Y-22(優子ルート・第22話) 【独自ルート】優子、下宿生活を始める。(後半)
(前話からの続き)
【空想】
孝は図書館の天井を見上げながら、こうつぶやいたんだ。
「うーん、、、外出許可を得なくても、、、
僕が自由に下宿を訪ねる方法がないわけではないです。。。」
私は驚いた。
「え? どうやって?」」
孝はスマホを取り出した。
「実は、僕が持っているスマホは100分の1の男性専用で、
僕の行動を監視しているんです。」
私はまた驚いた。
「え? どうして?」
孝は答えた。
「誘拐や拉致された時に、警察や自衛隊に通報するためです。
誘拐や拉致を検知したら、10分以内に駆けつけるよう、
警察は体制を整えており、自衛隊は出動態勢になるそうです。」
(第28話)
私は息をのんだ。
私は100分の1の男性が誘拐・拉致された店にいたことがある。
(Y-9)
あんなことが起きないよう、政府も対策を講じているのだ。
孝は続けた。
「で、、、このスマホは、許可なく、
一歩でもI大から出ると、警察や自衛隊に通報されるそうです。」
私は戸惑いながら問うた。
「つまり、、、
許可なく、あなたをI大の外に連れ出すと、、、
滅茶苦茶ヤバいことになるってこと?」
孝はうなずき、話を進めた。
「ええ。。。
でも、GPSには計測誤差があるんです。
もし、計測誤差を考慮しなかったら、本当は学内にいるのに、
学外にいると誤って判断する恐れがあります。
そうすると警察や自衛隊に通報されてしまって、
大騒ぎになるでしょ?」
私は戸惑いながら答えた。
「そりゃ、まあ、そうね。。。」
孝は微笑み話しかけた。
「おそらく、実際は、
『計測誤差を最大限考慮しても、
明らかに学外にいると判断したときのみ、
警察や自衛隊に通報する仕組み』
になっているってことです。」
私はなおも戸惑い、問うた。
「つまり?」
孝は答えた。
「計測誤差内なら、僕が学外に出ても、バレないってことです。
つまり、大学の敷地から、計測誤差内にある下宿なら、
僕は自由に訪ねることができます。」
私は戸惑いながら、孝に問うた。
「理屈は分かった。。。
でも、、、本当に大丈夫なの?」
孝は微笑みを浮かべた。
「じゃあ、実証しましょう。
優子さん、ついてきてください。」
そう言うと、孝は席を立った。私は孝の後ろについて行った。
孝はI大の構内の北側まで歩いて行った。しかも、構内にある林の中まで入り込んでいった。
私はあまりここまで来たことがない。というか、初めて来た。
まあ、パンデミック前まで、愛唯と一緒に遊んでいて、授業があるとき以外は大学には来なかったし。。。(Y-5)
私は孝に話しかけた。
「孝。どこまで行く気?」
孝は笑顔で振り返り、答えた。
「すみません、もうちょっと先です。」
そう言って、どんどん奥へ入っていった。
そして、孝は指さした。
「ほら、抜け穴があるんですよ。」
指さした先を見ると、大学を取り囲む壁に、人が一人やっと通れるくらいの隙間があった。
私は戸惑いながら孝に問うた。
「どうして、抜け穴を知っているの?」
孝は苦笑いを浮かべて答えた。
「ほら!
土日や優子さんが帰った夕方以降は暇で、
暇つぶしに学内を細かく調べていたんですよ。
そしたら、1カ所だけですが、抜け穴を見つけたんですよ。」
私は頭を抱えて呆れてしまった。
そうか、土日を持て余したのは、私だけじゃなかったんだ。。。
大学に軟禁されてしまった孝は、学内を細かく調べるしか、持て余した土日を過ごす方法がなかったのだろう。。。
だが、私にはもう一つ疑問が生まれた。
「そもそも、なんで抜け穴なんかあるの?
これじゃ本末転倒じゃ?」
その疑問には孝は答えなかった。
孝は首を傾げて語った。
「さー?
I大の周囲を短期間で高い壁で囲ったから、突貫工事だったんでしょう。。。
たぶん、そのせいでしょうね。。。」
孝は話を続けた。
「それじゃ、実証を始めますよ。」
と言い、抜け穴を通って、学外に出た。
そして、孝は抜け穴の外から、私を手招きで呼んだ。
私も恐る恐る抜け穴を通った。
孝はどや顔で語る。
「ほら! GPS計測誤差の範囲なら、何にも起きないでしょ?
実は先日、これは確かめてました。」
私はまた頭を抱えて呆れた。
「じゃ、すでに実証済だったって訳?」
孝は黙ってうなずいた。
孝は大学の壁伝いに歩いた。GPS計測誤差から離れるわけにはいかないからね。
そして壁伝いに一軒のアパートを指さした。
「ほら、あそこなら、建物が計測誤差の範囲にあるから、
僕がこっそり大学を抜け出して、訪れてもバレません。
しかも、空室がいくつかあります。」
私は問うた。
「ねえ、もしかして、それも調査済だったって訳?」
孝は黙ってうなずいた。
もう、私は呆れが突き抜けてしまった。。。
私は呆れながらも、孝に問うた。
「孝、じゃあ、なんであなたはあそこに住んでいないの?」
すると、孝は苦笑いを浮かべて、顔を横に振った。
「内見や契約するときは、
どうしても不動産屋に行く必要があるじゃないですか。。。
でも、不動産屋はGPS計測誤差の範囲にはないからですよ。
こっそり、不動産屋を訪れることが不可能だからです。」
そう言うことか。。。
GPS計測誤差範囲にあるアパートをこっそり訪ねることは可能だが、契約までは不可能なのだ。
GPS計測誤差範囲に不動産屋がない限りは。。。
ま、そもそも、GPS計測誤差範囲に不動産屋があったとしても、大学で生活しているはずの男子学生が不動産屋を訪れれば、その不動産屋が不審に思って大学に通報する可能性が高い。
つまり、バレる可能性が高い。。。
現実には、男子学生単独では、『机上の空論』に過ぎないのだ。
女子学生と共犯しない限り、これは実現不可能なのだ。
孝は話を続けた。
「あのアパート以外でも、GPS計測誤差範囲にあるアパートは数軒あります。
その中で、優子さんが気に入った部屋があれば、
僕は自由に訪ねることは可能です。」
私は笑顔で答えた。
「ヨシ!
GPS計測誤差範囲にあるアパートで
気に入った部屋に下宿することにする!」
私と孝は再び抜け穴を通って、大学に戻った。
その日の夕方、私は帰宅すると、母に下宿したいと願い出た。
理由は新しい恋人ができたこと、大学の中だけしか、その恋人に会うことができないこと。
40歳未満の男性が100分の1になった今、その恋人を失うわけにはいかないためと話した。
母は困った表情だったが、「仕方がないわね」と下宿を許可した。
母は続けて話した。
「優子、新しい恋人ができたばかりで、縁起でもないことを話すけど、、、
その恋人との間が、必ず上手くいくとは限らないわ。
結婚にまで至らないこともありうるわ。。。
一方、40歳未満の男性が100分の1になった世界では、
その恋人との間が上手くいかないことは、
即、精子提供を受けることにつながるわ。。。
だからね、、、念のため、精子提供も調べておきなさい。。。」
私は黙ってうなずいた。
ちなみに、リアルストーリーでも、下宿を始めた時(第26話)、母から精子提供を調べろと言われている。
翌日、私は購買の不動産窓口を訪ね、下宿を申し込んだ。
購買の不動産窓口は不動産屋に連絡を取り、その日のうちに不動産屋を訪ねた。
下宿したいアパートはすでに絞り込んであったので、その日のうちに内見を済ませた。
夕方、帰宅した後、どの部屋に下宿するかを決め、次の日に再び不動産屋を訪ね、賃貸借契約を結んだ。
1週間後、私は下宿を始めた。
それまでに、父と母で家電量販店に行き、洗濯機と冷蔵庫を購入した。
家電量販店の手配で、下宿に洗濯機と冷蔵庫を設置してもらった。
下宿を始めた私は、平日の日中は図書館、夕方以降は私の下宿で、私と孝は勉強した。
孝が寮に帰るときは私が付き添った。そして孝の部屋まで行って、翌日の衣服を指示した。ついでに今日着た衣服の選択の仕方も事細かく指示した。
月1回は構内の床屋に連れてゆき、髪型を整え、無精ひげは剃ってもらった。
夕食は私の下宿で、私と孝で一緒に食べた。
もちろん、すべて自炊、、、と言いたいけど、、、実は下宿するにあたり、バイトをいくつか辞めなくちゃいけなくて、、、
半分くらいは、孝の冷凍宅配弁当をおすそ分けしてもらって、生活費を抑制させてもらった。
(ごまかし笑い)ふふふ。。。
自炊する食材は孝と二人でスーパーで購入した。もちろん、孝を外出させるためだし、外出許可も得る。
土曜日の午前中は、それぞれの部屋を掃除する。
午後は図書館で勉強して、夕方以降は私の下宿で過ごした。
日曜日は隔週は、孝は他の100分の1の男性と一緒に、バスに乗ってどこかに行くんだ。
でも、それを孝は話そうとしない。「守秘義務があるから」と。。。
それ以外の日曜日は、外出許可を得て、孝を連れて、私の実家で過ごした。
(次話に続く)
次話は2024年12月15日の午前0時に公開予定です。