第175話 幸代准教授からの指導
愛唯です。4月、私は修士2年となった。
バカ(=孝)は、助教になり、働きながら博士課程に進学した。
教員となったので、服装が変わった。毎日背広姿で大学に通っている。
ほら、男性衣服は安くてウン万円、ひどいとウン十万円するけど(第20話、第56話)、それは40歳未満の衣服に限った話なんだ。
40歳以上の人口は100分の1のなっていないわけで、背広なら、そんなに高騰していないんだ。
つまり、私服買うのと背広買うのと、そんなに価格は変わらない。
ということで、、、3月、ヨメンズはバカ(=孝)を専門店に連れて行って、数着、背広買ったって訳。。。
それから、バカ(=孝)が就職したので、100分の1の男性に対する補助が変わった。
第127話の式を用いて説明すると、全体の補助は以下となる。
『100分の1の男性に対する補助』=
『100分の1の男性本人への補助』+『妻に対する補助』
+『家族全体の生活に対する補助』
このうち、『100分の1の男性本人への補助』は、バカ(=孝)は就職したので、こう変わる。
『100分の1の男性本人への補助』=給付金50万円+社会保険料半額免除
次に、『妻に対する補助』は私は大学院生で、優子と瀬名は働いているから、以下のようになる。
『妻に対する補助』=(給付型奨学金50万円+授業料全額免除)×1人
+(給付金50万円+社会保険料半額控除)×(3人-1人-1)
=給付型奨学金50万円×1人+授業料全額免除×1人
+(給付金50万円+社会保険料半額控除)×1人
さらに、『家族全体の生活に対する補助』は、第127話と同じだ。
『家族全体の生活に対する補助』=食費および光熱費を含む住宅費の補助75%
よって、合計は以下のようになる。
『100分の1の男性に対する補助』=
(給付型奨学金50万円+授業料全額免除)×1人
+(給付金50万円+社会保険料半額控除)×2人
+食費および光熱費を含む住宅費の補助75%
まあ、バカ(=孝)は就職したので、授業料の免除がなくなった思ってくれればよい。
I大の場合、助教でも個室が与えられる。
ということで、バカ(=孝)にも個室が与えられた。
ただ、I大の場合、その代わりと言っては何だが、助教でも授業のコマがあるのだ。
それでも撫山教授曰く、減らしているそうだ。
「本当はもっと多くの授業を担ってほしいが、
博士の学位を得てもらわなきゃならんからな。
6年後、もし講師として戻ってきたら、もっと授業を担当してもらうからな。」
だから、バカ(=孝)が担当する授業のコマは少ない。
しかし、ただでさえ博士課程とは多忙の上に、授業の準備もしなきゃならないから、もう超多忙になった。
どうしようもなくなって、個室に寝袋を持ち込み、寝泊まりすることが増えた。
本当は、バカ(=孝)の個室で授業の準備とか、研究の手伝いをしたいがそうもいかないんだ。
と言うのも、博士3年の先輩が卒業したので、バカ(=孝)が研究室の一番上なんだ。
次が修士2年の私なんだ。
先述したとおり、バカ(=孝)が助教で超多忙なので、研究室全体の世話は私がしなきゃならなくなった。
しかも、、、I大の場合、助教も卒業研究も指導しなければならず、バカ(=孝)も本来、独自の研究室を立ち上げ、4年生が配属されることになる。
もちろん、博士課程にいるバカ(=孝)に実質そんなことはできない。
ということで、名目上は共同研究室として、撫山研究室の人員を増やさざるを得ず、増やした分も私が面倒見なきゃならないって訳。。。
そう、バカ(=孝)の授業の準備の手伝いとか、研究の手伝いなんて、無理って訳。。。
さらに、、、撫山教授からね。こう指示されたんだ。。。
「愛唯君。
来年本格化するNOH大との共同研究のため、
見込みの高い4年生の何人かを大学院に勧誘し育てるように。。。」
そのことをバカ(=孝)に相談すると、バカ(=孝)は申し訳なさそうに、口を開いたんだ。
「申し訳ありませんが、最低でも4年生を育てないと、
NOH大の最凶最悪コンビ、葵さんと哲君に対抗できません。
そもそも、NOH大には、葵さんや哲君だけでなく、
優秀な大学院生がいっぱいいるんですよ。。。
I大が僕と愛唯さんと恵美さんの3人だけでは話にならないじゃないですか。。。
しかも、僕も愛唯さんも恵美さんもレベルアップしないといけないし。。。」
ああ、恵美とは、撫山研究室の修士1年の後輩だ。
昨年、恵美が4年生だったが大学院志望だったので、バカ(=孝)は超多忙の中(第158話)、付きっ切りで育て上げた。
そこで、今年配属された4年生の中で、美幸さんが大学院進学希望だったので、彼女を中心に育てることにした。
私の指導の中心は1年下の恵美(修士1年)と、大学院進学希望の美幸(4年生)だ。
恵美と美幸の研究進捗については、毎日チェックし、指導することにした。
それでも、来年は撫山研究室の院生は、博士2年(孝)、博士1年(愛唯)、修士2年(恵美)、修士1年(美幸)の4人だけだ。
これでは、NOH大との共同研究には人員もレベルも劣る。。。
ということで、来年大学院に進学する瀬名を期待せざるを得ない状況になった。。。
そもそも、学部の頃の成績は、特別課題をこなしても、私は瀬名に敵わなかったし(第43話)。。。
でも、瀬名は4年生の時は撫山研究室ではなかったから(第93話)、専門分野をイチから勉強しないといけない。。。
来年4月から専門分野をイチから勉強して、修士1年の上半期で授業の単位も取らないといけないし、戦力になるのは相当先になる。。。
ということで、、、フライングだが、今年から、瀬名に論文を読ませたりして、専門分野をイチから勉強させたいんだ。。。
でも、、、今年は瀬名は教員として働く予定だ。。。あまり無理はさせるわけにはいかない。。。
バカ(=孝)にも相談したが、瀬名に今年は無理はさせられないと言うのは意見が一致した。。。
どうしたもんか悩みの種だ。。。
そこで研究室の雰囲気をなるべく明るくして、就職希望の4年生が、少しでも大学院進学に変えてくれるよう、気を配ることにした。
というか、、、それしか、目下できることがない。。。
さて、4月からNOH大の共同研究を始めた。
今年は様子見ということで、私とバカ(=孝)の指導を、これまでの撫山教授だけでなく、NOH大の幸代准教授も担うことになったんだ。。。
どうも、幸代准教授から撫山教授に申し入れたらしいんだ。。。
隔週に1回、オンラインで結び、進捗を報告することになったんだけど。。。
まー、『鬼の幸代』って異名をとっている理由が分かった。。。うん。。。
バカ(=孝)に対してはクソミソに言われた。
「あなた(=孝)! それで、NOH大で通用すると思っているの!!」
私に関してはもっとひどくて、一刀両断されました。。。
「論評の価値すらないわ!」
しかも撫山教授からも、いつもの如く、厳しい指導が入ったんだよ。。。
でも、オンライン会議の最後に、幸代准教授は撫山教授に、作り笑顔で、皮肉交じりに語り掛けたんだ。
「撫山先生。
I大に移られてから、ずいぶん人間が丸くなられたんですね。。。
EC大にいた頃、私やミドリン(=RRFM社の緑課長)には、
とても厳しかったのに。。。」
撫山教授は苦笑いを浮かべて返した。
「ま、いつも、手加減しているからな。。。」
このオヤジ(=撫山教授)、EC大にいた時は、どんなに厳しかったわけ!?
まったく。。。
でもね。。。
かなり後になって撫山教授から教えてもらったんだけど。。。
幸代准教授の私とバカ(=孝)の評価は、今回のオンライン会議で私とバカ(=孝)に言い放ったこととはまるで違っていたんだ。
幸代准教授は、
『そもそも、帝大系のNOH大と、有名大学ではないI大では、
大学入学時の学力が違う。
しかも、I大はNOH大と比べて、研究予算、研究設備、研究スタッフが
段違いに劣る。
かつ、I大の学生の学会発表は何度も見ていて、
I大の学生のレベルは把握していた』んだって。。。
で、幸代准教授から見て、12月のバカ(=孝)の学会発表のレベルは(第160話)、
『従来のI大の学生レベルとは比較にならないほど、良いものだった』という評価だったらしいの。。。
そして、私の学会発表の質疑応答も、『I大の修士1年にしては段違いの受け答えをしていた』という評価だったらしいの。。。
そして、幸代准教授は、『さすがに、私もバカ(=孝)も、撫山教授によく鍛えられている』という評価をしていたんだって。。。
それに、、、バカ(=孝)が参加した学会って『査読』があっただろ(第158話)?
それまで、I大の修士で査読付きの学会発表したことって、なかったんだって。。。
I大の修士の学会発表って、査読のないところでの発表が全部だったんだって。。。
そう、バカ(=孝)が修士であの学会で発表したのは、I大のレベルではありえないことだったの。。。
そもそも、旧帝大の一つであるNOH大でも、修士であの学会で発表するのはかなり難度が高いらしいの。。。
あの学会での葵さんと哲君の発表レベルは、バカ(=孝)よりも上だった(第174話)。でもそれは幸代准教授に鍛え上げられて、葵さんと哲君はNOH大の修士では図抜けた存在だったんだって。。。
話を戻すと、NOH大の幸代准教授から見て、学会での私とバカ(=孝)は『基礎はできている』という評価だったらしいの。。。
そこで、、、
『3年後、私達(=愛唯、孝)がNOH大に行くまでに、可能な限り、鍛え上げよう』って気になったらしいの。。。
で、最大の理由が、、、
ほら?
学会発表後のオプションとして、BB市での観光(第172話)に、幸代准教授は同行したじゃない?
その観光バスの私達(=ヨメンズ、バカ(=孝))のやり取りを見て(第172話)、幸代准教授は『私達を気に入っちゃった』んだって。。。
特に、『私のこの発言が気に入っちゃった』んだって。。。。
「うるせえぞ、このバカ(=孝)!
テメーが籠の鳥のおかげで、ヨメンズは『色々溜まってんだ』!
(第108話)
昨夜の分だけじゃ、『全然足りねーぞ』!」
(第170話)
(やけ笑い)ガハハ。。。
だから、撫山教授に、私とバカ(=孝)の共同指導を申し入れたんだって。。。
(ため息)はー。。。
彼女(=幸代准教授)、本当、厳しかったな~。。。