Y-1(優子ルート・第1話) 優子、空想を語る前に、その後の愛唯と孝を語る。(その1)
『番外編(その1) もし、優子が孝と恋人になるルートがあったとしたら』を開始します。
皆様、よろしければお楽しみください。
私の名前は優子。孝の3人の妻のうちの一人だ。
まず、この番外編は私、優子の空想だ。
でも、この空想の語る前に、、、私達の現状を話そうと思う。
今は5月、孝がNOH大の助教として赴任して1か月経った。
NOH大の幸代准教授の好意で、私はNOH大生でもないのに、幸代准教授の研究室の通わせてもらっている。(第194話)
幸代研究室に通って1か月、研究室のメンバともすっかり打ち解けた。
ときどき、研究室のメンバから、I大での思い出話を訊かれる。
ある日、研究室の4年生の一人から、こんなことを訊かれたんだ。
「優子さんや愛唯さんは、パンデミックの前は、どんな学生だったんですか?」
私は苦笑いして答えた。
「いやー、あの当時は、私は翔という恋人がいて、
愛唯には健司と言う恋人がいて、遊んでばっかだった。。。」
(プロローグ)
研究室にいた愛唯も、苦笑いを浮かべて、相槌を打つ。
「そうそう。。。
私も優子も留年寸前の低空飛行していたの。。。
(プロローグ)
NOH大より、ずっとランクの劣るI大でも、留年寸前の劣等生だった。。。」
すると、その4年生はうらやましそうに語った。
「いいなー。。。
パンデミックの時は、私は中学生だったから。。。
恋愛経験がないんです。。。」
私と愛唯はハッとして顔を見合わせた。
そう、あのパンデミックから今年で8年が経過する。
今の大学4年生は、あのときは中学生だった。
パンデミック後は男子が100分の1になってしまったから、大学4年生だと、恋愛経験がある女子はあまりいないはずだ。。。
別の大学院生が、たまたま研究室にいた、瀬名に顔を向けて問うた。
「瀬名さんは、パンデミック前はどんな学生だったんですか?」
ああ、、、瀬名は4月にI大の付属高校の教諭として復職している。
瀬名は仕事が終わると、まっすぐNOH大の共同住宅には帰らず、必ず幸代准教授の研究室に来るんだ。
理由は私を出迎え、私と一緒に共同住宅に帰るため。
そう、妊婦の私に気を遣い、愛唯、瀬名、孝の誰かは私の近くにいるんだ。
ありがたく思っている。
そもそも、瀬名は3月まで、I大の撫山教授とNOH大の幸代准教授の共同研究スタッフとして、幸代准教授の研究室に週2回通っていた。(第183話)
だから、幸代准教授の研究室の大学院以上のメンバとは、すっかり顔なじみなんだ。
話をパンデミック前の質問に戻すと、瀬名は戸惑いながら答えた。
「うーん、、、
どうしたら良いのか分からなくて、とりあえずまじめに過ごしていたわ。。。
(第90話)
そして孝先生に片思いしていた。。。」
(第90話)
すると別の4年生の一人がつぶやいた。
「わたし、、、片思いですら、、、したことがない。。。」
ヨメンズは顔を見合わせた。
大学4年生は、パンデミックの頃は中学生だった。
パンデミック後は男子は100分の1となり、片思いの対象すらいなかった女の子がいても不思議ではないのだ。
しかも大学4年生は中学生だったが、大学1年生は小学生だったのだ。
そう、そんな女の子がこれから増えてゆくのだ。
実は上司の緑課長とは、産休中もときどきメールでやりとりしている。
緑課長にメールでそのことを伝えた。
すると、緑課長からこんな返信が届いた。
「そうか。。。
今の大学生は、パンデミックの時、小学生か中学生だったから、
恋愛経験どころか、片思いですら、経験したことがないか。。。
まあ、だから、
愛唯君や孝君がNOH大に赴任した意味があるんだろうね。。。
サッチー(=幸代准教授)が言ってた。
『ときどきサッチーが研究室をのぞくと、
愛唯君と孝君のやりとりに、研究室のメンバーは最初は唖然としてたけど、
最近じゃ、笑いをこらえている』
って。。。
『そのやりとりに、あなた(=優子)も加わって、
研究室のメンバーは笑っている!』
って!」
そう、あの二人(=愛唯と孝)は、NOH大に来ても、相変わらずだ。
さっきも、愛唯は孝を罵っていた。
「このバカ(=孝)!
このクソ忙しいときに、机の上のコーヒーカップ倒すな!
コーヒーカップを置く位置に気をつけろって何度言ったと思っている!」
孝は慌てて、「は、はい。。。」と謝っている。
まったく、、、大学3年の頃から、このシーンを何度見たことだろう。。。
で、最近では、それに私が加わっている。
「愛唯!
胎教に悪いから、孝を『バカ』って呼ぶなって何度も言っているでしょ!!」
愛唯は片手で頭を抱えて私に謝るんだ。
「優子、ゴメン!
気を付けているんだけど、孝の『天然』に、つい、、、
いままでの癖でツッコんじゃうのよ。。。」
そう、愛唯も気を付けてはいるんだ。。。
でも、孝は『天然』だからね。。。
1日に何度も愛唯は孝を『バカ』って罵って、、、
その都度、私が注意して、、、
愛唯は片手で頭を抱えて私に謝ると言う、
パターンを繰り返している。
(あきれた笑い)ふふふ。。。
で、そのうちに、、、愛唯は孝をこう罵るんだ。
「このバカ(=孝)!
あんたのおかげで、優子のお腹の子供に対する胎教は崩壊寸前よ!
どうしてくれるのよ!」
最初のうちは幸代准教授の研究室メンバはあっけにとられていた。
でも今じゃ、研究室のメンバーは笑いをこらえている。
先日、たまたま研究室をのぞきに来た、幸代准教授もそのシーンに出くわしてしまってね。。。
彼女もあきれながら、笑ってた。。。
そうかと思えば、愛唯は孝に甘え始めるんだ。
さっきも研究室の椅子に座っていた孝を後ろから抱きしめてね。
こう甘えたんだ。
「ねー、孝ー。
頭が疲れたからさー。。。
NOH大の外に出て、喫茶店でコーヒーでも飲みに行かなーい?
ねー。ねー。」
甘える理由はいくつかあるんだ。
一つ目の理由は、幸代准教授から、愛唯は物凄いプレッシャーを掛けられているんだ。
実はね、毎日毎日、愛唯と孝はクソミソに幸代准教授に叱られるんだ。
特に、愛唯には。。。
まあ、愛唯は博士3年生で、今年は博士号を取得できるか否かの重要な年だ。
実は、I大の博士号を取るだけの実績の目途は、NOH大に来る前、つまり博士2年の3月には立っている。
でもね、幸代准教授から、さっき、こう叱られたんだ。
「愛唯君! あなた、ここ(=NOH大)の助教になるんでしょ?
だったら、I大の博士号を取るくらいの実績じゃ足らないわ!
あと一つ、実績を積みなさい!」
愛唯は慌てた様子で大声を上げた。
「えー!」
そう、愛唯には幸代准教授から物凄いプレッシャーを、連日掛けられており、その気晴らしって訳。。。
実は、プレッシャーを掛けられているのは、愛唯だけでなく、孝に対してもなんだ。
さっきは愛唯にプレッシャーを掛けて、その返す刀でね。。。
「孝君! あなた、優子君の出産前後で産休をとるんでしょ!
だったら、今、産休分、研究に励みなさい!!」
ああ、私は9月に出産予定だ。
実は7月の後半から8月の末の出産直前は、瀬名が産休を取ることになった。
そして、瀬名が産休を取る、7月後半からは、私は幸代准教授の研究室も休むつもりだ。
瀬名は笑顔でこう言った。
「まあ、どうせ、学校は夏休みですし。。。」
そして、孝は出産食後の9月と10月に産休を取る予定だ。
私の両親もNOH大の共同住宅に、私達(=優子、愛唯、瀬名、孝)とは別の一室に、7月初旬に越してくる予定だ。
ただし、私の実家はまだ売らないけど。。。
つまり、7月後半には、NOH大の共同住宅には、私の両親と瀬名がいて、私は3人と過ごす。
そして、9月と10月は、NOH大の共同住宅には、私の両親と孝がいて、私は3人と過ごす。
そう、私の出産に向けて、着々と準備を進めている。
愛唯が孝に甘える話に戻そう。
さっき言ったように、愛唯自身が気晴らしに出掛けたいから孝に甘えるってのが理由の一つなんだが、理由はほかにもある。
それは孝と私を気晴らしに外に連れ出すためなんだと思う。
と言うのもね。。。
愛唯は孝に外出したいと甘えた後に、必ず私に振り向いて、笑顔で語り掛けるんだ。
「優子、あんたも喫茶店に行くでしょ?」
そう、孝と私に気遣って、外出したいって孝に甘えているんだと思う。
ま、愛唯との付き合いは10年以上なんでね。それくらいはわかるのさ。
実はね。。。
先日、緑課長から、幸代准教授が『愛唯がサボりすぎと愚痴っていた』とメールをもらったんだ。
で、サボる理由をメールで返信したら、それについて緑課長から返信が来た。
「返信メールの内容をサッチー(=幸代准教授)に伝えた。
サッチーは
『まあ仕方がない』
って黙認するって。。。」
と言うことで、時々、NOH大の近くの喫茶店で息抜きをしている。
ま、愛唯も博士課程3年なのでね。
程度はわきまえている。。。
さて、、、研究室の4年生の一人から、「片思いですらしたことがない」と聞かされた、次の週のティータイムだった。
幸代准教授は自らのことを話し始めたんだ。
(次話に続く)
次話は2024年11月3日、午前0時に投稿予定です。