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第178話 史恵からの相談

時期は修士2年の1月だった。12月に私は学会発表を終え、修士論文をまとめている。

週2日は徹夜という、超多忙な毎日を送っていた。

 

 

 

そんな多忙な毎日だが、『IT特別ヘルプ』のバイトは続けている。

一つには、同じ『IT特別ヘルプ』を行っている学生や、『ITヘルプ』の学生、そして相談に来た学生達にも繋がりを持つためだ(第173話)。

 

もちろん、毎日2時間、週3日のシフトで、バイトは極力抑えている。

4月以降は瀬名がI大の付属学校を休職して大学院に進むので、もっとバイトを抑えて、彼女に『IT特別ヘルプ』のバイトをやってもらう予定だ。

 

ちなみに、優子は社命で大学院に来るので、休職しないので、給料は支払われるので、バイトを行う必要がない。

というか、バイトはしてはならない。

 

 

 

話を戻すと、バカ(=孝)以来、はじめて入学してきた男子学生、(まもる)がいるだろ(第173話)?

護の恋人、史恵(ふみえ)が(第173話)、私のバイト先、『IT特別ヘルプ』がいる計算機センターの一室をしょっちゅう訪ねてくるんだ。

 

そう、私が『IT特別ヘルプ』を続ける理由は、彼女との会話を楽しむためでもある。。。

 

 

 

史恵が私を訪ねてくる目的は、まあ恋の相談。

ほら、100分の1の男性の恋人になれる女性って、圧倒的少数なんだ。

だから、相談相手って、ほとんどいないんだよねー。

 

私もバカ(=孝)と付き合い始めた大学3年の頃、相談相手には苦労した。。。

 

親友の優子は、大学3年の頃は、翔(=優子の元恋人)を亡くしていたから、バカ(=孝)の仲については相談しづらくてなー。。。

 

だから、男子寮を出入りしていた、恋人達と相談しかなくってなー。。。

 

そして、恋人達と少しずつ仲が良くなっていた。。。

 

まあ、その恋人達の中に、当時、俊君と付き合っていた、綾子がいたわけなんだけど。。。

 

 

 

話を戻すと、史恵が私に相談しに来る気持ちもわかるんだよ。。。

 

ま、ほとんどの場合、デートに困っている相談なんだけど。。。

 

私もバカ(=孝)と恋人として付き合っていた頃は、デートに困っていたから。。。

(第22話)

 

 

 

でもまあ、恋の相談ってだけでもなくって。。。


史恵はニヤリと笑って、私に問うた。

 

「センパーイ。

 孝先生と愛唯先輩は、大学3年の頃、いっぱい悪事をしたって、

 先生方から聞いたんですけど、なにやらかしたんですかー?」

 

 

 

がはは。。。こうやって、大学3年の頃の悪事の数々を話す羽目になりました。。。はい。。。


私は微笑み、答えた。


「まあ、当時は100分の1の男性を外出させるには、

 紙ベースの申請書に事由を記載しなくちゃいけなかったから、、、

  

 孝先生は当時寮に住んでいて、その部屋の消耗品をチェックしておいて、

 近々購入しなくちゃいけないものを把握していたの。。。

  

 で、購買で欠品しているものを、毎日チェックして、

 欠品しているものを見つけたら、即、外出申請出して、

 外出していたかな。。。」

 (第25話)

 

 

 

史恵は驚く。


「え?

 今は、スマホかパソコンで護が申請すれば、外出許可が下りるけど。。。

 事由なんかいらないわよ。。。」

 

 

 

私はため息をついて答えた。

 

「そうね。。。

  

 私が大学3年の頃、100分の1の男性が大学に集められた当初は、

 外出が本当に厳しく制限されていてね。。。

  

 私だけでなく、他の恋人達もデートに困っていたかな。。。」

 (第105話)

 

 

 

史恵はハッとした表情で問う。

 

「先輩。。。

 もしかして、それで、故意に購買を欠品を生じさせたんですか?」

 (第41話)

 

 

 

私は驚き、うなずいて、答えた。

 

「がはは! それ、もう聞いているの?

 そう、なるべく多く、孝先生と学外でデートしたくってね。。。」




史恵はうなずき、「そういうこと。。。」とつぶやいた。

 

 

 



ま、私と史恵がどういう会話をしているかは、計算機センターの一室にいる、他の『IT特別ヘルプ』や『ITヘルプ』も聞いているから、ときどき、撫山教授から、こう叱られるんだ。。。

 

「下級生に、悪知恵を広めるんじゃない!」

 

 

 

がはは。。。いいじゃん。。。

 

これでも、今では使えない悪知恵しか教えてないんだし。。。

 

今でも使える悪知恵は教えてないもん。。。

 

 

 

え? だって、

『今でも使える悪知恵は、

 私達(=ヨメンズ、孝)が今でも使っている』から!

 

がはは。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、修士2年の1月に話を戻すと、いつになく真剣な表情で、史恵がバイト先の計算機センターの一室を訪れた。

 

そして、私に言ったんだ。。。

 

「私の兄、大学3年で、義之(よしゆき)って言うんですけど、

 一夫多妻で結婚するんですよ。。。

  

 兄には高校時代からの恋人、(ひとみ)さんがいます。

 パンデミックの頃、生死の境をさまよった兄を、

 瞳さんは献身な看病をしていました。。。

 

 高校、大学で軟禁された兄を、ずっと瞳さんは支えてくれていたんです。。。

 

 それなのに、それなのに、瞳さん以外の女性とも結婚するんです。。。

 一夫多妻で結婚するんです。。。

  

 私(=史恵)には、兄が瞳さんを裏切ったようにしか見えません!

  

 兄にも、瞳さんにも、両親にもそれを言ったら、

  『仕方がない』

 とか話してくれません!

   

 詳細を話してくれないんです!」

 

 

 

史恵は続ける。

 

「同じ一夫多妻をしている孝先生の個室にさっき行って、

 兄が一夫多妻で結婚した理由を尋ねましたが、答えてはくれませんでした!

  

 ただ、

  『たぶん、

   【お兄さんは瞳さんとだけ結婚したかった】んだと思う。

   でも、お兄さんも瞳さんも、

   【仕方なく一夫多妻を受け入れた】んだと思う。』

 としか、答えてくれませんでした!」

 

 

 

史恵はさらに続けた。

 

「先輩! 教えてください!

 どうして、兄、義之は一夫多妻の結婚をしたんですか!」

 

 

 

理由は分かっている。。。


100分の1の男性には、拍子法行為を含む精子提供義務がある。


妻子一人あたり2年の猶予があるため、精子提供義務から逃れるため、史恵の兄、義之は一夫多妻を受け入れたのだ。

 

だが、守秘義務があって、兄と妹であっても、精子提供義務について話してよいことではない。

だから、史恵の兄は、史恵に『仕方がない』としか話せないのだ。。。

 

私はため息をついた。

 

「まず、ここ(=計算機センター)では、話すことはできないから、

 場所を変えようか。。。」

 

 

 

私は計算機センター長の部屋に行き、「今日のバイトは取りやめ」と伝え、史恵を共同住宅に連れて行った。

 

優子と瀬名は研究室にいて、共同住宅の私達(=ヨメンズ、孝)の部屋なら、史恵と二人っきりで話ができると思ったからだ。。。

 

 

 

私と史恵は座卓を挟んで座った。そして、史恵にお茶を勧めた。

 

そして、静かに口を開いた。

 

「お兄さんが一夫多妻の結婚をした理由は、私も孝先生も察しは付くの。。。

  

 と言うのも、私も孝先生も、最初、一夫一妻を貫こうとしたの。。。

 (第78話)

  

 でも、結局、一夫多妻を受け入れざるを得なかった。。。

 (第79話)

  

 一夫一妻を不可能にする社会の仕組みがあったから。。。」

 

 

 

史恵は戸惑いながら問う。

 

「一夫一妻を不可能にする社会の仕組みって?」

 

 

 

私は顔を横に振って答えた。

 

「守秘義務があって、今は史恵ちゃんに答えることはできないの。。。」

 

 

 

私は続けた。

 

「もし、史恵ちゃんと護君の関係が進展して、

 将来の結婚は間違いないと確信したら話すわ。。。」

 

 

 

史恵は混乱した様子で問う。

 

「なぜ将来の結婚が確実になるまでの関係にならなければいけないの?」

 

 

 

私は答えた。

 

「護君を始め、100分の1の男性には、史恵ちゃんの知らない秘密があるの。。。

  

 その秘密は、結婚して生涯を共にする者にしか、

 明かすことが難しいからよ。。。」

 

 

 

私は続けた。

 

「史恵ちゃんのご両親も、お兄さんの義之さんも、今の史恵ちゃんには、

 100分の1の男性の秘密を明かすことは難しいと、判断しているのだと思う。。。

  

 だから、史恵ちゃん、今はやむを得ない判断だと受け入れてほしいの。。。」

 

 

 

そう言うと、私は史恵に頭を下げた。

 

 

 



史恵は顔を横に振り、納得がいかない表情で叫んだ。

 

「じゃあ、護は理由を知っているんですね!

 わかりました! 護を問い詰めます!!」

 

 

 

私は叫んだ。

 

「問い詰めてはダメ! 自然と話すまで待ちなさい!」

 

 

 

私は優しく史恵に諭した。

  

「話すには、とっても勇気がいることなのよ。。。

  

 史恵ちゃんと護君の関係が進展すれば、

 必ず、護君は勇気をもって話してくれるはずよ。。。

  

 史恵ちゃんが今やるべきことは、

  『護君を問い詰めることではなく、護君との関係をもっと強くすること』

 なの。。。」

 

 

 

私は続けた。

 

「護君を問い詰めたり、

 これ以上、お兄さんの一夫多妻の理由を詮索することは、

 護君やお兄さんを傷つけてしまうことなの。。。

 

 恋人の『護君を傷つけても良いの?』

 『護君を傷つけてまで、聞き出したい』ことなの?」

 

 

 

史恵は黙って顔を横に振った。


私は続けた。

 

「何度も言うけど、今はやむを得ない判断だと受け入れてくれない?」

 

 

 

史恵は黙って頷いた。

 

 

 

 

 

このとき、私が史恵に100分の1の男性の秘密を話さなかった。

いや、話したくなかった。

 

なぜなら、秘密を知れば、それまでの史恵と護の関係が終わってしまう可能性があるからだ。。。

 

そう、私とバカ(=孝)との関係のように。。。

 

 

 

実のところ、史恵が、私のバイト先、計算機センターの一室に来るのが楽しみなんだ。

忙しくてもバイトを続ける理由は史恵と会えるからなんだ。。。

 

だって、史恵と護を見ていると、拍子法行為と言う、100分の1の男性の秘密を知る前の、バカ(=孝)と無邪気に恋人として交際していた、一番幸せだった時期、つまり交際開始してから成人式までの月日(第2章)を思い出すんだ。

 

 

 

そして、なるべく長く、史恵と護が、

『無邪気に恋人として交際している姿を見たいから』なんだ。。。

 

 

 

だって、私とバカ(=孝)は、もう、、、

無邪気に恋人として交際していた、

あの『一番幸せだった時期(第2章)には戻れない』のだから。。。




せめて、『史恵と護が、無邪気に交際している姿を見たい』んだ。。。




だって、、、

一夫多妻を受け入れてしまった、

『私とバカ(=孝)は戻れない』のだから。。。


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