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第152話 共に(その2) ー撫山教授のアイデアー

(前話からの続き)


でもね。。。次に、バカ(=孝)は真剣な表情で、こう言ったんだ。。。

 

「愛唯さん。

 修士だけでなく、

【共に】博士課程に進み、『一緒に大学教員を目指しませんか?』」

 

 

 

私は驚いた。

 

「え?」

 

 

 

バカ(=孝)は続ける。

 

「小学校の低学年だと、父親を良く知らない子供が少なくないそうです。

 (第50話、第108話)

  

 となると、約10年後には、父親を良く知らない学生達が大学に入学します。

  

 そんな学生達に、夫婦の姿を僕達(=愛唯、孝)が示しませんか?

  

 つまり、

  『久美子さんと竜二君が、今、やっていること(第135話)を、

   ()()()()()、【僕達(=愛唯、孝)が】、実現しませんか?』」

 

 

 

私は戸惑いながら問う。

 

「ひょっとして、 

 去年のクリスマスパーティ(第108話)と、合同謝恩会(第124話)で、

 私をちらっと見たのは、そういうこと?」

 

 

 

バカ(=孝)は戸惑いながらうなずく。

 

「あ、(ちらっと見たのを)気がついてました?

  

 ええ、竜二君が羨ましかったので。。。

  

 でも、

 あの時は愛唯さんはRRFM社に就職が決まっていたので、

 言えませんでした。。。」

 

 

 

私はうなずいた。

 

「そういうこと。。。」

 

 

 



私は正直、とてもうれしかった。

  

そう、バカ(=孝)の言うとおり、10年後には、父親をよく覚えていない学生が大学に入学してくれるだろう。。。


そして、その数年後には、一夫多妻か、人工授精で生まれた学生が大学に入学してくる。。。


その学生達は、本来の夫婦の姿を知らない。。。

 

 

 

そんな学生達に、『本来の夫婦の形を見せるのは貴重な機会』だ!

 

それを、私とバカ(=孝)が担うなんて。。。

 

『やってみたいに決まっている』じゃないか!




私も久美子と竜二の話を聞いて(第135話)、『羨ましかった』んだ!


『是非やりたい』!!

 

 

 

しかも、、、バカ(=孝)は、『真っ先に私とやりたい』と思ってくれた!

 

とても『うれしかった』!!

 

もしも実現できたなら、私はヨメンズで常に『一番』でいられる!!!

 

 

 

 

 

でも、、、それは『途方もない目標』だ。。。

 

だって、パンデミック前まで、私は留年ギリギリの低空飛行をしていたんだぞ(プロローグ)!

 

おまけに、パンデミック直後は、本当に留年寸前で、撫山教授の温情で進級できたんだぞ(第2話、第8話)!

 

しかも、私は『行動力だけのバカ』なんだぞ(第86話)!

 

そんな私が、、、

まだ院試にさえ合格してもいない私が、、、

『バカ(=孝)と一緒に大学教員を目指す』なんて、、、

とても言えなかった!!

 

 

 

だから、こうしか言えなかった。。。

 

「悪くないわね。。。」

 

 

 

まあ、とってもうれしかったから、笑顔で言ったかもしれないけど。。。

 

 

 



バカ(=孝)と会話していると、不意に撫山教授の声が聞こえた。

 

「だが、その夢の実現は厳しいぞ。。。

 明日以降、厳しく指導するからな。。。」

 

 

 

驚いて声のする方向を見ると、研究室の脇に撫山教授が立っていた。

 

ずっと、私達(=愛唯、孝)の会話を聞いていたのだ。。。

 

 

 

撫山教授は私の席に山のような論文を積んだ。

 

そして、にやりと笑って、私に語った。

 

「愛唯君。

 研究活動の手始めに、この論文を全部読んで、レポートを提出するように。

 期限は○○まで。」

 

 

 

次に撫山教授はバカ(=孝)に向かって語った。

 

「孝君。

 愛唯君が期限までに論文をすべて読み、レポートを提出できるよう、

 フォローをするように。」

 

 

 

バカ(=孝)は慌てて返事をした。

 

「は、はい。」

 

 



 

いやー、焦ったね。。。

ま、いずれ大量の論文を読まされるとは思ったよ。。。

 

思ったけどさー。

 

建物の鍵を渡され、研究室の出入りを許可された当日(第150話)に、

いきなりこんなに大量の論文を渡されるなんて思わないじゃないか!

 

しかも、、、まだ、、、院試にも受かっていないんだよ?

 

 

 

だから、精一杯の抵抗を試みたのさ。。。

 

「せ、先生。。。

 まだ、私は院試にも受かっていません。

 ま、まずは院試の準備に専念させてください。」

 

 

 

だが、撫山教授にそんな抵抗は通じなかった。

 

「院試?

  

 あんなもん、大学3年生の授業の内容をちゃんと復習すれば、

 誰でも受かるわい!

  

 それに、愛唯君は特別課題をしているから(第43話)、あの内容と比べたら、

 院試の内容なんて楽勝で受かるはずだ!

  

 しかも、出題範囲は教えたろ(第150話)?

 CCコースの全教員から教えてもらったはずだ。

 だったら、ちょー楽勝だ。

  

 それに、院試は9月中旬、今は7月下旬だ。

 2か月近くあるから、論文読みながらでも、十分、院試の準備は可能だ!

  

 第一、これでも手加減してやっているんだ!

 院試が受かったら、この倍の論文を読んでもらうからな!」

 

 

 

私はグッと詰まった。だが、それでも私はさらに、必死に、抵抗を試みた。

  

「せ、先生。。。

 わ、私はまだ特別研究生にもなっていません。

 が、学費を払ったとしても、特別研究生になれるのは10月以降ですし。。。

 な、何の権限があって、こんなに大量の論文を読ませるのですか?」

 

 

 

すると、撫山教授は、再びにやりと笑い、私に語った。

 

「権限?


 私は

  『バイト先の紹介手数料と、研究室の出入り許可の駄賃として、論文を読め』

 と言っているんだ。

  

 なんなら、バイト先を変えるか?

 そして、研究室の出入りを10月以降にするか?

  

 私は『一向に構わん』ぞ。」

 

 

 

10月まで、研究室に通えないんじゃ、それまで共同住宅でボーとしているしかない。

だって、学生じゃないのでね。。。図書館で勉強って訳にもいかない。。。

 

私は山と積まれた大量の論文を読む以外、選択肢がなかった。

 

「(嫌々な合意)ファ~イ。。。

 喜んで論文を読ませていただきます。。。」

 

 

 

撫山教授は笑顔で私に語る。

 

「愛唯君、孝君からの話を聞いて、君はうれしそうだった。

  『わるくない』

 とは言ったが、君も大学教員になりたいんじゃないのか?

  

 そのためには博士課程まで進まなければならない。

 だったら、これくらいの論文は読まなきゃだめだ。」

 

 

 



そして、撫山教授は研究室を出ていった。

 

撫山教授が研究室から出て言ったのを見ると、私は八つ当たりして、バカ(=孝)を罵った。

  

「このバカ(=孝)!

  

 あんたが不用意にあんたの夢を語ったせいで、

 いきなり、わたし、こんなに大量の論文を読む羽目になったじゃない!

  

 どうしてくれるのよ!

  

 どうして、共同住宅で二人っきりの時に、話さなかったのよ!」

 

 

 

バカ(=孝)は困ったように返す。

 

「いや、だったら、、、

  

 どうして一昨日、RRFM社から帰って、昼過ぎに僕と一緒に掃除していた時に、

 退職したことを話してくれなかったんですか(第147話)?

  

 昨日だって、今日だって、

 優子さん、瀬名さんが出勤した後(第148話、第150話)、

 朝、一緒に掃除しましたよね?

  

 そのときだって、話すことができたじゃないですか。。。」

  

  

  

そのとおりなのだ。。。


あの時は話す勇気がなく、話すことができなかった。。。


もっと、早く、退職のことを話すべきだったのだ。。。

 

バカ(=孝)の反論はその通りなのだ。。。

 

 

 

だが、その通りと思いつつ、逆切れして、バカ(=孝)を罵った。

 

「うるさい! バカ(=孝)!!」




バカ(=孝)は何か言いたげだったが、私の怒りの表情を見て、黙り込んだ。

 

「・・・」

 

 



 

実はこの時も、撫山教授は研究室の出入口の脇に隠れ、私とバカ(=孝)の会話を聞いていた。

 

撫山教授は私の罵り声を聞くと、吹き出し、つぶやいた。

 

「ははは!

 ここ(=研究室)も、再び、愛唯君と孝君のコンビで、にぎやかになるな。。。」

 

 

 

そして、またつぶやいた。

 

「それにしても、私の『アイデア』と同じことを、

 孝君が思いついたとはな。。。」

 

 

 

撫山教授は微笑みながら、研究室を後にして、彼の個室へ歩いて行った。

 

 

 



これは、かなり後になって、撫山教授から聞いた話なんだけどね。

 

2度目の大学2年の10月、つまり大学が再開した頃(第1話)、I大学は他の大学と同様に、文科省から大学の活性化策を求められていたのよ。

男子学生が100分の1になってしまったからね。。。

 

そして、私が大学3年の春、バカ(=孝)をトランクに押し込んで守衛を突破し、CCコースのクラスメートと共に、聡君の墓に行ったじゃない(第17話)?

 

で、CCコースのクラスメートを説得したじゃない(第17話、第18話)?

 

それを見た撫山教授は、大学の活性化の一環として、

『私とバカ(=孝)を大学教員として育てるというアイデアを思いついた』の。。。

 

で、学長や一部教員に、そのアイデアを披露したんだって。。。

 

そのとき、撫山教授は、私達(=愛唯、孝)を『危なっかしいけど、面白いコンビ』って、学長や一部教員にふれ込んだらしいの。。。

どうも撫山教授は『名物教員として育てます!』ってふれ回ったらしいの。。。


まったく。。。

 

 

 

で、ちょうど、私が大学祭で大立ち回りなんかしたもんだから(第38話)、興味を持った学長が、学長室に私とバカ(=孝)を、撫山教授同伴で呼びつけったって訳(第39話)。。。

 

で、学長室から私とバカ(=孝)が退出した後、学長了承の下、撫山教授のアイデアを推進することになったらしいの(第39話)。。。

 

 

 

まあ、あの無茶苦茶難しかった特別課題(第43話)も、バカ(=孝)に対する厳しい卒業研究の指導(第106話)も、その『アイデア実現のため』ってのが主目的だったわけ。。。

 

ま、バカ(=孝)の永遠の試練(第71話)に対する備えも兼ねていたけど。。。

 

 

 

 

 

一方、私が大学院進学を決めたことは、撫山教授のアイデアを実現すべく、撫山教授にとって、私と孝への長い指導の始まりを意味していた。

だって、少なくとも博士号を取得する必要があり、私には約5年半、バカ(=孝)約4年半、撫山教授は指導しなくてはならない。

 

しかも、バカ(=孝)は約1年半後、修士を卒業する時、助教になる予定だが、助教になるには並みの修士の業績ではなることができない。

そう、これから約1年半の間、バカ(=孝)には厳しい指導が待っている。

 

それだけじゃない。

そもそも、I大では助教には任期が定められている。

任期のない常勤講師になるには、さらに実績が必要となる。

 

そう、私達(=愛唯、孝)は当然のことながら、撫山教授もまた、長い期間にわたり、その手腕が試されることになる。。。

 

だが、撫山教授は笑顔でつぶやいた。

 

「さて、明日から二人(=愛唯、孝)とも、ビシバシ鍛えないとな。。。」











そう、この日から、私とバカ(=孝)は、、、

【共に大学教員となる夢】に向けて、歩み始めた。












第35話の後書きで、

 第34話の『撫山教授のアイデア』や、

 第35話の『愛唯と孝の人生の影響』については、

 とっても先の話で、それまで私がモチベーションを維持できて、

 連載が続いていれば、書く予定です。

としましたが、ようやく今話の話で触れることができました。


100話以上も間をあけて済みません。。。

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