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40歳未満の男性が100分の1となった世界。絶望の社会を明るく生きる女の子、愛唯(メイ)  作者: U.X.
番外編(その1) もし、優子が孝と恋人になるルートがあったとしたら
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Y-17(優子ルート・第17話) 【独自ルート】優子、亡き恋人に手紙を書く。

今話はリアルストーリー第7話について、愛唯ではなく、私が孝と男子クラスメートを弔った場合を空想した話だ。

 

 

 

【空想開始】

 

私と孝は男子クラスメートの弔いを続けた。

 

リアルストーリー第7話の通り、孝は「時間がない」と言い、聡と異なり、弔いは簡単に済ませている。孝は遺影に手を合わせ、目をつぶって、全員に同じ言葉を話す。

 

「〇〇君、聡君から聞いていると思うけど、

 僕はこの命は、皆がいた世界を取り戻すために使おうと思う。

 皆がいた世界を取り戻せるよう、頑張るよ。。。

 

 でも、取り戻すには、僕が天寿を全うするくらいの時間がかかる。

 だから、僕がそちらに行った時、結果を報告するね。

 もし、皆がいた世界を取り戻せたら、皆と祝杯を挙げよう。

 聡君に音頭を取るよう頼んである。

 パンデミックの前のように、皆でバカ騒ぎしよう。

 

 本当は、もうちょっと君と話していたい。でも、『僕には時間がない』。

 天国でゆっくり話そう。。。」

 

 

 

 

 

19名の男子クラスメートの弔いを半ばすぎた頃だった。

 

私と孝が歩いていると、ふと、翔(=優子の亡き恋人)の墓が近くにあることに気付き、つぶやいた。

 

「あ、、、ここ、、、

 翔(=優子の亡き恋人)の墓の近くじゃん。。。」

 

 

 

孝は私のつぶやきが聞こえたのか、私に問うた。

 

「すみません。。。翔さんって?」

 

 

 

私は仕方なく、答えた。

 

「ああ、、、翔ってのは、私の亡き恋人。」

 

 

 

孝は私に更に問うた。

 

「翔さんの墓はこの近く何ですか?」

  

 

 

私はうんざりして答えた。

 

「ここから歩いて10分くらいかな。。。」

 

 

 

すると、孝は驚くことを言った。

 

「よければ、その翔さんの墓参りに、今から寄りたいのですが。。。」

 

 

 

私は呆れて返す。

 

「孝君、あなたが翔の墓参りする義理はないでしょ?」

 

 

 

だが、孝は頑固だ。

 

「そこを曲げて、是非ともお願いします。」

 

 

 

私はあきれ返り、渋々了解した。

 

「しょうがないわね。。。」

 

 

 

私は孝を翔の墓に連れて行った。

 

 

 

 

 






孝は翔の墓前で手を合わせて語った。

 

「翔さん、僕はあなたを直接存じ上げません。

 でも、優子さんの恋人であったということは、

 素敵な方であったであろうことは推察できます。

 

 たぶん、優子さんを悲しませぬよう、あの病の苦しみにも、あの薬の痛みにも、

 耐えておられたのだろうと思います。

 

 私もあの病にかかりました。あの苦しみと痛みはよくわかります。

 

 それでも、この世を去られたあなたの無念は、想像できません。

 

 僕があなたにできることはあまりありませんが、

 あなたがいた世界をとりもどすために、

 この命を使い、あのウイルスと戦うことを誓います。」

 

 

 

孝の目から涙が流れた。

 

私は思わず叫んだ。

 

「どうしてあなたが、見ず知らずの翔に、涙を流す必要があるの?

 どうしてあなたが、翔に、ウイルスと戦うと誓う必要があるの?

 あなたに、そんな義理はない!」

 

 

 

孝は答えた。

 

「僕には『生き残ってしまった罪』があり、その罪を償わなければなりません。」

 

 

 

まったく、こいつ(=孝)は。。。

 

私が聡の実家で「あなたに罪はない!」と言っても(Y-15)、『生き残ってしまった罪』を抱えたままだ。。。

 

 

 

 

 

でも同時にね。。。

 

これはリアルストーリーでも同じなんだけど、、、

 

このとき、孝にあきれたのと同時に、単純に『うれしかった』んだ。。。。

 

 

 

だって、『翔の墓参りをしているのは、【私一人だけ】だった』から。。。(Y-10)

 

私と、翔のご両親以外、、、

『誰も翔の死を悲しむ者は【いなかった】』から。。。

 

 

 

そりゃ、とても多くの人が、、、あのウイルスで、、、自分の夫や、恋人や、息子や、兄弟を失ったんだ。。。

 

あの当時は、、、まだまだ、自分のことで精一杯で、、、


『他人の夫や、恋人や、息子や、兄弟の死を悲しむ者なんて、

 【いなかった】』んだ。。。

 

 

 

ずっと思ってたんだ。。。

 

きっと、この先、未来永劫、

『翔の死を悲しむ者は【いないだろう】』って。。。

 

 

 

それなのに、、、見ず知らずの孝が、、、涙を流して、翔を弔ってくれたんだ。。。。

 

そう、、、本当は、とっても『うれしかった』んだ。。。

 

 

 

 

 






孝は翔の墓を見渡した。

 

言いにくそうだったが、孝は私に語り掛けた。

 

「優子さん、、、翔さんの墓が荒れているようですが。。。」

 

 

 

私も話しにくかったが、意を決して話した。

 

「翔は一人息子でね。。。

 ご両親は翔を失った悲しみから立ち直れていないんだ。。。」

 (Y-10)

 

 

 

私は続けて話した。

 

「私がご両親を慰めてあげたいんだけど、、、

 私には資格がないの。。。」

 

 

 

そう言うと、私は顔を横に振った。

 

 

 

 

 

孝は戸惑いながら、問うた。

 

「資格がないって、、、どうして?」

 

 

 

私は空を見上げて答えた。

 

「翔が入院していた時、翔の看病したんだけど、、、

 翔の状態がすさまじくって、逃げ出しちゃったの。。。」

 (Y-7)

 

 

 

孝も空を見上げて語った。

 

「僕も闘病生活はつらかった。

  

 でも、ガラス越しに母と妹が涙を流しながら、いつも僕を見ていました。。。

         

 たぶん、母と妹も、優子さんのように、

 逃げ出したいくらい、辛かったんでしょーね。。。

         

 『初めて気づきました』。。。」

 

 

 

孝の言葉を聞いて、私はハッとしたんだ。

 

翔は病と薬の副作用に苦しみながら、私が涙を流していたのを見ていた。。。

(Y-7)

 

もしかしたら、、、

私が逃げ出したいくらい辛い気持ちだったのを、翔は気付いていたかもしれない。。。

 

 

 

そう、、、

あのとき、私は、自分ことばっかりで、、、

翔のことを見ていなかったんだ!

 

 

 

 

 

孝は思案顔で、私に話しかけた。

 

「一つアイデアがありますが、、、試してみますか?」

 

 

 

私は戸惑った。

 

「え!?」

 

 

 

孝は彼の家庭の話を始めた。

 

「実は、僕、高校の時、父を亡くしているんです。」

 

 

 

私はさらに戸惑った。

 

「え!?」

 

 

 

私の戸惑いにもかかわらず、孝は話を続けた。

 

「父が亡くなったとき、大変後悔しました。

  『どうして、父を支えなかったんだろう?』

 って、、、

 僕だけでなく、たぶん、家族全員がそうだったと思います。。。

 

 父が亡くなってしばらくたった後、父のスマホに電話が入りました。


 電話を掛けてきた人はFSに住んでいる人で、

 それまで、父の死を知らなかったそうです。


 代わりに応対した母から、父の死を知らされ、ショックを受け、

 無言で電話を切ったそうです。。。

 

 でも、1時間後、その人から、父に『安らかに眠れ』ってタイトルで、

 スマホにメールが届きました。


 そのメールには父との思い出が、たくさん書かれていました。。。

 

 そのメールを読んだとき、僕はこう思いました。

  『父は45歳の短い人生だったけど、

   こんな素晴らしい友人がいて、素晴らしい人生を送った』

 んだって、心が軽くなりました。。。」

 

 

 

孝はさらに続ける。

 

「優子さん、同じようなことをしてみませんか?

  『翔さんの人生は短かったが、【素晴らしい人生】だった』

 と、恋人の優子さんが【証明】してあげるんです。

 

 翔さんのご両親の『悲しみを癒せる』かもしれません。」

 

 

 

孝はさらに続ける。

 

「父の場合はスマホのメールでしたが、

 翔さんの場合は亡くなって1年以上たってますから、

 翔さんのスマホはもうないかもしれませんので、手紙が良いでしょう。。。

 

 『翔さんに手紙を書く』んです。

 

 内容は、翔さんが優子さんにとって、

  『どんなに【素晴らしい恋人】であったか』

 を書くんです。

 

 優子さんなら、

  『翔さんがどんなに素晴らしい恋人だったか』

 なんて、簡単に書けますよね?」

 

 

 

私は黙ってうなずいた。そう、そんなもん、簡単なことだ。

 

 

 

孝はこう締めくくった。

 

「翔さんへの手紙は、直接、翔さんには届きません。

 でも、翔さんの『ご両親には届きます』。

 

 『翔さんが、優子さんにとって、素晴らしい恋人だった』

 と分かった時、同時に、翔さんのご両親は、

  『翔さんは、【素晴らしい恋愛】をしたのだから、

   短くても【素晴らしい人生】を送った』

 と思うかもしれません。

        

 間接的ではあるけれど、今、優子さんが翔さんにできる、

 『最大の愛』ではありませんか?」

 

 

 

 

 

 

私はハッとした。

 

そうか!

 『翔はわずか20年の短い人生だったけど、【素晴らしい人生】を送った』

と証明すれば、翔のご両親を癒すことができる!

 

それは、『私にしかできない』のだ!

 

これが、今、私が翔にできる『最大の愛』じゃないか!

 

 

 

私はすぐ、手紙を書きたくなった。だから、私は笑顔で孝に語り掛けた。

 

「ねえ、孝君、、、

 コンビニとファミレスに寄りたいんだけど、、、

 良い?」

 

 

 

 

 

もちろん、孝は快諾した。

 

私と孝はコンビニに寄り、私は便箋と封筒を購入した。

 

次いで、ファミレスに行き、私と孝は別のテーブルに座り、私はコーヒーとケーキを、孝はパフェを頼んだ。

 

私は何度も手紙を書きなおし、1時間ぐらいで翔への手紙を書き上げた。

 

 

 

手紙の内容は、翔との思い出だ。そして、翔が私にとって、どんなに素晴らしい恋人であったかを。。。

 

そして、手紙の最後に、こうと締めくくった。

 

 『翔、高校1年からの4年半、私に素晴らしい思い出をくれて、ありがとう。』

 

 

 

手紙を投函すると、私の心の中にずっとあった、罪悪感がちょっとだけ薄れた。

 

 

 

 

 

私は投函すると、つぶやいた。

 

「孝って、こんな奴だったんだ。。。

 今まで、ちゃんと見ていなかったな。。。

 そうか、瀬名が孝に片思いしているのは、こういうことか。。。」

 

 

 

そう、聡の実家でウイルスに勝つ方法を考えるだけの頭脳、そして罪悪感に悩む私に何をすべきかを知恵を持っていたんだ。。。

 

そして、、、瀬名が孝に片思いしている理由を知ったんだ。。。

 

 

 

ちなみに、これはリアルストーリーでも同じだ。

 

 

 

 

 

そして、気付いたんだ。

 

(孝って、母の言う『原石かも?』)

 

って。。。

 

 

 

ちなみに、これもリアルストーリでも同じだ。。。

 

 

 

 

 

私は孝に笑顔で語った。

 

「孝~。男子クラスメートの弔いに行こう!」

 

 

 

私はこの後、孝の観察を始めた。

 

というのも、2つ問題があったからだ。

 

まず1つ目の問題は『私が孝という原石を磨けるのか』ってことだ。

 

そして2つ目の問題は、これが最大の問題なんだけど、『男性として孝をみることができるのか』ってことだ。

 

 

 

だって、パンデミック前まで嫌っていた男を、『男性として見る』ことは難しいじゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【現在の愛唯と優子の会話】

 

 リアル愛唯:「なに? 

  

        翔の墓で、手紙を書いた後(第7話)、孝の観察を始めたの?

         

        ついでに、『原石』って言葉は、第11話で言っていたけど、、、

         

        あれは、あんたの母親がオリジナル?」

 

 

 

 リアル優子:「そういうこと!」

 

 

 

 リアル愛唯:「なるほどね~。

  

        ところでさ~、優子。。。

         

        あんたの空想に一つだけ、

        私からリクエストがあるんだけど。。。」

 

 

 

 リアル優子:「(戸惑いながら)リクエストって何?」

 

 

 

 リアル愛唯:「実はね。。。このリクエスト反映してくんない?

  

        (リクエストを話す)」

 

 

 

 リアル優子:「(リクエストを聞き驚く)ええ~!」

 

 

 

(次話に続く)


次話は2024年12月5日の午前0時に公開予定です。

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