第140話 vs 早川部長、門奈課長(その2) ー愛唯、涙の抗議をするー
(前話からの続き)
門奈課長は私に問うた。
「愛唯君。君の夫は、君を含めて何人の妻を娶ったんだ?」
私は答えた。
「私を含め、3人です。」
すると、門奈課長は、ニヤリと笑い、バカ(=孝)を侮辱した。
「(有名私大修士卒の)私でさえうまくいかないのに、
I大なんてバカ大学の奴が一夫多妻なんてうまくいくわけないだろ!
愛唯君と同じでバカな奴なんてすぐわかる!」
この門奈課長の言葉は、最後の一線を超えた!
私は社員証を机に叩きつけた!!
そして涙を流して、門奈課長に抗議した!!!
「100分の1の男性は一夫多妻をやむなく受け入れているの!
なぜなら、
『自殺者が出るほど、
辛い役割が100分の1の男性には課せられている』
からよ!!」
私の言葉に『緑主任は目を大きく見開いた』。
だが、門奈課長は嘲る。
「ふん、そんなことは聞いたことがない。
一夫多妻なんて受け入れたバカな娘の見え透いた嘘だ!」
すると、真里主任が門奈課長を罵った。
「嘘じゃないわ!
私の今の夫の一番目の妻から、聞かされた!
夫を守るためには、一夫多妻を受け入れなくてはならないのだと!」
早川部長が真里主任を否定する。
「部長の私でさえ、そんなことは聞いたことがない。
一夫多妻を受け入れた淫乱な女達よ。
そんな嘘はやめるんだ!」
私は早川部長を罵った。
「そうでしょうね!
だって、これはわが社では役員クラスしか知らないことですもの!!
そして、どうして役員クラスしか知らないか?
それは、100分の1の男性に、更なる偏見を与えかねないからよ!
早川部長、あなたは部長ですから、知っているはずですよね?
『100分の1の男性に外出の自由や旅行の自由がない』
ってことを。。。」
オフィスはざわめいた。
「どういうこと?」 「え? うそ!」
そして早川部長は驚き、私を罵った。
「それは、他言無用の案件だ! 愛唯君、君は懲戒対象だ!」
私は言い返した。
「ええ、私は今日、この会社を辞めます。
もう辞めてやるわよ! こんな会社!!」
私は皮肉を込めて続けた。
「早川部長、
100分の1の男性に外出の自由や旅行の自由がないだけが、
100分の1の男性の秘密だと思ったんですか?
100分の1の男性に外出の自由や旅行の自由がないことの対価のみで、
100分の1の男性への様々な優遇策がとられていると
思っていたんですか?
疑問に思わなかったんですか?
私より、社会経験は豊富なはずですよね?」
再びオフィスはざわついた。
「なに? それ?」 「優遇策って、、、そういうこと?」
門奈課長は反論する。
「ふん、役員クラスしか知らない秘密なんて、ウソに決まっている!」
私は皮肉交じりに言い返した。
「あっら~♪
役員クラスしか知らない秘密があることに関しては、
新入社員研修で説明がありました~♪
(第128話)
なんでしたら、私と祐未と透君以外の、
新入社員に確かめてみたらどうですか~♪」
6月に8名の新入社員が配属されている(第129話)。
私と祐未と透君以外の新入社員5名は黙って頷いた。
門奈課長は顔面蒼白になってつぶやく。
「じゃ、本当に、100分の1の男性には、
役員クラスしか知らない秘密があるのか。。。」
私は続けた。
「早川部長、門奈課長、さっき言いましたよね。
『私への侮辱は、私自身の不出来から来るものもあり、受け入れる。』
と。。。
でも、100分の1の男性への侮辱は許さない!
とりわけ、夫(=孝)に対する侮辱は絶対許さない!!」
いつまにか私の両目には涙が流れていた。
「今でも私はバカだけど、パンデミックの前はもっとバカだった。。。
(プロローグ)
パンデミックの前には、私には優秀な弟がいて、別の素敵な恋人がいた。。。
(プロローグ)
でも、パンデミックで2人共失った。。。
家庭も崩壊しちゃって、なんのやる気も出なくって、
大学は留年寸前だった。。。
(第1話)
あのままなら、大学もやめてしまったかもしれないくらい。。。
(第1話)
そんな時、夫と、男子クラスメートの弔いに出掛けた。
夫は、孤独と、自分一人が生き残った罪悪感に苦しみながらも、
ある一人の男子クラスメートの遺影に、涙を流しながら誓ったの。。。
『実現したい夢がある。
パンデミック前の世界を取り戻すって夢がある。
その夢の実現に助かった命を使う』
って。。。」
(第3話)
そのとき、再び、『緑主任の目が大きく見開いた』。
私は涙を流しながら続けた。
「その夢を聞いて、私にも夢ができた。
そう、『パンデミックの前の世界を取り戻す』という夢が。。。
だから、私は社会がどうしたら、その夢が実現できるのか問うた。
そしたら、答えてくれた。
(第4話)
次に、私個人は何をすべきか問うた。
それも答えてくれた。
(第5話)
私はすべきことがわかり、救われた。。。
なにより、孤独と、自分一人が生き残った罪悪感に
苦しみながらも、前向きに生きる姿を見て、
私も見習わなきゃって思った。。。
私だけじゃない!
もう一人の妻も今の夫に救われたの!!
(第7話)
3人目の妻は、パンデミックの前から夫が好きだった!
私を含め、妻3人は、夫が大好きよ!!」
私は涙を流しながら叫んだ。
「たしかに、夫には私を含め、3人の妻がいるわ!
でも、夫は最後まで『僕が我慢すれば良いことだから』って抵抗した!
なかなか一夫多妻を受け入れなかった!!
だけど、私ともう一人の妻が無理やり説得したの!!!」
(第79話)
緑主任は驚き、私に問うた。
「愛唯君。。。どうして?」
私は涙を流しながら答えた。
「先ほど言ったように、自殺者が出るほど、
辛い役割が100分の1の男性には課せられているからです。
その役割から逃れるには、一夫多妻を受け入れるしかないからです。
もう、夫が苦しむ様を見たくなかったんです!」
私は涙を拭うと、門奈課長に向き語った。
「門奈課長、確かに一夫多妻は難しいわ。
私達が結婚した時、私達を含め、
同時に4組の一夫多妻の夫婦がI大学の共同住宅に入居した。
でも、いま残っているのは、1人も離婚せずに残っているのは、
私達だけよ。。。
(第113話)
私達も結婚して1か月くらい、
結婚生活を安定させるのは大変だった。
(第92話~第97話)
100分の1の男性も、
一夫多妻を維持することは大変難しいことは分かっているの!
でも、それでも選ばなきゃならない状況に置かれているの!!」
私はカバンを持つと、早川部長と門奈課長を罵った。
「もうこんな会社やめます!」
そういうと、オフィスを出た。
すると、透君、祐未、真里主任も続いた。
透君もカバンを持ち、席を立ち、「僕もこんな会社やめます!」と叫んだ。
祐未も席を立ち、「もうこんな会社タクサンよ!」と叫んだ。
真里主任もカバンを持ち、席を立つと、「もうイヤ! 会社やめます!!」と叫び、社員証を机に叩きつけた。
慌てた彼らの上司が宥めた。
福田課長は透君に近寄り、透君の肩に手を当て、「透君、落ち着け!」と叫んだ。
吉川課長も祐未に近寄り、「祐未君、考え直したまえ!」と声をかけた。
涌井課長も「真里主任、まずは落ち着いて! よく考えよう!」と叫んだ。
そして、早川部長と門奈課長に謝罪を要求した。
福田課長は早川部長と門奈課長を睨み、「早川部長、門奈課長、発言を取り消してください!」と叫んだ。
吉川課長も続いた。
「そうです。あなた方2人の発言が、こんな事態を引き起こしたんですよ!」
涌井課長も早川部長と門奈課長を罵った。
「ともかく、愛唯君、透君、祐未君、真里主任に謝罪してください!」
だが、早川部長と門奈課長の態度は頑なだった。
早川部長は私、透君、祐未、真里主任に向けて、こう言い放った。
「ふん!
100分の1の男性に、その妻なんて、俺の部には必要ない! とっと出て行け!」
門奈課長も続いた。
「そうです。謝罪を要することなんて言ってません!」
それを見た古村次長が発言した。
「早川部長、いい加減にしてください!
役員クラスしか知らない秘密については、
部長クラスには詳細に説明されていないが示唆されていた!
次長である私は、部長クラスとして、その場に早川部長と共にいた!
それより、あなたの個人的思いより、ここは部長として仕事をしてください!
もし、あなたがこのままの態度なら、
役員に相談して、私が部長の代行を務めます!」
早川部長は顔を真っ赤にして怒った。
「古村! なんだと~!!」
私はそんなことはしり目に、IT部門のオフィスを離れ、退職の意思を伝えるため、人事のオフィスの方へ歩いて行った。
たしか、IT部門のオフィスと人事のオフィスの中間の位置まで、歩いた時だったと思う。
後ろから緑主任が私の社員証を持って走って追いかけてきた。
「愛唯君! 待ちなさい!」
緑主任は私の社員証を押し付けるように渡すと、息も絶え絶えに言った。
「とりあえず今日は帰りなさい。
そして家で冷静になって考えなさい。
こっち(=会社)の方は、私の方で何とかするから。。。」
そして、緑主任は不意に両手で私の両肩を掴んだ!
彼女は震えながら、真剣な表情で私に問うた!
「それと、あなた(=愛唯)のご主人、孝君って、、、
『私の拍子法行為の相手じゃない?』」
私は一瞬、緑主任が何を言ったのか、分からなかった。
「え?」
(次話に続く)
本章、つまり「第5章 新たな試練、そして次の決断」の「新たな試練」は今話で終わり、次話から「次の決断」に向けて、物語が展開します。
主人公の愛唯は大きな決断に迫られることになります。
すでに本章の佳境に入っていますが、佳境はまだまだ続きます。