第20話 リフォーム騒動
(前話からの続き)
私は孝のリフォームを開始した。
まずは孝を学内の床屋に連れてゆき、髪型は私が細かく指示して、髪型を修正し、無精ひげは剃ってもらった。
次に私は、孝と一緒に、孝の寮の部屋に行った。
全ての上着とズボンを見て、全部捨てるように言った。
「だめね。センスがないものばかり、、、
良いものでも洗濯の仕方が悪いから、ヨレヨレになっちゃっているわ。。。
全部捨てなさい。」
孝は困った顔で言う。
「それじゃ、着るものがありません。」
仕方がないので、私と孝は大学の購買に行ったが、購買には男性用の下着も上着もズボンもなかった。
孝曰く。
「大学内で20名強しか100分の1の男性はいないので、仕方ないです。。。」
大学の購買で買えないとなると、外出して買う必要がある。孝は続けた。
「男性用の下着はショッピングモールでも買えますが、
男性用の上着やズボンを売っているところは、
数百万都市である、NOH市の繁華街まで行かないとありません。」
孝は続ける。
「NOH市繁華街に行くには、5名の同行者がいるため、
CCコースの女子クラスメートに同行を頼んだうえ、外出許可を得ましょう。」
昨日はガイダンスだったので、女子クラスメートは全員そろっていたが、新学期の授業開始は数日後なので、その日は、あまり多くの女子クラスメートはいなかった。私と優子と瀬名と里子だけだった。
私と優子と瀬名は図書館にいて、里子は部活をしていた。
今から思えば、数日待って、女子クラスメートを集めればよかったのだが、私はすぐにリフォームしたかったので、また『やっちまった』のだ。。。
そう、『孝を私の車のトランクに押し込んで、大学の検問を突破してしまった』のだ。。。
今回も孝はトランクに押し込む際に、何度も「問題があるから」とか「ヤバいからダメです」と嫌がった。。。
でも、私ったら、すぐにリフォームしたかったから、有無を言わさず、孝をトランクに押し込んじゃたんだよね~。。。
今から思うと、『ちゃんと訳を聞いておけばよかった』んだけど。。。
まさか、『本当にヤバいことになる』なんて知らなくって。。。
ははは。。。
さて、孝の衣服を買うために、まず、最初に近くのショッピングモールに寄った。しかし、男性用の衣服を売っている店がなかった。
何軒かショッピングモールに寄ったが、男性用の衣服を売っている店はなく、売っている店があったとしても、売られている衣服は中高年向けだった。孝に試着させると、年齢(21歳)より、老けた感じになってしまう。。。
なにより、せっかく変えた髪型が邪魔して、顔と上着が合わないのだ。まあ、下着はあまり年齢と関係ないので、下着だけ、その店で購入したが。。。
だが、上着とズボンはその店では購入しなかった。今思うと、ズボンくらい、その店で買うべきだったのだが。。。
NOH市繁華街のデパートで、ようやく若い男性用の上着やズボンを売っている店を見つけた。
だが、今度は高価で、安いものでもウン万円、それどころか、ウン十万円のものもあって、とても私と孝の所持金で買える代物ではなかった。。。
私は頭に来て、孝に問うた。
「どうして、男性用の上着やズボンを買うのが、こんなに難しいの?」
孝は苦笑いを浮かべて答えた。
「40歳未満の男性が100分の1になったためです。
市場規模が100分の1になったので、
男性用衣類のニーズが100分の1になったので、
『40歳未満の男性の衣服を扱う業者が、市場から撤退』
しちゃったんです。。。」
うーん、『100分の1になるってことは、衣服に困る』ってことね。。。
考えてもいなかった。。。
さて、無理やり孝を外に連れ出して、何も衣服が手に入らないってのは困る。。。
特に、孝の上着とズボンは全部捨てさせなきゃならないぐらい、ひどい。。。
どうしたものかと考えていると、、、
ふと、孝が、弟の武と、背格好がほぼ同じであることに気付いた。。。
もしかしたら、『武の古着を活用できるかも?』って思ったんだ。。。
そこで私は孝を連れて、私の実家に向かった。
実家にいた母は、突然の孝の訪問に驚き、尋ねた。
「新しい、愛唯の恋人?」
私は面倒くさくなったので、乱暴に答えた。
「衣服をちゃんと選べないバカよ!」
母は目を丸くして、無言になった。
私は武の古着のいくつかを孝に試着させ、似合うものを選び、持って帰った。
まあ、苦労のかいもあり、髪型を含めて、60点くらいのイケメンには仕上がった。
合格最低点くらいのイケメンには仕上がったと思う。
ちなみに、健司(=元恋人)は90点のイケメンだが。。。
私は、孝を車のトランクに押し込んで、大学に帰った。
大学に帰ったら、孝を学外に連れ出したことがバレてて、すぐに私と孝は撫山教授に呼び出されて、こってり絞られました。。。
いやー、『仏の撫山』が怒ると、あんなに怖いとは。。。
本当に怖かった!
撫山教授って、怒るとメチャクチャ怖いんだ!!
実は孝のスマホって、『100分の1の男性専用のGPSスマホ』でね。。。
『大学から一歩でも外に出ると警察や自衛隊に通報される』んだって。。。
一歩間違えると、
私は『誘拐犯として逮捕』されたかもしれなかったんだって。。。
それどころか、最悪、
私は『テロリストとして射殺』されたかもしれなかったんだって。。。
それを知った時、私は撫山教授の個室で、撫山教授の面前にもかかわらず、孝を罵った!
「このバカ(=孝)! それ早く言いなさいよ!!」
孝は困った表情で反論する。
「いや、、、だって、、、『ヤバいからダメだ』と何度言っても、、、
愛唯さん、ちっとも、聞く耳持たなかったじゃないですか。。。」
確かに、訳も聞かず、有無を言わさず、孝をトランクに押し込んだのは私だ。その非は心の中では認めていたのだが、撫山教授の面前にもかかわらず、逆切れして孝を罵った。
「うるさい! バカ(=孝)!!」
孝は何か言いたげな表情であったが、何も言わなかった。
というより、、、私の怒りの表情から、何も言えなかったのだろう。。。
「・・・」
(ごまかし笑い)ははは。。。
実はね、聡君の墓に行くときも(第17話)、今回も、トランクに押し込む際に、孝が撫山教授に緊急連絡してたんだって。。。
だから、警察や自衛隊が出動する大事にならずにすんだそうです。。。
いやー、ヤバかった。。。ははは。。。
聡君の墓に行ったときは、『初犯である』ことと、『孝と女子クラスメートとの和解をさせた』ってことで、『不問』に付してもらいました(第17話)。。。
ほら、聡君の墓から大学に戻っていったとき、孝は「撫山先生に会ってきます!」と言って、走っていったじゃない(第18話)?
あの時、孝は撫山教授の個室で、必死にとりなしてくれたんだって。。。
しかも、、、不問に付すことを言質まで取ってくれたんだそうです。。。
今振り返ると、第18話で孝が走って課室に来た時、『言質を取るべき理由を問い詰めれば良かった』んだよねー。
でも、あの時は、和解した女子クラスメート達が「孝」って気安く呼ぶ姿に気を取られちゃったんだよねー。
まあ、今回、孝の上着やズボンを買うのは、『私の個人的な理由』ということで、しかも『再犯』ともあって、『目をつぶってはもらえません』でした。。。
で、、、撫山教授に『さんざん叱られた』って訳。。。
ははは。。。
今回の件は、私に大きなダメージが、もう一つあってね。。。
ほら、パンデミックの前までは、プロローグにあるとおり、私は
『かわいくて、気品のある、お嬢さん』
のイメージを周辺に浸透させていたじゃない?
でもね。2度も孝を車のトランクに押し込んで検問を突破しちゃったので、
『何をしでかすかわからん、危険な女の子』
と先生達は認識してしまったのだ!!
そう、『私のイメージが崩壊してしまった』のだ!!!
このイメージ崩壊に気がついたとき、私は頭を抱えて、再び撫山教授の面前にもかかわらず、八つ当たりして孝を罵った。
「(イメージ崩壊は、)全部、バカ(=孝)のせいよ!
どうしてくれるのよ!!」
孝は再び困った表情で反論した。
「いや、、、だから、、、『問題があるから』と何度言っても、、、
愛唯さん、全く、聞き入れてくれなかったじゃないですか。。。」
私は心の中で非は認めていたが、撫山教授の面前にもかかわらず、再び逆切れして罵った。
「うるさい! バカ(=孝)!!」
やっぱり、孝は何か言いたげな表情であったが、何も言わなかった。
「・・・」
(やけ笑い)ははは。。。
え? そもそも、『なぜ、孝をリフォームしたかったのか?』って。。。
ほら、第11話で優子が、
「リフォームすると、翔や健司ほどではないけど、
結構イケメンに仕上がると思うよ。。。」
って言ったじゃない?
実は、あれから、孝をどうリフォームすると良いかって、図書館で孝と向かい合って座りながら、ず~っと想像していたんだ。。。
第11話は3月2日のことだから、1か月以上、ず~っと想像していたんだ。。。
で、、、孝と恋人同士になったので、我慢できなくなったってわけ。。。
そう、優子があんなこと言わなきゃ、私はこんなことしなかったのだ!
私は悪くないのだ!!
全部、優子が悪いのだ!!!
諸悪の根源は優子なのだ!!!!
悪の権化は優子なのだ!!!!!
後の優子:「愛唯! いい加減にしなさいよ!!
まったく、あんたが回顧録を書くって言うから、
心配してチェックしていたら、
やっぱり他人のせいにしている。。。」
後の瀬名:「本当だ。
全部、愛唯さんが悪いのに、
孝さんと優子さんのせいにしてる。。。」
後の愛唯:「・・・」
後の優子:「まあ、これが愛唯の最初の『悪事』だったわね。。。」
後の瀬名:「これで終わらなかったんですよね~。。。」
後の愛唯:「・・・」
話を元に戻そう。
やっと、撫山教授から解放され、私と孝は図書館に戻った。優子は一人で図書館で勉強していた。
私は優子の隣の席に座り、孝は向かい側の席に座った。
孝を一目見た優子は私に小声で語る。
「愛唯、孝のリフォーム、なかなかじゃない。。。」
私はすまして小声で返す。
「でしょう。。。
でも、私と付き合うなら、少なくともこのレベルじゃないと。。。」
だが、優子は、私の盲点を突いた。
「でも、孝は100分の1の男性だから、下手にリフォームすると、
『言い寄ってくる女の子がメチャクチャ増える』と思うけど。。。」
図書館であるのに関わらず、私は思わず大声で叫んだ。
「しまったあああああ!」
私はうっかり孝をリフォームしたことを後悔した。。。
第2章は、主人公の愛唯が、孝と恋人として過ごす日々を描くので、
第1章と異なり、少し文体を明るくして物語を展開する予定です。
まあ、そうじゃなきゃ、この物語のタイトル『明るく生きる女の子』になりませんし。。。
当初から、第1章はシリアスチックに、第2章は少し明るく展開する予定でした。
皆様、よろしければ、第2章もお楽しみください。
次話からしばらく間、恋人として付き合い始めた愛唯と孝の関係を描く予定です。
小ネタが多いですがお付き合いください。