第126話 コンビでなく。。。(その2) ー他大学の最凶最悪コンビー
(前話から続き)
だが、撫山教授は違っていた。
「里子君、落ち着け。
それに、孝君の意見、ありうるな。。。」
優子は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
撫山教授は私達(=ヨメンズ、孝、里子、綾子、加奈、浩司)に語った。
「愛唯君と孝君は『I大の最凶最悪コンビ』と呼ばれていた。
ここで、『最凶最悪コンビ』の前に、
『I大の』と、つくのは、ちゃんと意味があるんだ。」
撫山教授は続ける。
「実は最凶最悪コンビがいたのは、I大だけじゃないんだ。。。」
私は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
撫山教授は続ける。
「すべての大学ではないが、幾つかの大学で、愛唯君と孝君のように、
危なっかしいが、大学を立て直したコンビが出現したんだ。。。」
撫山教授を除く全員が驚き、「「「「「「「「えー!」」」」」」」」と叫んだ。
撫山教授は全員が落ち着くのを待って、苦笑いを浮かべて話す。
「1年前、I大学の周辺100m以内なら、
付き添いがいれば外出時間無制限となったろ(第91話)?
実はあれは、『他大学の最凶最悪コンビが引き起こした事件』が発端だ。」
私は戸惑いながら、「そういうこと。。。」とつぶやいた。
撫山教授は苦笑いを浮かべたまま続ける。
「複数の大学で、同時に、
最凶最悪コンビが出現したことは不思議だとは思わないか?」
優子は驚きを隠せない様子で返す。
「愛唯と孝が恋人として付き合っていた時、
私は二人を
『神が仕組んだとしか思えない奇跡のカップル』
と思ってました(第26話)。。。
それが、複数の大学で同時に出現したと?」
撫山教授がうなずき答える。
「そうだ。
その『奇跡のカップル』が、複数の大学で同時に出現するなんて、
ありうると思うか?」
優子は戸惑いながら返す。
「難しいと思います。。。」
撫山教授は再びうなずき、語る。
「そう。通常はあり得ないだろう。
だが、孝君の意見(第125話)、
『何者かが、複数の大学で最凶最悪コンビを配置した上で、
パンデミックを起こした』
と考えれば、説明はつく。。。」
瀬名はあきれて撫山教授に問うた。
「撫山先生、そんな『何者』か、つまり神のような存在を、
先生のような大学の教授が信じるのですか?」
撫山教授は苦笑いを浮かべて返す。
「あんなパンデミックを起こしたのが神なら、その神をぶん殴ってやりたいさ。
私だって息子を亡くした。」
私も苦笑いを浮かべて思った。
だったら、私はその神を2発ぶん殴らなきゃ。私は恋人(=健司)と弟(=武)を亡くしたんだ。。。
里子をちらっと見る。彼女も苦笑いを浮かべて頷いていた。きっと彼女も同じ思いなのだろう。。。
バカ(=孝)は興味深そうに撫山教授に問うた。
「撫山先生、他の大学の最凶最悪コンビはどんな人達なのでしょうか?」
撫山教授は笑顔を浮かべて返した。
「いくつかのコンビは大学院に進学したそうだ。
だから、孝君は将来出会う可能性がある。
そのとき紹介してやるから、まずは大学院の研究に励め。」
バカ(=孝)はちょっと残念そうに、でも少し興味深そうに、うなずいた。
「わかりました。」
そうか、私は就職してしまうから、他の大学の最凶最悪コンビに会うことはないか。。。
ちょっと、残念だな。。。
後の優子:「まあ、『このときは』でしょ?
まったく、○○○○やらかすもんだから。。。(笑)」
後の瀬名:「そうそう。。。(笑)」
後の愛唯:「うっさい!」
私は優子に話しかけた。
「話を(第125話に)戻すわね。。。
私(=愛唯)は『行動力だけのバカ』だし、孝は『頭以外はポンコツ』で、
私(=愛唯)と孝だけでは足らぬものが多すぎるの。。。
だから、それを補ってくれる優子は大切な存在なの。。。
だから、結婚の経緯は気にしないで(第89話)。。。」
慌てて瀬名は優子に頭を下げて謝った。
「優子さん、ごめんなさい。
優子さんの悩みを旦那様(=孝)に話したの。」
優子は戸惑いながらうなずいた。
「そういうこと。。。」
私は瀬名に顔を向けて語った。
「瀬名、あなたは常に一歩引いた位置から意見をくれるわ。
だから、誤った判断をしなくて済んでいるの。
あなたは一歩引いた位置にいるから、ありがたいの。
だから、私と優子の絆、そして私と孝との絆には、
もう悩まないで(第90話)。。。」
優子も瀬名に慌てて頭を下げて謝った。
「瀬名、ゴメン。
瀬名の悩みを孝に打ち明けたんだ。」
瀬名も戸惑いながらうなずく。
「ええ。」
私は優子と瀬名に語り掛けた。
「改めて言うわ。優子、瀬名。
私(=愛唯)と孝の日頃の感謝として、ネーム入りボールペンを受け取って。。。
お願い。」
優子と瀬名は喜んで受け取った。
「ええ、そうか、私達(=ヨメンズ、孝)は『カルテット』だったかもな。。。」
「(ボールペンは)大事にする。」
私は里子に顔向けて語り掛けた。
「里子。私(=愛唯)と孝の感謝として、ボールペンを受け取って。」
里子は笑顔で受け取った。
「ああ、大切に使わせてもらう。 そうか、私は『プラスワン』か。。。」
その日の晩、つまり3月31日の夕方、ヨメンズと孝は夕食をとった。
明日から始まる新社会人生活に気合を入れようてんで、その日の夕食はいつもの冷凍宅配弁当ではなく、瀬名と優子が調理した。
そして晩酌も楽しんだ。
私はバカ(=孝)をある程度飲ませた上で、バカ(=孝)に語り掛けた。
「孝ー、私、明日から新社会人じゃん。だから、不安なの~。」
すると、バカ(=孝)は笑顔で返した。
「そうですか。。。
明日から僕は昼間は一人きりになるので、ちょっと不安ですね~。」
私は一緒に晩酌を楽しんでいた、優子と瀬名に小声で語りかけた。
「これが孝の悩みを聞く方法よ。。。
孝は私だから悩みを話すんじゃないの。。。
単に私は孝の癖を知っているだけなの(第96話)。。。」
優子と瀬名は驚き、小声でつぶやいた。
「こういうこと。。。」
「そうか。。。」
さらに私は優子と瀬名に小声で語りかけた。
「優子と瀬名への信頼の証として、孝の癖を教えるわ。。。」
そう、合同謝恩会(第124話)のとき、この孝の癖を明かす決意をしていた。
優子と瀬名への信頼の証として。。。
優子は戸惑いながら、小声で問うた。
「まあ、秘密を明かしてくれて私はうれしいけど。。。
秘密を明かしていいの?
愛唯、それで優越感に浸ったんじゃないの?」
さすがに優子はわたしのことはお見通しだ。。。
だが、私は苦笑いを浮かべながら、首を横に振り、小声で答えた。
「明日から私も社会人になる。
学生のころと違って、孝にべったりフォローはできない。
だから、優子と瀬名に教えたの。」
優子と瀬名はうなずいた。
「そういうこと。。。」
「確かに。。。」
それと、優子の一番の相談相手は瀬名になり、瀬名の一番の相談相手は優子になっている(第125話)。
それは、私がいつまでも優越感に浸っていたからだって思ったんだ。
長い結婚生活の安定を考えると、そろそろ秘密を明かすべきって考えたことも理由の一つだ。
ま、それは優子と瀬名には言わないが。。。
さて、明日は入社式、いよいよ新社会人になる。。。
今話にて、主人公の愛唯と孝との結婚1年目を描いた『第4章 妻、すなわち懸け橋』は完です。
次話から、愛唯の新社会人時代を描いた第5章が始まります。
第5章では、主人公の愛唯に新たな試練が訪れます。
そして愛唯は衝撃の事実に直面し、愛唯は新たな決断に迫られることになります。
第5章は、第3章を一度読み直していただいた上で、読んでいただけると助かります。