Y-17(優子ルート・第17話) 【独自ルート】優子、亡き恋人に手紙を書く。
今話はリアルストーリー第7話について、愛唯ではなく、私が孝と男子クラスメートを弔った場合を空想した話だ。
【空想開始】
私と孝は男子クラスメートの弔いを続けた。
リアルストーリー第7話の通り、孝は「時間がない」と言い、聡と異なり、弔いは簡単に済ませている。孝は遺影に手を合わせ、目をつぶって、全員に同じ言葉を話す。
「〇〇君、聡君から聞いていると思うけど、
僕はこの命は、皆がいた世界を取り戻すために使おうと思う。
皆がいた世界を取り戻せるよう、頑張るよ。。。
でも、取り戻すには、僕が天寿を全うするくらいの時間がかかる。
だから、僕がそちらに行った時、結果を報告するね。
もし、皆がいた世界を取り戻せたら、皆と祝杯を挙げよう。
聡君に音頭を取るよう頼んである。
パンデミックの前のように、皆でバカ騒ぎしよう。
本当は、もうちょっと君と話していたい。でも、『僕には時間がない』。
天国でゆっくり話そう。。。」
19名の男子クラスメートの弔いを半ばすぎた頃だった。
私と孝が歩いていると、ふと、翔(=優子の亡き恋人)の墓が近くにあることに気付き、つぶやいた。
「あ、、、ここ、、、
翔(=優子の亡き恋人)の墓の近くじゃん。。。」
孝は私のつぶやきが聞こえたのか、私に問うた。
「すみません。。。翔さんって?」
私は仕方なく、答えた。
「ああ、、、翔ってのは、私の亡き恋人。」
孝は私に更に問うた。
「翔さんの墓はこの近く何ですか?」
私はうんざりして答えた。
「ここから歩いて10分くらいかな。。。」
すると、孝は驚くことを言った。
「よければ、その翔さんの墓参りに、今から寄りたいのですが。。。」
私は呆れて返す。
「孝君、あなたが翔の墓参りする義理はないでしょ?」
だが、孝は頑固だ。
「そこを曲げて、是非ともお願いします。」
私はあきれ返り、渋々了解した。
「しょうがないわね。。。」
私は孝を翔の墓に連れて行った。
孝は翔の墓前で手を合わせて語った。
「翔さん、僕はあなたを直接存じ上げません。
でも、優子さんの恋人であったということは、
素敵な方であったであろうことは推察できます。
たぶん、優子さんを悲しませぬよう、あの病の苦しみにも、あの薬の痛みにも、
耐えておられたのだろうと思います。
私もあの病にかかりました。あの苦しみと痛みはよくわかります。
それでも、この世を去られたあなたの無念は、想像できません。
僕があなたにできることはあまりありませんが、
あなたがいた世界をとりもどすために、
この命を使い、あのウイルスと戦うことを誓います。」
孝の目から涙が流れた。
私は思わず叫んだ。
「どうしてあなたが、見ず知らずの翔に、涙を流す必要があるの?
どうしてあなたが、翔に、ウイルスと戦うと誓う必要があるの?
あなたに、そんな義理はない!」
孝は答えた。
「僕には『生き残ってしまった罪』があり、その罪を償わなければなりません。」
まったく、こいつ(=孝)は。。。
私が聡の実家で「あなたに罪はない!」と言っても(Y-15)、『生き残ってしまった罪』を抱えたままだ。。。
でも同時にね。。。
これはリアルストーリーでも同じなんだけど、、、
このとき、孝にあきれたのと同時に、単純に『うれしかった』んだ。。。。
だって、『翔の墓参りをしているのは、【私一人だけ】だった』から。。。(Y-10)
私と、翔のご両親以外、、、
『誰も翔の死を悲しむ者は【いなかった】』から。。。
そりゃ、とても多くの人が、、、あのウイルスで、、、自分の夫や、恋人や、息子や、兄弟を失ったんだ。。。
あの当時は、、、まだまだ、自分のことで精一杯で、、、
『他人の夫や、恋人や、息子や、兄弟の死を悲しむ者なんて、
【いなかった】』んだ。。。
ずっと思ってたんだ。。。
きっと、この先、未来永劫、
『翔の死を悲しむ者は【いないだろう】』って。。。
それなのに、、、見ず知らずの孝が、、、涙を流して、翔を弔ってくれたんだ。。。。
そう、、、本当は、とっても『うれしかった』んだ。。。
孝は翔の墓を見渡した。
言いにくそうだったが、孝は私に語り掛けた。
「優子さん、、、翔さんの墓が荒れているようですが。。。」
私も話しにくかったが、意を決して話した。
「翔は一人息子でね。。。
ご両親は翔を失った悲しみから立ち直れていないんだ。。。」
(Y-10)
私は続けて話した。
「私がご両親を慰めてあげたいんだけど、、、
私には資格がないの。。。」
そう言うと、私は顔を横に振った。
孝は戸惑いながら、問うた。
「資格がないって、、、どうして?」
私は空を見上げて答えた。
「翔が入院していた時、翔の看病したんだけど、、、
翔の状態がすさまじくって、逃げ出しちゃったの。。。」
(Y-7)
孝も空を見上げて語った。
「僕も闘病生活はつらかった。
でも、ガラス越しに母と妹が涙を流しながら、いつも僕を見ていました。。。
たぶん、母と妹も、優子さんのように、
逃げ出したいくらい、辛かったんでしょーね。。。
『初めて気づきました』。。。」
孝の言葉を聞いて、私はハッとしたんだ。
翔は病と薬の副作用に苦しみながら、私が涙を流していたのを見ていた。。。
(Y-7)
もしかしたら、、、
私が逃げ出したいくらい辛い気持ちだったのを、翔は気付いていたかもしれない。。。
そう、、、
あのとき、私は、自分ことばっかりで、、、
翔のことを見ていなかったんだ!
孝は思案顔で、私に話しかけた。
「一つアイデアがありますが、、、試してみますか?」
私は戸惑った。
「え!?」
孝は彼の家庭の話を始めた。
「実は、僕、高校の時、父を亡くしているんです。」
私はさらに戸惑った。
「え!?」
私の戸惑いにもかかわらず、孝は話を続けた。
「父が亡くなったとき、大変後悔しました。
『どうして、父を支えなかったんだろう?』
って、、、
僕だけでなく、たぶん、家族全員がそうだったと思います。。。
父が亡くなってしばらくたった後、父のスマホに電話が入りました。
電話を掛けてきた人はFSに住んでいる人で、
それまで、父の死を知らなかったそうです。
代わりに応対した母から、父の死を知らされ、ショックを受け、
無言で電話を切ったそうです。。。
でも、1時間後、その人から、父に『安らかに眠れ』ってタイトルで、
スマホにメールが届きました。
そのメールには父との思い出が、たくさん書かれていました。。。
そのメールを読んだとき、僕はこう思いました。
『父は45歳の短い人生だったけど、
こんな素晴らしい友人がいて、素晴らしい人生を送った』
んだって、心が軽くなりました。。。」
孝はさらに続ける。
「優子さん、同じようなことをしてみませんか?
『翔さんの人生は短かったが、【素晴らしい人生】だった』
と、恋人の優子さんが【証明】してあげるんです。
翔さんのご両親の『悲しみを癒せる』かもしれません。」
孝はさらに続ける。
「父の場合はスマホのメールでしたが、
翔さんの場合は亡くなって1年以上たってますから、
翔さんのスマホはもうないかもしれませんので、手紙が良いでしょう。。。
『翔さんに手紙を書く』んです。
内容は、翔さんが優子さんにとって、
『どんなに【素晴らしい恋人】であったか』
を書くんです。
優子さんなら、
『翔さんがどんなに素晴らしい恋人だったか』
なんて、簡単に書けますよね?」
私は黙ってうなずいた。そう、そんなもん、簡単なことだ。
孝はこう締めくくった。
「翔さんへの手紙は、直接、翔さんには届きません。
でも、翔さんの『ご両親には届きます』。
『翔さんが、優子さんにとって、素晴らしい恋人だった』
と分かった時、同時に、翔さんのご両親は、
『翔さんは、【素晴らしい恋愛】をしたのだから、
短くても【素晴らしい人生】を送った』
と思うかもしれません。
間接的ではあるけれど、今、優子さんが翔さんにできる、
『最大の愛』ではありませんか?」
私はハッとした。
そうか!
『翔はわずか20年の短い人生だったけど、【素晴らしい人生】を送った』
と証明すれば、翔のご両親を癒すことができる!
それは、『私にしかできない』のだ!
これが、今、私が翔にできる『最大の愛』じゃないか!
私はすぐ、手紙を書きたくなった。だから、私は笑顔で孝に語り掛けた。
「ねえ、孝君、、、
コンビニとファミレスに寄りたいんだけど、、、
良い?」
もちろん、孝は快諾した。
私と孝はコンビニに寄り、私は便箋と封筒を購入した。
次いで、ファミレスに行き、私と孝は別のテーブルに座り、私はコーヒーとケーキを、孝はパフェを頼んだ。
私は何度も手紙を書きなおし、1時間ぐらいで翔への手紙を書き上げた。
手紙の内容は、翔との思い出だ。そして、翔が私にとって、どんなに素晴らしい恋人であったかを。。。
そして、手紙の最後に、こうと締めくくった。
『翔、高校1年からの4年半、私に素晴らしい思い出をくれて、ありがとう。』
手紙を投函すると、私の心の中にずっとあった、罪悪感がちょっとだけ薄れた。
私は投函すると、つぶやいた。
「孝って、こんな奴だったんだ。。。
今まで、ちゃんと見ていなかったな。。。
そうか、瀬名が孝に片思いしているのは、こういうことか。。。」
そう、聡の実家でウイルスに勝つ方法を考えるだけの頭脳、そして罪悪感に悩む私に何をすべきかを知恵を持っていたんだ。。。
そして、、、瀬名が孝に片思いしている理由を知ったんだ。。。
ちなみに、これはリアルストーリーでも同じだ。
そして、気付いたんだ。
(孝って、母の言う『原石かも?』)
って。。。
ちなみに、これもリアルストーリでも同じだ。。。
私は孝に笑顔で語った。
「孝~。男子クラスメートの弔いに行こう!」
私はこの後、孝の観察を始めた。
というのも、2つ問題があったからだ。
まず1つ目の問題は『私が孝という原石を磨けるのか』ってことだ。
そして2つ目の問題は、これが最大の問題なんだけど、『男性として孝をみることができるのか』ってことだ。
だって、パンデミック前まで嫌っていた男を、『男性として見る』ことは難しいじゃない?
【現在の愛唯と優子の会話】
リアル愛唯:「なに?
翔の墓で、手紙を書いた後(第7話)、孝の観察を始めたの?
ついでに、『原石』って言葉は、第11話で言っていたけど、、、
あれは、あんたの母親がオリジナル?」
リアル優子:「そういうこと!」
リアル愛唯:「なるほどね~。
ところでさ~、優子。。。
あんたの空想に一つだけ、
私からリクエストがあるんだけど。。。」
リアル優子:「(戸惑いながら)リクエストって何?」
リアル愛唯:「実はね。。。このリクエスト反映してくんない?
(リクエストを話す)」
リアル優子:「(リクエストを聞き驚く)ええ~!」
(次話に続く)
次話は2024年12月5日の午前0時に公開予定です。