちの方が落ちつけるし。。。
さて、私と孝は恋人として交際がスタートしたんだけど。。。
ほら、100分の1の男性は外出ができないので、会えるのはI大学の中だけでしょ?
つまり、パンデミックの前みたいに、デートを重ねて、お互いの心の距離を縮めるってことができないんだよね~。
となると、
『なるべく長く会う機会をつくるしか、
お互いの心の距離を縮めるってことができない』
わけで。。。
ということで、下宿することにしました!
もう一つ、下宿する理由として、
『なるべく長く会うことで、大学に軟禁されている孝の孤独を癒したい』
ってのもあるけど。。。
ただ、下宿するとなると、母が許可してくれるか心配だったんだよね~。
なにせ、パンデミック前は母は門限にうるさく、門限は8時。それを超える場合は、事前に連絡が必要だった。
健司(元恋人)とは夜景や花火を見に行ったことがある。。。
8時に帰れない場合は、ちゃんと帰る時間を伝え、その時間に帰らないと、健司も呼び出され、2人ともこっぴどく怒られたことがあるんだ。。。
そんな母が下宿を許してくれるのか心配だったが、新しい恋人ができて、その人を守りたいためと言ったら、あっさり許してくれた。
下宿したいと言った時、母は思案顔で私に問うた。
「その新しい恋人って、この前、あなたが連れてきて、
武(=弟)の古着を着せていた人(第20話)?
そして、あなたに夢を与えてくれた人(第8話)?」
私は黙って頷いた。
すると、母は下宿を許してくれた。
「そう。良いわ。下宿しなさい。」
私はあっさり許してくれたことに戸惑い、理由を尋ねた。
母は答えた。
「理由はいくつかあるわ。
一つ目は、私も、その人に感謝している。
私と父さんとの離婚の危機を救ってくれたことに(第8話)。。。
二つ目は、40歳未満の男性が100分の1となり、
全員が企業か学校で軟禁されているから、
そもそも門限の意味が薄れているわ。。。
三つ目は、もうあなたの進路に干渉することはやめたの(第1話)。
あなたの人生なんだもん。あなたが選択したことを私は尊重するわ。。。
四つ目は、これが最大の理由なんだけど、『あなた変わった』。
3月中、春休みにもかかわらず、毎日登校して、
あまつさえ、土日も登校しだした(第11話~第14話)。
夜も勉強している。
そんなこと、パンデミックの前まで考えられなかった。
正確には、優子さんがあなたを叩き起こして、
登校した日から(第1話、第2話)、『あなた変わった』。
それからしばらくして夢を語り、そして毎日登校しだした。
たぶん、あなたを変えたのは、その人よね?」
私は黙って頷いた。
母はため息をつくと、苦笑いを浮かべて、私に話しかけた。
「そう。
あなたを変えてくれた人を守るためと言われたら、親として反対できないわ。」
と、いうことで、下宿を許してくれた。
パンデミックの前なら、下宿は無理だったと思う。。。
補足すると、今は帰宅して夜も勉強している。
というより、プログラミングが楽しくなって、孝とメールのやり取りしながら、夜もプログラミングしている。
そもそも3月中登校したのは、孝の孤独を癒したかったのが理由だが(第10話、第13話)、結果的に孝は私を変えたことになる。
母に指摘されるまで、それに気が付かなかった。
私が下宿を願い出るまで、母は何も言わなかったが、ちゃんと私を見てくれていたんだ。。。
うれしかった。。。
というわけで、下宿することは許可を得たのだが、下宿をどこにするかが問題だった。何度も言うが、100分の1の男性は外出ができないので、会えるのはI大学の中だけだ。一番良いのは、学内にある寮なのだが、女子寮はまだ閉鎖中だ(第13話)。
となると、学外の下宿となるが、学外の下宿じゃ、孝は下宿まで会いに来れない。。。
で、どうしたもんか考えたんだけど。。。
いろいろ学内を調べてみると、大学は高さ2~3mの塀で囲まれているんだが(第2話)、突貫工事で作ったせいか、1か所だけなんだけど、『抜け穴』があるんだ。。。
もう一つ、第20話で明らかになったように、100分の1の男性には特別製のGPSスマホを所持していて、学外に出たら警察や自衛隊に通報されてしまう。。。
でも、実はGPSには計測誤差があって、その『誤差範囲なら大学の外にいてもバレない』んだ。。。
ということで、、、
その『抜け穴の近く』で、
かつ『大学敷地からGPSの誤差範囲内にあるアパート』を探して、
そこで下宿を開始しちゃいました!!!
この下宿なら、孝にも「自由に会いに来れる」と大好評!!!
何? ずる賢い? 質が悪いだと? 恋する乙女のパワーと言え!!!
さて、勉強の場所を平日は図書館から課室に移したわけだが、課室のある建物自体が、平日でも18時に閉じられてしまうので(建物から出ることは可能)、入ることは18時以降はできなくなる。。。
建物に入るには、先生あるいは4年生以上が持っている鍵がいる。4年生以上が鍵を持っているのは、研究活動のため、18時以降も建物の出入りが必要なためだ。私達は3年生のため、18時以降の建物の出入りは認められていない。
まあ、18時以降もいられるが、私達も夕食を食べるために、建物の外に出ないといけないので、18時に課室から出ることにしている。課室を出たら、私の下宿に来て、二人で夕食を食べて、20時まで一緒に勉強している。。。
え? 自炊しているかって?
ははは。。。それについては、いつか話すことにします。。。
一緒に夕食を食べるだけでも、孝は大喜び。
「いままで一人で寮の部屋で食べていたので。。。」
まあ、一人で宅配冷凍弁当をレンジでチンして食べる夕食は侘しいわね(第11話)。
20時過ぎ、遅くても21時前には孝は寮に帰る。まあ、部屋の片づけや、洗濯、風呂となると23時くらいに孝は就寝するらしい。
朝は8時45分に寮の前で集まる。購買のコンビニが8時45分に開くからだ。コンビニで朝食を買って、近くのテーブルで、一緒に朝食を食べて、授業に行くって感じ。。。
こうやって、なるべく二人でいられる時間を増やして、お互いの心の距離を縮める工夫をしてる。
『パンデミック後の世界は、恋人達にとって受難の世界』なんだ。。。
本当は大学から外出して、デートしたいんだけど、これはなかなか難しい。。。
いや、全くできないわけじゃないんだけど、そのあたりの苦労は、次話で。。。