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40歳未満の男性が100分の1となった世界。絶望の社会を明るく生きる女の子、愛唯(メイ)  作者: U.X.
番外編(その1) もし、優子が孝と恋人になるルートがあったとしたら
202/265

Y-6(優子ルート・第6話) 優子、恋人・翔を看病する。

10月上旬、その凶悪ウイルスは、わが国にすでに蔓延していた。

 

そして、1か月の潜伏期間を終え、猛威を振るい始めた。

 

発症して1週間以内に死に至り、連日、多くの死者が出た。

 

瞬く間に、40歳未満の全男性が感染し、発症した。

 

 

 

ウイルス患者が出始めた10月上旬から、私と翔はデートをするのを控えた。

 

だって、翔に感染してほしくなかったから。

 

そして、毎日のように翔が感染しないよう、祈った。

 

 

 

でも、、、『翔も例外ではなかった』。。。

 

 

 

 

 

10月下旬、翔が自宅で、頭痛と高熱を訴えた。

 

このウイルスに感染し、発症すると、初期症状として頭痛と高熱が現れることは、すでに知られていた。

 

 

 

でも、この10月下旬の時点で、すでにわが国の救急はマヒしていた。

 

なぜなら、、、40歳未満の消防士は、10月下旬の時点で、ほぼ全員が感染・発症していたから。。。

 

救急がマヒしていたため、この時期はこの凶悪ウイルス以外でも亡くなった人は多い。。。

 

 

 

 

 

話を翔の発症に戻そう。

 

翔が発症した時、救急がマヒしていたため、翔の両親が病院に連れて行った。

 

症状からウイルス感染の可能性があり、翔は即入院となった。

 

 

 

私は、翔のお母さんから、翔の入院を聞き、病院に駆け付けた。

 

でも、、、すでに翔はクリーンルームの中だった。。。

 

先の話をすれば、、、私は二度と翔に触れる機会は訪れなかった。。。

 

 

 

 

 

でも、入院直後は、まだ翔は高熱と頭痛だったので、ガラス越しに会話ができた。

 

私は努めて明るく振る舞い、翔に声をかけた。

 

「翔。

  

 私達2人(=優子、翔)と、愛唯と健司君を加え4人で、

 ホテルのレストランに、クリスマスディナーに行くんでしょ?

        

 そう約束したよね?」

 

 

 

翔はベットに横たわり、頭痛で頭を押さえながら、手を上げて、笑顔で答えた。

 

「ああ。。。」

 

 

 

 

 

翔が入院した翌日の朝、翔の両親と私は担当医の個室に呼ばれた。

 

担当医は椅子に座り、担当医のすぐ後ろには一人の看護師が立ち、翔の両親と私は担当医に勧められ、椅子に座った。

 

担当医は緊張した表情で、私達に向けて、静かに話しかけた。

 

「息子さん(=翔)の検査結果ですが、、、

 ウイルスに対する陽性反応が出ました。。。

  

 つまり、、、

 息子さん(=翔)は、ウイルス感染しています。。。」

 

 

 

担当医の言葉は、翔の両親も、私も、覚悟していた。

 

だって、すでに、あの凶悪ウイルスは蔓延していたから。。。

 

 

 

でも、、、でも、、、覚悟していたとはいえ、、、翔の両親も、私も、激しく動揺した!

 

だって、だって、、、発症して1週間以内に、死に至ると、報道されていたから!

 

連日、多くの死者出ていると、報道されていたから!

 

 

 

翔のお母さんの目から涙が流れた。

 

そして涙を流しながら、担当医に問うた。

 

「先生、、、翔は、、、死ぬのでしょうか?」

 

 

 

だが、担当医はその問いには答えず、下を向いた。

 

数秒後、担当医は私達の方に向き、真剣な表情で、言葉を絞り出した。

 

「できる限りの手を尽くします。」

 

 

 

担当医からすれば、これが精一杯の言葉だったのだろう。。。

 

 

 

一方、私は、このとき悔やんでいた。

 

1か月前は、ちょうど翔と映画デートに行った時だったから。(Y-5)

 

もしかしたら、映画デートで感染したかもしれないのだ。

 

どうして、もっと、世の中の動きに注意しなかったのだろう?

 

注意していたら、翔の感染を防げたかもしれないのだ。。。

 

 

 

私は思わず涙を流し、翔の両親に頭を下げ、叫んだ。

 

「翔のお母さん、お父さん、ごめんなさい!

  

 翔が発症する1か月前、翔と私はデートに行ってました!

         

 そのデート先で翔は感染したかもしれません!

         

 私が翔をデートに連れ出さなきゃ、翔は感染せずに済んだかもしれません!

         

 本当にごめんなさい!」

 

 

 

翔のお母さんは、涙を流しながら、苦笑いを浮かべ、顔を横に振り、私に言葉を掛けた。

 

「優子さん、あなたのせいじゃない。

  

 1か月前は、翔はバイトもしていたし、大学にも通っていた。

         

 バイト先や大学で感染したかもしれない。。。」

 

 

 

そう、私のせいじゃないかもしれない。

 

でも、もっと、社会のことに注意していて、翔に外出を禁じていたら、感染しなかったかもしれない。

 

少なくとも、感染を遅らせることができたかもしれない。

 

今でも、たまにそんなことを思うのだ。

 

 

 

 

 

【現在の愛唯と優子の会話】

 

 リアル愛唯:「それは考え過ぎだって。。。

  

        健司(=愛唯の亡き恋人)は大学に通い、

        9月にはテストがあったし、、、

         

        武(=愛唯の亡き弟)は高校3年で高校を休ませるわけにも、

        当時通っていた予備校を休ませるわけにもいかないし。。。

         

        感染を防ぐのは不可能だったと思う。。。」

  

  

  

 リアル優子:「まあ、そうなんだけど、、、

  

        でも、

         『どうしたら防げたか?』

        って、たまに考えるんだ。。。」

  

  

  

 リアル愛唯:「まあ、それは私も同じだけど。。。」

 

 

 

 

 

【大学2年の優子に戻る】

 

話を元に戻す。

 

そして、担当医が真剣な表情で私に向けて語った。

 

「お母さん(=翔の母)、そしてお嬢さん(=優子)、

 まだ息子さん(=翔)が死ぬと決まったわけではありません。。。

  

 ごくわずかですが、

 ウイルス感染者の中で助かった人がいないわけではありません。。。

         

 我々も全力を尽くしますから。。。」

 

 

 

その言葉に、翔のお父さんも涙を流しながら、うなずいた。

 

「そのとおりだ。。。 奇跡を信じよう。。。」

 

 

 

翔のお母さんと私は無言でうなずいた。

 

 

 

 

 

そうだ!

 

まだ、翔が死ぬと決まったわけじゃない!

 

奇跡を信じよう!

 

そう、私は自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から私は、奇跡を信じ、午前9時から午後5時まで、翔が入院している病院に看病に行った。

 

本当はね、私は看病には行けないんだ。

 

だって、すでにウイルスは蔓延しており、数多くの入院患者がいて、それを看病する家族も数多かった。

 

しかも、ウイルス感染していた病院スタッフも少なくなく、病院も混乱の極みにあった。

 

 

 

よって、肉親でもない、私が看病するのは遠慮してほしいと、病院から言われてしまったんだ。

 

でも、翔のご両親が、病院に頭を下げて、例外的に、午前9時から午後5時まで、看病をようやく認めてもらったんだ。

 

 

 

 

 

【現在の愛唯と優子の会話】

 

 リアル愛唯:「そうなの? 初めて知った。

  

        じゃ、私が健司(=愛唯の亡き恋人)を看病したくても、

        そう簡単じゃなかったってこと?」

  

  

  

 リアル優子:「うん。。。

  

        ま、翔が入院していた病院だけの話かもしれないけど。。。

         

        あの頃は、とても愛唯には言えなかったしね。。。」

  

  

  

 リアル愛唯:「じゃ、どうやって、翔のご両親は病院を説得したの?」

 

 

 

 リアル優子:「パンデミックによる経済危機で、

        翔のお父さんが勤めていた会社は倒産の危機にあってね。。。

         

        翔のお父さんも中間管理職として、

        会社の立て直しに夜遅くまで働いていた。

         

        翔のお父さんは、

        それでも夜遅く、病院に来て、

        翔のお母さんに代わって看病したの。。。

         

        でも、、、それでも、翔のお母さんの負担は重い。。。

         

        夜遅くまで働いて、看病していた、

        翔のお父さんの負担も重かった。。。

         

        だから、私が午前9時から午後5時まで看病して、

        翔のご両親の負担を軽減したいって、

        説得したの。。。」

  

  

  

 リアル愛唯:「そういうこと。。。」

 

 

 

 

 

【大学2年の優子に戻る】

 

話を元に戻す。

 

ただ、看病と言っても、愛唯が武(=愛唯の亡き弟)を看病した時と同様、翔はクリーンルームにいたので、ガラス越しに見守ることしかできなかった。(第7話)

 

時々、ガラス越しに翔に声をかけることしかできなかった。

 

 

 

翔が入院して、次の日の午後、突然、翔は口を左手で押え、右手の指でクリーンルームに控えていた看護師を呼んだ。

  

看護師がバケツを持って駆けつけた。

  

すかさず、翔はうめき声を上げながら、バケツに向かって血を吐いた。

  

「(うめき声)う゛~え゛~え゛~!」

 

 

 

血を吐いた後、翔は作り笑いを浮かべ、私に声をかけた。

 

「優子、ゴメン。 不快なものを見せた。。。」

 

 

 

私も作り笑いを浮かべ、翔に声をかけた。

 

「いいのよ。。。気にしないで。。。」

 

 

 

 

その1,2時間後、今度は翔は突然おしりを左手で押さえ、右手の指でクリーンルーム控えていた看護師を呼んだ。

 

やはり看護師はバケツを持って駆け付けた。

 

急いで、翔はパジャマのズボンを降ろし、バケツに向かって下痢をした。血性の下痢だった。

 

下痢の後、翔は慌てて、自らの下半身を隠し、私に謝った。

 

「優子、ゴメン。 また、不快なものを見せちゃった。。。」

 

 

 

この時も私は翔に声をかけた。

 

「気にしないで。。。」

 

 

 

看護師は翔に語った。

 

「ちょっと、パジャマが汚れちゃったから、パジャマを変えましょう。」

 

 

 

そういって、看護師は着替えのパジャマとパンツを手渡した。

 

翔はパジャマとパンツを着替えたが、翔の肉体には皮下出血の痕があった。

 

 

 

その日は夕方5時となり、病院との約束通り、私は帰った。

 

帰り際、私は努めて明るく、翔に声をかけた。

 

「翔。。。

  

 私、クリスマスディナーのために、新しいスーツを用意しているの。。。

  

 翔、あなたに見てほしいな!」

 

 

 

翔もベットに横たわりながら、うなずき、明るく答えた。

 

「ああ!」

 

 

 

帰りがてら、私は自分を鼓舞した。

 

『奇跡を信じよう!』と、、、

 

そして翔に声を掛け、『翔に生きる力を与えてあげよう』と。。。

 

 

 

 

 

でも、、、ウイルスは翔の体力を急速に奪っていく。。。

 

 

 

(次話に続く)


次話は2024年11月13日の午前0時に公開予定です。

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