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第144話 人事担当・穂菜美課長との面談(その1) ー早川部長と門奈課長の事情ー

今話から、第143話で主人公の愛唯(メイ)が社員証を無理やり返却し、退職の意思を人事に告げた後の話を行います。


本章のまとめに入りますが、皆様、お付き合いください。



私がRRFM社に退職の意思を伝えて、約1か月後、8月下旬だった。

 

その間、私はずっと出勤しなかった。

ま、そもそも、社員証は返却済で(第143話)、出勤不可能だったし。。。

 

 

 

RRFM社の人事から、私のスマホに電話がかかり、直接自宅に来て面談したいとの連絡があった。

 

しかし、私が住んでいる共同住宅には、I大のセキュリティゲートを通過しなければならず、部外者は立ち入りができない。そこで、I大近くの喫茶店で待ち合わせることになった。

 

さて、待ち合わせの喫茶店で、待ち合わせの時刻に待っていると、人事担当の穂菜美課長がやってきた。

私とテーブルの向かい側に座った。


彼女は席に座ると、まず私に頭を下げ、真剣な表情で私に語った。

 

「まず、今回のハラスメント案件はRRFM社側の落ち度よ。

 

 早川部長と門奈課長は、人事からの警告を逆恨みして、あなただけでなく、

 100分の1の男性の透君、100分の1の男性の妻の祐未君、真里主任に対しても、

 ハラスメント(第139話、第140話)を行ったことは言語道断よ。」

 

 

 

そして穂菜美課長は私が帰った後のことを話した。

 

「私がIT部門のオフィスに駆け込むと、早川部長と門奈課長を囲み、

 古川次長、福田課長、吉川課長、涌井課長、緑主任が

 激しく責め立てていたわ。。。

 

 特に緑主任の怒りは激しかったわ。。。

 

 でも、早川部長と門奈課長は頑な態度で終始していた。。。

 

 透君、祐未君、真里主任は、私がオフィスに入ってきたのを見ると、

 私に駆け寄って来てね。退職の意思を告げたの。。。

 

 私、慌てて、内線用のスマホで配下を呼んで、

 透君、祐未君、真里主任を人事で預かることにしたわ。。。

 

 この様子を見て、早川部長では、もう部を制御できないと判断したわ。。。

 

 私と緑主任は、別の場所で会議をしていたIT部門の役員を、

 無理やり引っ張り出して、オフィスに連れてきたの。。。

 

 オフィスの様子を見たIT部門の役員は、

 すぐに早川部長と門奈課長に自宅謹慎を言い渡したわ。。。

 

 当面は部長の職は、IT部門の役員が兼務して、

 日常業務については、早川部長の代行は古川次長が、

 門奈課長の代行は緑主任が担うってことで、その日の騒動は収めたわ。。。」

 

 

 

 

 

穂菜美課長はため息をついて、話を続けた。

 

「実は、当初、IT部門の役員は、早川部長と門奈課長に対して、

 寛大な処置をとるつもりでいたの。。。」

 

 

 

私は驚く。

 

「え?」

 

 

穂菜美課長は苦笑いを浮かべて答える。

 

「彼(=IT部門の役員)は言っていた。

  『もちろん、このハラスメント事案は言語道断。

   

   でも、二人(=早川部長、門奈課長)とも、

   パンデミック前は人間的にも素晴らしく、

   パンデミック後の社会に戸惑ったんだ。

 

   だから、こんなハラスメント事案を引き起こした。

 

   やり直す機会を与えれば、きっと立ち直ってくれる。』

 て。。。」

 

 

 

穂菜美課長は続ける。

 

「そもそも、わが社で部長や課長になるには、それまでの業績はもちろん、

 管理能力も、人間性も優れていないとダメよ。

 

 また、IT部門の役員は、まだ彼が主任とか課長だった頃、

 若手社員だった早川部長や門奈課長の直属の上司だったこともあり、

 二人のことを良く知っているの。

 

 そして、早川部長や門奈課長が、どうして100分の1の男性や、

 その妻に差別的な言葉を発するかの背景を知っていたの。。。」

 

 

 

 

 

穂菜美課長は再びため息をつくと、話を続けた。

 

「まずは早川部長なんだけど、彼には娘がいて、有名私大に通っているの。。。

 その娘の恋人が奇跡的に生き残ったらしいの。。。」

 

 

 

つまり、早川部長の娘は、100分の1の男性の恋人なのだ。。。

 

穂菜美課長は早川部長の話を続ける。

 

「生き残った直後は、娘さんだけでなく、早川部長も喜んだんだけど、、、

 

 娘さんが、『恋人との一夫多妻の学生結婚したい』って願い出たらしいわ。。。

 

 それを、早川部長は、『恋人の娘への裏切り行為』って捉えて、

 烈火のごとく怒って、娘に恋人と別れるよう、迫ったらしいわ。。。

 

 娘さんは『恋人を守るためなの』と涙を流して、結婚の許可を願ったけど、

 『娘さんと恋人の仲を無理やり引き裂いた』みたい。。。

 

 それ以来、『早川部長は100分の1の男性に拭い難い不信感がある』の。。。」

 

 

 

私は天井を見上げ、ため息をついた。

 

おそらく、早川部長の娘さんは、恋人を拍子法行為から守るため、一夫多妻の学生結婚を早川部長に願い出たのだろう。

 

そう、私がそうだったように(第81話)。。。

 

私の場合、父が県庁の幹部だったため、バカ(=孝)を拍子法行為から守るため、一夫多妻を受け入れざるを得ないのを知っていた。

 

だが、もし、父が県庁の幹部ではなかったなら、、、

早川部長のように、烈火のごとく怒り、私とバカ(=孝)の仲を引き裂いたかもしれないのだ。。。

 

 

 

 

 

穂菜美課長は門奈課長について話した。

 

「次に、門奈課長なんだけど、彼にはパンデミックの前、

 妻と一人息子がいたの。。。

 でも、あのウイルスで一人息子を亡くしてしまった。。。

  

 そして、彼には一人の部下がいた。

 その部下は真里主任と同期入社なんだけど。。。

 その部下は、あのウイルスで夫と子供を同時に亡くしたの。。。

 その部下は『もう一度子供を授かりたい』って、

 門奈課長に逆プロポーズしたの。。。

 

 門奈課長は同情心から一夫多妻をうけいれたの。。。

 時限立法で、一夫多妻はすべての男性で可能だからね(第2話)。。。

 

 でも、それは、

 最初の妻には、つまりパンデミックの前に結婚していた妻には、

 一人息子を亡くした彼女の心情を無視した裏切り行為に映った。

 

 で、最初の妻から離婚を切り出されて、離婚してしまったの。。。

 

 元部下との間には、子供が生まれたんだけどね。。。

 

 元部下に対して、最初の妻の離婚の原因だとなじり、

 あろうことか、元部下に暴力を振るうようになり、

 元部下とも離婚してしまったの。。。

 

 元部下との間に生まれた子供は、元部下が連れて行った。。。

 それ以来、『一夫多妻』を毛嫌いしているの。。。」

 

 

 

再び、私は天井を見上げ、ため息をついた。

 

門奈課長が一夫多妻について否定的になるのはやむ得ないのだ。。。

 

 

 

 

 

穂菜美課長は神妙な表情で続ける。

 

「再度言うけど、IT部門の役員は、

 今回のハラスメント案件は言語道断だと言っているの。。。

 

 その上で、今回の原因は、

  『社が100分の1の男性に対する秘密を固く守りすぎた』

 ことだと言っているの。。。

 

 少なくとも部長レベルには他言無用を徹底させた上で、

 情報を公開すべきだった。

 

 だって、RRFM社の各部は100人以上の従業員から構成される。

 数百人を抱える部だって珍しくないのだから。。。

 

 だとすれば、各部に1名以上の100分の1の男性がいるし、

 その妻は数名いることになる。

 

 特に、100分の1の妻は、結婚を伏せていることが多いから、

 配下は知らず知らず、

 その妻にハラスメントを行っているリスクだってあるわ。。。

 

 部長レベルには情報公開した上で、

 部内でイジメをふくむ、ハラスメントが発生しないよう、

 目を光らせろと通達を出すべきだったって。。。」

 

 

 

穂菜美課長はさらに続ける。

 

「それで、翌日、IT部門の役員は、私と人事担当の部長、

 そして人事担当の役員も同席させた上で、

 早川部長と門奈課長を会議室に呼んで、

 100分の1の男性の秘密を明かしたわ。。。

 

 もちろん、他言無用を誓わせた上でね。。。

 

 二人とも唖然としてた。。。

 

 そのうえで、早川部長と門奈課長は正式な処分が決定するまでの間、

 IT部門の役員預かりとして、彼(=IT部門の役員)の個室に、

 二人の机をおいて、特任業務を行わせることにした。

 

 そして、IT部門の役員は『厳重注意』処分として、懲罰委員会に諮り、

 この案件の幕引きを図ったの。。。」

 

 

 

穂菜美課長は再びため息をついて、続けた。

 

「でも、これで幕引きとはならなかったの。。。」

 

 

 

私は驚く。

 

「え?」




(次話に続く)


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