第167話 孝の学会発表(その10) ーNOH大の最凶最悪コンビ(その3)ー
(前話からの続き)
学会関係者用の控室での、撫山教授、NOH大の幸代准教授、私、NOHの葵さんと哲君、そしてバカ(=孝)の話は続く。
NOH大の幸代准教授は葵さんと哲君のNOH大の最凶最悪コンビについて語る。
「葵君と哲君のGPSスマホハッキング騒動の結果、
100m圏内の飲食店は付き添いがいれば、時間無制限になったんだけど、
NOH市内にある店だから、中には少々お高い店もあるのよ。。。
だから、哲君、年間50万円の給付型奨学金だけでは、
100m圏内の飲食店で飲み食いするには苦しいので、
バイトしたいと葵君に相談したのよ。。。
もちろん、当時は100m圏内と言っても、学外のバイトは厳禁だったわ。。。」
葵さんはすました顔で話をつないだ。
「NOH大の近くは雑居ビルとか、マンションが多くってね。。。
そう言った雑居ビルとかマンションは、2階までは学生向けの店舗で、
3階以上は住居ってところが多いのよ。。。
そこに目をつけてね。。。
そこで、大学から100m圏内で1階は飲食店、2階は学習塾と言う物件を探して、
哲と一緒に学習塾のバイトを始めたの。
大学には飲食店に行っていると嘘をついてね。。。
地図をマッピングするだけならバレないし、
ほとんどの場合、高度まで注意しないし。。。」
幸代准教授は苦虫を噛み潰したような顔で語る。
「数か月後、バレたんだけど。。。
葵君、
『既得権益よ。今さらバイト辞められないわよ。
学習塾の業者を困らせる気?』
って開き直ったのよ。。。
まあ、仕方がないから、大学は付き添いさえいれば、
大学から100m以内ならバイトは許可したわ。。。」
I大でも大学から100m圏内なら、付き添いがあればバイトOKとなったのは(第91話)、これか。。。
気を取り直したようにNOH大の幸代准教授は話を続けた。
「それから、哲君、葵君に
『たまにはNOH市の繁華街に遊びに行きたい』
って葵君に相談したの。
でも、NOH大は当時、繁華街に行くには、最低5名の付き添いが必要だったの。
ただ、葵君と哲君の学科は葵君を含めても、
6名の女子クラスメートしかいなくって、
5名を集めるって簡単じゃなかったの。。。
しかも、葵君には人望がなくってね。私(=幸代准教授)に相談したの。。。」
幸代准教授はにやりと笑って語った。
「だから、参考にしてもらったわよ。。
愛唯君、孝君、あなた達がはじめた集団デート方式を。。。
すでに、情報は撫山先生から入っていたしね。。。
私も撫山先生から集団デート方式の、
『女の子はデート相手だけど、警備員も兼ねる』
と聞いた時は、あきれたけど。。。」
(第55話~第57話)
私は驚く。
「え?」
葵さんが笑顔で話をつなぐ。
「集団デート方式は面白かったわ。
でも、それは幸代先生が言うように、
私達(=葵、哲)の学科は女子クラスメートが6名しかいないから、
I大のように15名なんて無理なの。。。
だから、哲に
『マッチングアプリ作ったら?』
って言ったの。。。」
哲君が話をつないだ。
「だから、NOH大内でマッチングアプリを構築できる学生を数名探して、
マッチングアプリを作ったっス。
そのアプリをNOH大の男子学生に広めて、実は今の妻の2人は、
当時NOH市の女子大に通っていたから、彼女達に広めてもらったっス。」
幸代准教授があきれた表情で語る。
「このマッチングアプリが、
NOH大の東にあるいくつかの女子大の学生の間で大ヒットしてね。。。
そりゃ、女子大の学生では、特別な許可がない限り、
NOH大に立ち入ることはできないわ。。。
つまりNOH大の男子学生と知り合いになるチャンスなんてないわ。。。
ましてや私達の地域ではトップにある
NOH大の男子学生と知り合いになれるんだから、
NOH大の近くでは、集団デートにやってくる女子大生が殺到したわよ。。。」
私は思わず笑ってしまった。
「がはは!」
哲君はどや顔で語る。
「マッチングアプリのあまりの人気に、
ベンチャー立ち上げることも考えたんスけど。。。
最終的にはアプリを業者に売ることを選択したっス。
売却費はアプリを製作してくれた学生達と山分け。。。
デートの資金に使わせてもらったっス。。。」
会話しながら、私は思った。
私達(=愛唯、孝)はGPSスマホをハッキングできる学生達を集めること(第166話)は可能だっただろうか?
集団デートのマッチングアプリを製作する学生達を集めること(今話)は可能だっただろうか?
いや、そもそも、その発想がなかった。
そう、NOH大の最凶最悪コンビ(=葵、哲)は、私達(=愛唯、孝)より、
『スキルとスケールが数段上』なのだ。
よく、バカ(=孝)は謙遜する。「僕(=孝)は『井の中の蛙』である」(第6話、第58話)と。。。
その謙遜通りなのだ。バカ(=孝)は所詮I大だけの『井の中の蛙』なのだ。
そして、それはバカ(=孝)だけでなく、私も『井の中の蛙』に過ぎないのだ。。。
NOH大の最凶最悪コンビの話を聞いて、それを『実感』した。
だけど同時に、NOH大の最凶最悪コンビの葵さんと哲君の話を聞いて、、、
私ったら、大学3年のとき、
バカ(=孝)と恋人として付き合っていた頃(第2章)の
『血が騒いじゃいまして』ね。。。
つまり、『I大の最凶最悪コンビ』の『血が騒いじゃいまして』ね。。。
「ね~孝~。
NOH大のGPSスマホのハッキングを参考にして、
I大で何かできないかしら~?」
って、つい、、、甘えた声で訊いてしまったんです。。。はい。。。
するとバカ(=孝)は腕を組んで天井を見上げて、考え始めたんです。
「うーん、、、
うち(=I大)には、GPSスマホのハッキング技術はないから、、、
そうだなー。。。」
慌てて、撫山教授が私達(=愛唯、孝)を大声で制した。
「お前ら(=愛唯、孝)、やめんか~!
これまでは見逃したやったが、今後は許さんぞ!!」
当然、私達は止めました。
私とバカ(=孝)は下を向いて、一緒に「「はい。。。」」と答えました。
でも、これは私達(=愛唯、孝)だけでなく、NOH大の葵さんや哲君も同じだったらしく、、、
「ね~葵さ~ん。
I大での購買を故意に欠品させた事例を参考にして、
NOH大でも何かできないスかね~?」
って、哲君、葵さんに尋ねてました。。。はい。。。
すると、葵さんは右手を顎に当てて、天井を見つめながら考え始めました。
「うーん、うち(=NOH大)は購買大きいからね。。。
I大みたいに、故意に品切れを起こすのは難しいから、、、
そうね~。。。」
やっぱり、NOH大の幸代准教授も、あわてて、葵さんと哲君を大声で制した。
「あんたたち(=葵、哲)も、やめなさい!
これまでは大目に見てあげたけど、今後は許さないわよ!」
葵さんと哲君はバツが悪そうに、「「はい、、、」」とつぶやいた。
幸代准教授はあきれて、私達(=愛唯、孝、葵、哲)に問うた。
「まったく、危ないったらありゃしない!
今までも疑問に思っていたけど、
あんたたち(=愛唯、孝、葵、哲)、どうして危ないことを思いつくの?」
しょうがないから、私は正直に答えたのさ。。。
「わたしは、、、まあ、バカだから、、、
孝にどんな知恵があるのか、つい聞いてみたくなっちゃうの。。。」
(第31話)
すると、NOH大の哲君が相槌を打った。
「あ、それ僕も同じ!
僕も基本アホっスから、自分ではアイデアが出てこなくって、、、
ついつい、葵さんにどんなアイデアがあるのか、
聞いてみたくなるんスよ。。。」
バカ(=孝)は戸惑いながら答えた。
「僕は、ほら、、、
100分の1の男性だから、いつも愛唯さんに世話ばっかりかけているので、、、
愛唯さんから頼まれると、
『できないとは言えない』
んですよ(第25話、第41話)。。。
それで、たとえ、『机上の空論』であっても、案を示しているわけで。。。」
葵さんも戸惑いながら答えた。
「私も、ほら、、、
哲が100分の1の男性なので、いろんな苦労をしているわけで、、、
哲から
『実現方法はないか?』
って問われたら、
『できないとは言えなく』
って、、、
仕方がないから、『机上の空論』と思っても、それを教えているの。。。」
私が話をつないだ。
「その『机上の空論』って聞くと、
ついつい『実現して、孝を驚かせたくなる』の。。。」
(第31話)
哲君が相槌を打った。
「あ、それ僕も同じっス!
『葵さんを驚かせてみたくなる』っスよ。」
撫山教授と幸代准教授は、両大学の最凶最悪コンビは、同じパターンで悪事を働くと気付いた。
そして思わず、二人はハモって突っ込んだ!
「「同じパターンか!!」」
(次話に続く)
主人公の愛唯と孝は、『I大の最凶最悪コンビ』として名を馳せるが、『井の中の蛙』に過ぎないことを知ることは、この物語の構想段階から考えていました。
そして、愛唯と孝にとって、他大学の最凶最悪コンビは、巨大な壁となっていくのです。