Y-9(優子ルート・第9話) 優子、愛唯と共に途方に暮れる。
パンデミック発生の翌月、つまり11月に、大学は閉鎖となった。(第1話)
ま、そもそもパンデミックが発生した10月は、翔の看病、翔を失ったショックから、そもそも、ほとんど登校していなかった。
翔を失ったショックの方が大きくって、大学が閉鎖になったと聞いても、特に感慨はなかった。
その次の月、つまり12月、私達、16歳以上の女子高校生および女子大学生は『学徒動員』として、役所や企業の事務処理や農業の手伝いをさせられた。
私は警察署の事務処理手伝いだ。
そう、Y-2の通り、その警察署で、同じく無理やり働かされていた、当時の幸代准教授と、私は会っていたかもしれない。。。
でも、同時に、パンデミック前から働いていた、40歳以上の男性警察官はもちろん、婦警さん達は、治安維持のため大忙しだった。
そのころ、経済危機や物流が滞り、また治安も悪化していたためだ。
そこで、やっぱり無理やり働かされていたOBさん達や、学校や企業からかき集められた人も、治安維持に駆り出された。
そう、Y-2の通り、当時の幸代准教授のように、ときには機動隊の一員として駆り出されていた。
そして、経済危機により職を失った人が多くいて、年齢・性別・経験不問で中途採用者をかき集めてね。彼等も当然駆り出されていた。
でも、『学徒動員』された16歳以上の女子高校生および女子大学生には、『危険なことはさせられない』として、警察署内での手伝いだった。
私も同様で、警察署の事務処理手伝いだったって訳。。。
ま、私は20歳だったので、治安維持として、婦警さんの制服を着て、立哨警備に行ったことはあるんだけど。。。
5月には業務の見直しと、年齢・性別・経験不問で大量に中途採用した人達が業務に慣れたこと、OBの再雇用で、人材確保に目途がついた。
このころには、治安も安定してきたこともあるのだろう。
そこで6月には、学校関係者は学校を再開させるため、学校に戻っていった。
そう、幸代准教授も6月にはNOH大に戻ったはずだ。
ただ、16歳以上の女子学生の学徒出陣が解かれたのは8月末だったけど。。。
学徒動員が解かれた最終日、16歳以上の女子学生が集められ、署長さんより訓示があった。
「我が国を立て直すには、学生さん達は勉強してください。」
でも、特別な感慨は浮かばなかった。
何より、翔を失った喪失感と、パンデミック前は劣等生だったし、勉強しようと言う意欲はわかなかった。
もちろん同時期に、愛唯も学徒動員が解かれた。
さて、その年の10月、パンデミック直後に休業していたデパートが、ようやく再開された。
私と愛唯は学徒動員の慰労ってことで、、、その再開されたデパートに出掛けた。(第1話)
でも、、、あまり楽しくなかった。
第1話で愛唯が述べたように、最大の理由は、
『新しい服を買っても、それを見てもらって、
褒めてくれる恋人がいないと思うと、
恋人がいないさみしさを思い出すだけ』
ってのは、その通りなんだけど。。。
そもそも、再開したばかりで、品揃えがパンデミック前より圧倒的に少なかった。
店員さんは「去年の在庫品ばかりで、すみません」と謝っていたし。。。
また、デパートの再開に間に合わず、閉鎖されたままのブランドスペースもあったし。。。
何より、お客が少なかった。。。
パンデミック発生から1年が経ち、経済危機からは脱し、治安は回復したものの、消費に回す余裕が人々にはまだなかった。。。
40歳未満の男性は、まだ入院中だったし。。。
40歳以上の男性は、まだまだ仕事の立て直しで忙しかった。私の父も、この時期は夜遅くまで働いていたし。。。
女性客も、、、特に40歳未満は夫を亡くして、生活を立て直さなければならなかったし、、、余裕はなかったんだ。。。
その日の夕方、私と愛唯は、そのデパートでのショッピングの後、ある店に飲みに行った。
この店は、パンデミック前は、翔と健司と愛唯と私で、よく一緒に飲みに行った、思い出の店だ。
なんとか流通も元に戻ってきて、店は営業を再開していた。
でも、、、女性客だけでまばらで、、、かえって寂しさを思い出しただけだった。。。
その1ヶ月後の11月、40歳未満の男性が退院したとのニュースが流れた。
それで翌月の12月、10月に行った店に、私と愛唯はもう一度訪れることにした。
もしかしたら、40歳未満の男性が来店し、店の雰囲気がパンデミック前に戻るかもしれないと期待して。。。
来店してみると、すでに男性が一人だけだが、その横に恋人らしき女性が座っていた。
私と愛唯は、そのカップルから少し離れた席に座り、様子を伺った。
男性は嬉しそうに、恋人らしき女性に話しかけていた。
「『しおり』、、、
やっとこの店に来れた。。。
昨年、入院して、苦しい入院生活が終わって、やっと、この店に来れた。。。
1年以上の入院生活していて、『しおり』と一緒にこの店に行きたいって、
ずっと思っていたんだ。。。」
恋人らしき女性、おそらく『しおり』と言う名前の女性も、ホッとした表情で答えていた。
「うん!
『たつや』、私もうれしい!
退院したら、『たつや』と一緒に、
『この店に行こう!』
って、励まし合っていたもんね。。。」
男性、おそらく『たつや』という名前の男性は、無言でうなずいた。
そして、『たつや』には、たまたま来店していた女の子が群がった。
その群がった女の子の一人が、『たつや』に話しかけた。
「あのー、あのウイルスで生き残った方ですか?」
『たつや』は笑顔で答える。
「うん!」
話しかけた女の子は『たつや』の恋人『しおり』に顔を向け、羨ましがる。
「いいなー。。。恋人が生き残って。。。
私にはパンデミック前に恋人がいたけど、
あのウイルスで亡くなってしまって。。。」
恋人の『しおり』も笑顔で答える。
「うん!
単に運が良かっただけだけど、
今はその幸運をかみしめようと思っている。。。」
その様子を見ていた愛唯は笑顔で私に語り掛けた。
「40歳未満の男性は100分の1になっちゃったけど、、、
これから、少しずつ、元に戻っていくのかな?」
私も笑顔で答える。
「ふふふ。。。そうね。。。
そうなるといいわね。。。」
愛唯は笑顔で無言でうなずいた。
そう、40歳未満の男性が退院し、少しずつ、パンデミック前の世界が戻ってくると思っていたんだ。。。
『このときは』。。。
約30分位経った頃だと思う。
『たつや』は、恋人の『しおり』とお酒を飲んでいた。
『たつや』は「ちょっとお手洗いに行ってくる」と言って、席を立った。
20分後、席に戻らぬ『たつや』に不審に思った『しおり』が店員さんを呼び止めた。
「『たつや』がお手洗い行ったきり、20分経っても戻ってこないの!
お手洗いを見てもらえませんか?」
店員さんはお手洗いに走って向かい、そして戻ってくると、『しおり』に言った。
「誰もいません!」
『しおり』は慌てて、いろんなところに連絡を試みたが、『たつや』と連絡はつかなかった。
そう。。。
『たつや』は誘拐・拉致されてしまったのだ。。。
11月、40歳未満の男性の退院が始まったとのニュースが流れた直後、その退院した40歳未満の男性に対する拉致・誘拐が多発しているとのニュースは知っていた。
でも、こんな身近に起きるとは思わなかった。
私と愛唯は唖然とし、、、
恋人の『しおり』は、、、半狂乱だった。。。
約1週間後の夕方、私と愛唯は、その店を再び訪れた。
だが、その店は閉店してしまっていた。
私と愛唯は、隣の店で、その理由を聞いた。
隣の店の店員さんの話だと、警察による捜査の過程から、『たつや』の誘拐・拉致を店員が手引きしたことが判明したらしい。
当然、その店員は逮捕され、店は営業停止処分となったらしい。
誘拐・拉致された『たつや』はすでに外国に売られ、外国に連れていかれてしまったらしい。。。
営業停止処分を受けた店は、店の信用を無くしたため、今後の営業継続は困難と判断し、閉店を決めたらしい。
そう、パンデミック前は、翔と健司と愛唯と私で、よく一緒に飲みに行った、思い出のあの店が、閉店してしまった!
その頃、100分の1の男性の誘拐・拉致のニュースが毎日のように報道された。
そして、100分の1の男性はみだりに外出しないよう、放送が流れた。
そう、、、
繁華街には、、、
夜間には、、、
とりわけ飲酒を伴う店には、、、
40歳未満の男性は近寄らなくなった。
閉店してしまった店を離れ、私と愛唯は帰宅の途に着いた。
歩きながら、私は愛唯に語り掛けた。
「愛唯、、、
もう、私達(=優子、愛唯)は、
パンデミックの前の社会には戻れないんだな。。。」
愛唯はうなずきながら、寂しげに答える。
「ああ、、、
健司、翔君、優子、私で、4人で一緒に遊んだ世界には、
もう、戻れないんだ。。。」
愛唯は続けて、私に問うた。
「私達(=優子、愛唯)はどうしたらいいんだろう?」
だが、私に答えはない。
「さー?」
私はふと思い出した。
「愛唯、、、
学徒動員で私は警察署の事務手伝いしたんだけどさー、
学徒動員が解かれた時にさー、
署長さんからさー
『我が国を立て直すには、学生さん達は勉強してください』
って言われたんだよねー。」
愛唯はうんざりとした表情でうなずいた。
「あ、
私はNOH市の区役所の事務処理手伝いをしたけど、
最終日に市長から、似たような訓示をもらった。。。」
私もうんざりとして愛唯に語った。
「そんなこと言われたってさー、
劣等生の私達じゃ、どうしようもないじゃん?」
愛唯は再び、うんざりとした表情のまま、うなずいた。
「まったくだ。。。」
私は何気なく、こんなことを言った。
「私達、I大のCCコースに入学したのが、間違いだったのかな~?
もっと、私達に向いている所に入学すればよかったのかな~?
CCコースの劣等生である私達じゃ、どうしようもないんだし~?」
そのとき、不意に愛唯は涙を流し、夜空に向かって叫んだ。
「こんなことになるくらいなら、
母に反抗して、家出してでも、理数系に行けばよかった!」
(Y-3)
私と愛唯は、パンデミックから1年以上が経過しても、まだ立ち直ることができなかったんだ。。。
どうしたらよいのか、途方に暮れていたんだ。。。
そう、、、第1話で、愛唯が述べたように、このころの私と愛唯は、、、
どこにも行くところがなかったんだ。。。
どうしたらよいのかわからなかったんだ。。。
何をやってもむなしいだけだったんだ。。。
(次話に続く)
次話は2024年11月19日の午前0時に公開予定です。




