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第122話 合同謝恩会(その4) ー竜二のスピーチ、すなわち謝罪ー

(前話からの続き)


里子が真剣な表情で謝恩会参加者に語った。

  

「さて、今日は卒業謝恩会に乗っかって、

 私達(=里子、綾子、加奈、浩司)の結婚パーティを行っているんだけど、

 実は、『もう一組の結婚パーティも兼ねています』。。。」

 

 

 

その言葉を合図に、宴会場の別の入口が開かれた。

 

その入口から、理数系□□学科の3年生が入場した。

 

だが、一団に一人、異質の男性がいた。身長180cm弱、髪型はツーブロックショートで、背広を着た顔立ちの整ったイケメンだった。

 

その男性を見つけると、体育系の4年生達は大きな歓声を上げた。

 










私達(=ヨメンズ、孝)の近くにいた恵子(第120話)は、その男性が誰なのか、すぐにわかった。

 

恵子はつぶやいた。

 

「竜二じゃないの(第36話~第40話、第50話~第51話)!」

 

 

 

そう、理数系□□学科の3年生に周囲を守られながら、竜二が宴会場に入場したのだ。

正確には竜二の横には、もう一人の妻である、元サッカー部マネージャがいた。

彼女は理数系□□学科の3年生だったのだ。

 

そう、今日の合同謝恩会は、久美子、竜二、元サッカー部マネージャの2人の結婚パーティも兼ねていたのだ。

これは最初からのシナリオだった。

 

 

 






恵子は竜二を見つけると、「竜二!」と叫び、彼に駆け寄ろうとした。

 

だが、その直後、私達(=ヨメンズ)が3人がかりで、彼女にしがみついて、彼女の動きを抑えた。

そう、これも最初からのシナリオだった。

 

里子、綾子、加奈、浩司の結婚パーティのスピーチが、綾子、加奈を先に行い、かつ短めにし、里子と浩司のスピーチを後にして、かつ長めにした。


これは、加奈が宴会場の入口付近に移動し、竜二達が宴会場の入口に到着するのを確認するためであり、私達(=ヨメンズ)と綾子が恵子の近くに移動するためであったのだ。


場合によって『恵子を取り押さえるため』に。




恵子は叫んだ。

 

「離しなさいよ!」

 

 

 

私は恵子を抑えながら、笑顔で彼女に語り掛けた。

 

「恵子さん、お久しぶり。1年と10ヶ月ぶりかしら。

  

 確か、あなた、竜二が弟の形見のシャツを破って、

 竜二の部屋に抗議に行ったとき、竜二とテレビゲームをしてたよね(第36話)?」

 

 

 

そう、恵子は竜二がI大にいた頃、取り巻きの1人だった。

 

 

 

優子も恵子を抑えながら、笑顔で語り掛けた。

 

「恵子さんって言うのね。 

 私達(=優子、恵子)、2年前の大学祭の乱闘の際、相対したよね?

 あなた、私に向かって、バックを振り回していた(第38話)。」

 

 

 

どうも、大学祭の乱闘の際、優子と恵子はやりあったらしい。。。

 

 

 

恵子は私達(=ヨメンズ)を見渡しつぶやいた。

 

「あんた達(=ヨメンズ)。。。

 あのときの(=2年前の大学祭の乱闘事件、第38話)。。。」

 

 

 

だが、恵子は叫ぶ。

 

「あんた達(=ヨメンズ)、離しなさいよ!」

 

 

 

綾子は恵子の前に移動し、彼女に語り掛けた。

 

「恵子さん。まずは落ち着いて。

 竜二さんのスピーチを聞いてくれない?

 もし、このままなら、あなたを会場から連れ出さなきゃいけないわ。」

 

 

 

恵子は一旦落ち着いた。

 

 

 



竜二は恵子に一度顔を向けたが、そのまま壇上に登った。

そして、久美子、元サッカー部マネージャ二人も壇上に登った。

 

元サッカー部マネージャの一人はもともと卒業生だったので、理数系△△学科の4年生として、謝恩会最初から会場にいた。

 

もう一人は、理数系□□学科所属の3年生で、竜二と共に会場に入ったのだ。

 

 


里子が謝恩会参加者に笑顔で語った。

 

「もうわかったと思うけど、今回の謝恩会兼結婚パーティで、

 私達(=里子、綾子、加奈、浩司)と一緒に結婚パーティを行うのは、

 久美子、竜二、元サッカー部のマネージャの二人です。」

 

 

 



里子は続ける。

 

「それじゃ、竜二、スピーチをお願い。」

 

 

 

【竜二のスピーチ】

竜二はマイクに近づき、お辞儀をすると、スピーチを始めた。

 

「I大学の合同謝恩会に乗っかる形で結婚パーティをさせてもらった竜二だ。

 結婚相手は、御覧の通り、久美子と元サッカー部マネージャの二人だ。

 ま、久美子とは去年の5月に結婚していたんだけど(第101話)。」

 

 

 

恵子はつぶやく。

  

「え? もう、そんな早い時期に?」

 

 

 

そして、体育系からブーイングが上がった。だが、竜二は片手でそれを制した。


「まあ、久美子との結婚については紆余曲折があった。。。

 ご存じの通り、久美子とはパンデミックの前から付き合っていた。。。

 でも、一番大きかったのは、『退院直後、俺を励ましてくれた』ことかな。。。

       

 退院直後、サッカー部のメンバーが俺を除いて、

 全員亡くなっているのを知った。


 俺はこう思ったんだ。

  『なんで俺だけ生き残ったんだ? 

   サッカーしか能のない俺が生き残ったって、

   サッカー部のメンバー全員が亡くなっていたら、

   何にもデキねーじゃねーか?』

 って。。。


 そして

  『キャプテンとか副キャプテンとか、

   人格的にも素晴らしい人が亡くなって、どうして俺なんだ?』

 とか、

  『どうして文武両道に優れた奴が生き残らなかったんだ?』

 とか、

  『俺みたいなサッカーしか能のない奴より、

   生き残るにふさわしい奴はいただろ?』

 って、思いが駆け巡った。


 それを慰め、励まして、立ち直らせてくれたのは、久美子だ。

 そう、『久美子は俺にとって特別な存在なんだ』。

 パンデミックの前とは比較にならないくらい特別な存在なんだ。」




恵子はつぶやいた。

 

「そんな。。。ハナッから奪うなんて無理だったってこと?」






竜二はスピーチを続けた。

 

「だけど、皆の知っての通り、大学で軟禁状態となり、

 男子サッカー部の合同チームという希望が消え去って、

 俺は2度目の失望を味わった(第37話)。


 そして、自暴自棄となり、こともあろうに、複数の女子学生に手を出した。

 (第36話、第37話)


 しまいには乱闘事件を起こして、俺はHW大に転校になった。」

 (第38話、第40話)。




竜二は一呼吸を置いて、スピーチを続けた。

 

「そんな俺でも、久美子はわざわざHW大まで来てくれた。

 手を出した女の子達も来てくれたんだけど。。。

 でも、『久美子だけは特別』だ。

       

 それに退院直後に俺を立ち直らせてくれた久美子に申し訳なくって、

 せめてものの詫びとして、久美子にだけは面会するけど、

 その他の女の子達には面会を断った。。。


 俺から手を出しておいて、

 『手を出した女の子にはひどいことをしてしまった』けど。。。」




恵子は頬を膨らませ、つぶやいた。

 

「そうよ。そうよ。」






竜二はスピーチを続けた。

 

「そんな去年の4月、俺はある命令を受けた。

 どんな命令かは守秘義務があるから言えないけど。。。


 その命令をこなして、HW大に戻ると久美子が待っていた。

 正確には久美子と里子が待っていた(第102話)。


 その命令って、精神的にとてもキツクって。。。

 久美子の顔を見ただけでも、精神的なキツさが少し和らいだ。


 そしたら、久美子の奴、その命令から俺を守るために、

  『結婚しよう』

 って言ってくれたんだ。


 すくなくとも、HW大にいる間は、俺を守れるから。。。」

 

 

 

竜二は涙ぐみ、慌てて涙を拭って、スピーチを続けた。


「それを聞いた時、涙が出てな~。


 こんなバカな俺を、他の女の子に手を出したバカな俺を守るために、

 結婚しようと言ってくれるなんて、、、


 思わず久美子に問うたんだ、

  『こんなバカな俺でもいいのか?』

 って、、、


 そしたら、久美子も涙を流してこう答えたんだ。

  『あんたみたいなバカ、ほっとけないのよ』

 って。。。


 そうして、俺と久美子は去年の5月に結婚した(第102話)。


 そして俺は決めたんだ。

 『生涯ただ一人、久美子以外と結婚しない』って。。。」




恵子は唖然としてつぶやいた。

 

「そんな。。。もう、久美子さんに勝てっこないじゃない。。。」






竜二はスピーチを続けた。

 

「じゃあ、なんで、

  『久美子以外に元サッカー部マネージャの二人とも結婚したか?』

 っていうと、、、


 俺達、100分の1の男性は、一夫多妻を受け入れないと生活できないように、

 世の中ができているんだよ。。。


 さっきの命令も含めて、細かいことは言えないけど。。。」




恵子はつぶやいた。

 

「じゃあ、なんで私(=恵子)でなく、

 あの二人(=元サッカー部マネージャ)なの?」






竜二はスピーチを続けた。

 

「でも、一夫多妻って難しいんだ。


 聞いたところじゃ、去年の4月、I大で学生結婚した4組のうち、

 完全離婚や部分離婚をしていないのは1組だけだ(第113話)。。。


 それはHW大も同じなんだ。。。

 HW大でも学生結婚で一夫多妻を選んだ100分の1の男性は少なくない。

 でも、それを維持できているのは極少数なんだ。。。


 俺の結婚相手で久美子は絶対外せない。


 となると、久美子以外の結婚相手は、

 『久美子と信頼関係を築いている女性』が最低条件となる。。。


 そうじゃなきゃ、結婚生活の破綻は目に見えている。。。


 残念ながら、俺がI大にいた頃、俺に言い寄ってきた女の子に、

 その条件にあてはまる者はいなかった。。。」




恵子は唖然としてつぶやいた。

 

「そんな。。。

 じゃあ、私は、久美子さんと良好な関係を築くべきだったの?」




竜二はスピーチを続けた。

 

「久美子はそれに気づいてね。

 久美子以外の結婚相手として、元サッカー部マネージャの二人を連れてきた。


 実は、元サッカー部メンバを弔ったり、就職のため、

 何度かこの地方には戻っていた。

 そのたびに、元サッカー部マネージャの二人には、俺も久美子も世話になった。

 パンデミックの前から二人は信頼していたが、その信頼がますます高まった。


 だから、俺も結婚相手として文句はなかった(第108話)。。。」

 

 

 

竜二はスピーチを締めくくった。

 

「元サッカー部マネージャ二人とは先日、結婚した。

 そして、4月から、俺はNOH市の教員になることが決まった。


 HW大の卒業式も先日終わり、もうHW大の寮を引き払って、

 今、NOH市の共同住宅で、4人で暮らし始めた。


 まあ、俺はバカだから、きっといろんな問題にぶち当たると思う。

 でも、4人で解決していこうと思っている。

 今日は、俺の話を聞いてくれてありがとう。」

 

 

 

竜二はお辞儀をすると、マイクから遠ざかった。

 

 

 

(次話に続く)


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