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第163話 優子と瀬名の役割

次の年の4月は、私は博士1年となった。

 

ああ、無事に修士論文を書き上げ、修士論文を基に、実験結果を追加して、論文誌に投稿した。

 

もう、徹夜の連続だったよ。。。

 

撫山教授も、幸代准教授も、もう勘弁してください。。。

 

そう、修士論文の提出も、学会誌への投稿も、撫山教授のチェックだけでなく、幸代准教授のチェックが入った。。。

 

もう、クソミソに言われた。。。

 

まあ、でも、1年前は彼女から「論評の価値すらないわ!」とまで言われたことを思えば(第159話)、少しは評価は上がったのかもしれない。。。

 

 

 

同じ4月、優子と瀬名も修士1年として大学院に進学した。

 

つまり、私は博士1年、優子と瀬名は修士1年として、入学式を迎えた。

 

私の修士の入学式と同じく(第141話)、スーツ姿のヨメンズはわざと遠回りして、ロータリーのバス停まで行き、バス停から入学式が開かれる講堂まで歩いた。

 

そう、私達(=ヨメンズ)は8年前の学部の入学式を思い出しながら、講堂まで歩いた。

 

でも、大学院生は入学式の主役じゃないんだ。。。主役は学部の1年生達だ。。。

 

そう、2年前(第141話)も感じたが、優子も瀬名も少し寂しそうだ。。。

 

学部の1年生達はサークルやクラブの勧誘で大歓迎だが、大学院生にはそんな勧誘はないから。。。

 

 

 

さて、優子は週1度出社し、それ以外は大学院に通った。

ま、社命で大学院に通っているので(第160話)、どうしても報告書提出のため、週1度出社しないといけない。

 

 

 

また、瀬名は昨年の8月にI大の付属学校に無理に転任させられ、付属学校も扱いに困っているらしい。

 

本人は1年休職して授業を単位を取って、次の年は復職して働きながら修士の研究をするつもりだった。

 

付属学校から、「思い切って2年休職したら?」と言われ、2年間休職して、大学院に通うことにした。

 

 

 



4月から6月までは優子と瀬名は授業の単位に取ることに専念した。

 

 後の優子:「まだ、あの頃はのんびりしていたよね。。。」

  

 後の瀬名:「そうね。。。」

 

 

 

ま、これは私の修士1年の頃と同じだ(第142話)。

 

ただ、4月には研究テーマは決まっており(第161話)、4月からぼちぼち研究活動を始めた。

 

また、金曜日の夕方は、私とバカでなく、優子も瀬名も撫山教授から大量の作業指示を受けた。

 

そう、『ナイトメア・フライデー(第142話)』で、ヨメンズと孝は土曜日の朝まで徹夜作業となったけど。。。

 

 

 

7月、大学が夏休みとなると、優子と瀬名の研究活動が本格化した。

 

 

 

優子は学際的な分野で、将来、NOH大とRRFM社との共同研究を行うため(第160話)、その基礎研究という位置づけだ。

 

分かりやすく言えば、RRFM社の緑課長と、NOH大の幸代准教授が、将来共同研究を検討しているが、その実現可能性を確かめるという位置づけだ。

ついでに、優子を研究スキルを身につけさせようって訳。。。

 

でも、撫山教授はこう言っていた。。。

 

「たぶん、これは表向きだ。。。

 あのジャジャウマ2人(=緑課長、幸代准教授)には、なんか別の意図があるな。」

 

 

 



話を戻すと、RRFM社の緑課長に、週一度、研究進捗を報告する。

まあこれは当然だが、NOH大の幸代准教授もチェックするんだよねー。

 

優子は嘆いていた。

 

「撫山先生も厳しいけど、、、

 あの人(=幸代准教授)、本当に鬼ね。。。」

 

 

 

NOH大学の共同研究が本格化して、優子の研究には、バカ(=孝)とNOH大の哲君もサポートに回る。

 

学際的な分野なので、かなり先の将来を見るバカ(=孝)と、人的ネットワークが広い哲君がサポートとして良いだろうってことで。。。

 

そう、NOH大とI大の最凶最悪コンビのシャッフルを試してみたって訳。。。

 

 

 

 

 

瀬名の研究分野はNOH大の葵さんと同じ分野だ。

 

ということで、瀬名の研究はNOH大の葵さんがサポートする。そして私もサポートに回る。

 

そう、ここでも、NOH大とI大の最凶最悪コンビのシャッフルを試してみたって訳。。。

 

 

 

瀬名は7月以降、同じ研究テーマの葵さんのいるNOH大に、週2回通った。

 

幸代准教授の研究室に、瀬名の机まである。机は葵さんの隣だ。

 

表向きは、瀬名への指導のためとなっているが、明らかに葵さんの毒舌封じだ(第161話)。

 

 後の瀬名 :「(ため息をついて)私がNOH大へ行くと、毎回毎回、

        葵さんと言い合いになっちゃうんだよね~。」

 

 

 

だが、その言い合いに瀬名は葵さんに勝ってしまうんだ(第158話)。。。

 

撫山教授は幸代准教授から聞いた話を、面白がって話した。

 

「幸代君曰く、

  『瀬名君がいる間は、葵君、毒舌を控えるようになった。』

 って喜んでいたぞ!」

 

 

 

がはは。。。

 

 

 

 

 

そして10月、優子も瀬名も、それなりにスキルを身に着けると、彼女達も実感したんだ。

私もバカ(=孝)も、所詮、I大と言う『井の中の蛙に過ぎない』ことを。。。

 

だって、優子のRRFM社の上司は緑課長で、その緑課長の配下には、優子だけでなく、別の有名大学出身の最凶最悪コンビがいるんだよ(第160話)。。。

 

そして、瀬名はNOH大にも通っているから、葵さん、哲君と言う、NOH大の最凶最悪コンビに接しているんだ。。。

 

 

 

ある日の夕食。ああ、4人で大学院に通っているので、いつも夕方6時に一旦共同住宅に戻って、夕食をとっているんだ。

ちなみに、朝食も共同住宅で、昼食は学食で、4人で食事をとる。

 

そのある日の夕食、優子が口を開いた。

 

「3年生の時、愛唯や孝が恋人として付き合っていた時は(第2章)、

 愛唯や孝はすごいカップルと思っていたけど、

 RRFM社の同僚の最凶最悪コンビは、愛唯と孝より数段上ね。。。」

 

 

 

そう言うと、優子はため息をついた。

 

「もう、バケモノよ。。。」

 

 

 

瀬名も夕食を食べながら、ため息をつき、口を開いた。

 

「そうね。。。

 NOH大に通って、葵さん、哲さんと接しているからわかるわ。。。 

 あの二人は、愛唯さんと旦那様(=孝)をはるかに凌駕しているわ。。。 

 本当、バケモノよ。。。」

 

 

 

瀬名は続けた。

 

「愛唯さんと旦那様(=孝)は、博士課程に進んでいるから、

 そして将来、大学教員を目指すなら、

 そんなバケモノ達と対峙しなくちゃいけないんですものね。。。」

 

 

 

私は夕食を食べながら、苦笑いを浮かべ、優子と瀬名に語り掛けた。

 

「そう。。。

『最凶最悪カルテット』として、優子と瀬名の力を借りたいの。。。」

 

 

 

あのとき、NOH大の最凶最悪コンビ、葵さんと哲君は、私とバカ(=孝)にとって高い壁だった。

 

優子と瀬名の力を借りたかった。。。

 

 

 

だが、優子は戸惑う。

 

「いま、10月だけど、

 私(=優子)も瀬名も、1月に論文に読み始めて、4月に研究を始めて、

 同じ修士1年の美幸さんにようやく追いついたって感じ。。。

  

 修士2年の恵美さんには、もちろん敵わないわ。。。

  

 力を貸してあげたいけど、今の私(=優子)と瀬名では力不足よ。。。」

 

 

 

瀬名も戸惑いながらうなずく。

 

「そうね。。。今の優子さんと私(=瀬名)じゃ、力不足よ。。。

  

 キツイけど、、、

 撫山先生や幸代先生の指導について行って、実力を高めないとダメね。。。」

 

 

 

 

 

瀬名は続ける。

 

「あくまで、、、

 優子さんと私の実力を高めないと話にならないけど、、、

 葵さんと哲さんにも弱点はあるの。。。」

 

 

 

私は驚く。

 

「え?」

 

 

 

瀬名は苦笑いを浮かべて話す。

 


「私はNOH大に通っているから、葵さんと哲さんをよく知っているの。。。

  

 二人とも、研究室メンバへのフォローがないの。。。。

  

 放置している。。。

  

 ま、NOH大は旧帝大だから、

 学生のレベルがI大と比較にならないぐらい高いから、

 放置していても大丈夫なんだけどね。。。」

 

 

 

瀬名は続ける。

  

「でも、それにしても、、、葵さんは孤高の存在よ。。。 

 他人に頼らないし、頼らせない雰囲気があるの。。。

 ま、あの毒舌だしね。。。


 だから、哲さん以外は、誰も葵さんに話しかけないの。。。

 葵さんも、哲さん以外には話をしようとしない。。。

  

 幸代先生が、無理やり私(=瀬名)を葵さんと組ませたのは、

 その葵さんの弱点を補うためじゃないかしら。。。」

 

 

 

私は戸惑いながら問う。

 

「じゃあ、哲君はどうなの?」

 

 

 

瀬名は苦笑いを浮かべて答える。

 

「幸代先生が嘆いていたんだけどね。。。

  『哲さんは、人を見つけて集めてくる能力はずば抜けている。

   でも、その先がない』

 って。。。

 

 続いて、こう言ってた。。。 

  『フォローして、集めてきた人の能力を、

   さらに高めようとする姿勢に欠ける』

 って。。。」

 

 

 

瀬名は続ける。

         

「そして、幸代先生はこうも言っていた。。。

  『哲さんは葵さんに頼りすぎ』

 って。。。

  

 つまり、NOH大の最凶最悪コンビは、葵さん一人に強く依存しているの。。。

  

 しかも、葵さんは孤高な存在なの。。。」

 

 

 

私は戸惑いながら問う。

 

「つまり?」

 

 

 

瀬名は語る。

 

「葵さんも、哲さんも、『個人の能力に依存し過ぎている』。

 そして、それが『改善される見込みは低い』わね。。。」

 

 

 

優子は天井を見上げ、つぶやいた。

 

「確かに、RRFM社にいる最凶最悪コンビも、

 個人の能力に依存し過ぎている部分はあるわね。。。」

 

 

 

瀬名は語る。

  

「葵さんと哲さんが個人の能力に過度に依存しているから、

 愛唯さんが言うとおり、愛唯さんと孝だけでなく、

 『カルテットとして対抗すれば勝ち目はある』。。。

  

 というか、それしか勝ち目がないわ。。。

  

 でも、さっき言ったように、

 『優子さんと私(=瀬名)の実力を高めないと話にならない』わ。。。」

 

 

 

バカ(=孝)が口をはさむ。

 

「優子さんと瀬名さんだけじゃないです。。。

 僕と愛唯さんも、もっと実力を高めないとダメです。

  

 そして4人の実力を高めた上で、カルテットとして対抗すれば、

 勝ち目があるかも。。。

 

 という話です。。。」

 

 

 

 私はため息をついて頷く。

 

「そうね。。。」

 

 

 



優子が疑問を呈する。

 

「でも、私(=優子)も瀬名も、あと1年半しか大学院にいないよ。

  

 修士を卒業したら、私はRRFM社に戻るし、瀬名は付属学校に戻るし、

 しかも、妊娠出産の予定もあるし。。。」

 

 

 

そうなのだ。カルテットとして対抗できるのは、あと1年半しかない。。。


その後は、しばらく優子と瀬名の力は期待できない。。。

 

 

 

瀬名が語る。

 

「そうね。。。


 となると、、、

 愛唯さんと旦那様(=孝)は、自分自身のスキルを上げるだけでなく、

 育成についても注力すべきだと思う。

 

 葵さんと、哲さんが研究室メンバへのフォローせず、

 放置しているのだから。。。」

 

 

 

 

 

そこで育成についてヨメンズとバカ(=孝)と話し合った。

 

継続性を考え、4年生で大学院進学希望の真紀の面倒は、修士2年の恵美、修士1年の美幸に見てもらうことにした。

 

そして優子と瀬名は、就職希望の4年生の面倒を見てもらうことにした。

 

私は研究室全体の管理と、博士1年として、修士の恵美と美幸と瀬名の面倒を見る。

ま、瀬名はNOH大との共同研究で、NOH大にいるときは葵さんが、I大にいるときは私が面倒見ることになっていたし。。。

 

そして、バカ(=孝)は私と共に、修士の恵美と美幸と優子の面倒を見る。

バカ(=孝)はNOH大との共同研究で、優子の面倒を見ることになっていたので。。。。

 

また、バカ(=孝)は、ヨメンズ、恵美、美幸の相談に応じて、4年生の面倒も行うこととした。

 

 

 

 

 

また、優子から孝にリクエストがあった。

 

「孝。授業の準備以外は研究室で研究して。

 そして、愛唯は隣に座りな。」

 

 

 

私は戸惑う。

 

「どうして?」

 

 

 

優子はニヤリと笑う。そして瀬名もニヤリと笑った。

 

ま、その日から、バカ(=孝)の『天然』を罵ることになったが。。。

 

「このバカ(=孝)! このクソ忙しいときに、コーヒーこぼすな!」

 

 

てな感じで。。。

 



だが、優子は笑って語る。

 

「ふふふ。。。愛唯と孝はそれでいいのさ。。。

 研究室のメンバー、笑いをこらえている。。。」

 

 

 

瀬名も笑って語る。

 

「そうね。。。

 さっき、撫山先生も研究室のぞいて、笑ってた。。。

  

 大学3年の頃、課室で、

 同級生達も愛唯さんと旦那様(=孝)の様子を見て笑っていた。

  

 愛唯さんと旦那様(=孝)の様子を見るためだけに、

 登校してきた女の子もいたぐらい。。。

 (第23話)


 そんな感じで、愛唯さんと旦那様(=孝)のやり取りを見るのが

 楽しみになってくれれば、すこしは研究のプレッシャーも和らぐかも。。。」

 

 

 

ふーん、、、そんなもんかな。。。

 

 

 

 

 

また、優子と瀬名は研究室全体の雰囲気に気を配りだした。

 

定期的にレクレーションを始めたんだ。

 

あくまで、「大学院にいる間だけ」なんだけど、水曜日の朝にテニスを復活させた。

 

もちろん、日曜日の朝もテニスを行い、研究室メンバに参加を呼び掛けた。

 

1か月に1度は、土曜日の夕方に、研究室メンバを共同住宅に呼んでホームパーティを開いたり、キャンプ場に行ってバーベキュー大会を開いたりした。

 

 

 

また、金曜日の午後は、研究室全体の会議があるんだけど、会議が終わったら、『ティータイム』と称して、瀬名はお手製の菓子をふるまってね。。。

要するに週に1度、リラックスタイムとしたよ。。。

 

 

 

撫山教授はあきれてね。。。

 

「研究室は遊びに来るところじゃないぞ。。。」

 

 

 

そしたら、優子が笑顔で返したよ。

 

「撫山先生、研究で厳しくなるのは仕方がないです。

 でも楽しい研究室を目指しましょう。」

 

 

 

瀬名も続いた。

 

「そうです。

 『ティータイム』だけは、『仏の撫山』でいてください。

 研究室メンバのリラックスタイムとして。。。 

 そう、『厳しくても楽しい研究室』を目指しましょう。

 NOH大との差別化として。。。」

 

 

 

撫山教授は苦笑いを浮かべて返した。

 

「仕方がないな。。。」

 

 

 

そして、『ティータイム』だけは微笑みを絶やさず、『仏の撫山』でいることにした。

 

 

 

こうした、優子と瀬名の気配りにより、『厳しくても楽しい研究室』という評判となった。

また撫山教授が有名な研究者で、下級生への育成がしっかりしており、他の研究室より就職先が良いこともあり、徐々に大学院進学希望の学生が増えていった。

 

ま、これは数年後の話なんだけどね。。。

次話は2024年4月9日に更新予定です。

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