第104話 懸け橋交流会(その2) ー愛唯、疑問を抱くー
(前話の続き)
里子は私(=愛唯)とバカ(=孝)を向いて問うた。
「ところでさー。
あんた達(=ヨメンズ、孝)の2番目と3番目の妻は具体的にどう決まったの?」
私が答えた。
「優子は私達(=愛唯、孝)が拍子法行為の対処に悩んでいた時、
一夫多妻を受け入れるべきだと進言してくれた。
そしてもう一人の妻は優子自身がなると言ってくれた(第79話)。
優子は私の親友だし、異論はなかった。」
バカ(=孝)が続く。
「僕も優子さんのことは信頼していました。。。
でも、優子さんはパンデミックの前まで、僕のことを嫌っていたはず。。。
それでも良いのかと尋ねたら、僕のことが好きだと言ってくれた。。。
だから、僕も異論はなかった。。。」
里子はさらに問うた。
「じゃあ、なぜ、瀬名を選んだの?」
私が答えた。
「CCコースの3年生で優子の次に信頼していたのは、
瀬名と、里子、あなただった。
つまり、瀬名かあなた(=里子)の2択だった(第80話)。」
里子は驚く
「え?」
私は続けた。
「でも、あなた(=里子)は、孝を異性としては見ていない。
一方、瀬名は孝を異性として見ていた。
だから、瀬名を選んだ。」
バカ(=孝)が補足した。
「瀬名さんとは、大学1年の時から親しかったし、
信頼していたから、僕も異論はなかった。。。
瀬名さんが、大学1年の頃から、
僕のことが好きだったなんて気付かなかったけど。。。」
唖然として久美子が里子に語った。
「里子、あんた、もしかしたら、
孝君の妻になっていたかもしれなかったんだって。。。」
里子は首を横に振り答えた。
「いや、愛唯の言うとおりだ。。。
孝はあくまで聡(=里子の亡き恋人)の友人であって、
異性としては見ることができない。。。
仮にその話があったら、断っていたと思う。。。」
里子は意外なことを指摘した。
「それにしてもさ。。。
二人目以降の妻があっさり決まりすぎると思うんだよね。。。」
私は里子の指摘に驚く。
「え?」
里子は苦笑いを浮かべて語る。
「ほら、うち(=里子、浩司)は、
CCコース4年生と、ラクロス部と集団デートを重ねて8名に絞ったけどさー。
(第100話)
ラクロス部の3年と4年が1名ずつ、辞退の申し入れがあったよ。。。
2人とも、
『貴重な機会だとはわかるけど、
浩司が年下で、どうしても異性として見ることができない。』
ってことでね。。。」
里子は続ける。
「まあ、彼女達の気持ちはわからなくもないんだよ。。。
私も浩司からかなり前から告白されたけど、
2歳年下で、しかも弟の友人だったから、どうしても弟の代りみたいな感覚で、
告白を受け入れることができなかったんだよね。。。
だから、あんた達の結婚パーティであんな形で説得されて、
ようやく、恋人として付き合うことになったんだけど。。。」
(第87話)
里子は続ける。
「で、先日、ラクロス部の3年と4年の残りの1名が辞退を申し入れた。
『残ったメンバーを一生信頼し続ける自信がない』
ってことでね。。。
今残っているのは、CCコースの4年生の2名と、
ラクロス部の2年生の2名だけさ。。。」
里子は顔を横に傾け、視線を下に逸らし、苦笑いを浮かべ、さらに続ける。
「信頼できる女性は見つけることができる。
でも、信頼できる女性と浩司が恋愛関係になるとは限らないんだ。。。
そして、信頼できる女性同士が信頼し合えるとも限らない。。。
あんたたち(愛唯、優子、瀬名)のようにさー、
互いに信頼して、かつ一人の男性を愛する女性を探すなんて、
『かなり難しい』よ。。。
それなのに、簡単に一夫多妻の相手が誰が良いかを
すぐに決めることができたなんて、『おかしい』よ。。。」
久美子もうなずきながら語る。
「そうね、、、
かなりの難度の高い話を、やすやすとクリアしているなんて、
『おかしい』わね。。。」
里子は私とバカ(=孝)を見つめ、続ける。
「優子とは同じ研究室だから、優子に訊いたんだけど、、、
優子が孝を好きになったキッカケは、あんた(=愛唯)と孝が、
CCコースの男子クラスメートの弔いをしている時に、
優子が元恋人の墓参りに『偶然』鉢合わせたんだって(第7話)?」
私は戸惑いうなずく。
「ええ。。。」
里子はうなずき続ける。
「もうひとつ、瀬名が孝を好きになったキッカケは、
瀬名から直接聞いたんだけど、
コンピュータルームでの、聡(=里子の元恋人)と孝の会話を聞いたことらしい。
ほら、特別合宿の夜で瀬名の話だ(第77話)。」
私は驚く。
「そうなの?」
里子はうなずき続ける。
「ああ、瀬名は孝は自分と似ていると思ったのがキッカケらしい。
でも、私がおかしいと思うのは、そこじゃない。
特別合宿の夜もそう思ったんだが、
課題が出て、聡(=里子の元恋人)がコンピュータルームに行くときは、
私が常に一緒だった。
コンピュータルームでの聡(=里子の元恋人)と孝のそんな会話は記憶がない。」
バカ(=孝)は答えた。
「ああ、あの時は課題は出ていませんでした。
なんでも、
『サッカー部の練習が早く終わって、
ふと僕がまたコンピュータルームに来ているのか、
確かめに来た。』
って言ってましたけど。。。」
里子と久美子は顔を見合わせた。そして久美子は里子に問うた。
「里子、聡(=里子の元恋人)って、
サッカー部の練習が早く終わったからと言って、
コンピュータルームに行く人だったっけ?」
里子は首を横に振り、答えた。
「いや、聡(=里子の元恋人)は、
サッカー部の練習が早く終わったら、
竜二や私達(=里子、久美子)と一緒に遊びに行く奴だった。
サッカー部の練習が早く終わって、課題も出てないのに、
コンピュータルームを行ったなんて、私の知る限りないはずだ。」
バカ(=孝)はテントの天井を見上げ、つぶやく。
「そういえば、聡君(=里子の元恋人)、
サッカー部の練習が早く終わって、
課題も出てないのに、コンピュータルームに来たなんて、
それっきりだった思います。。。」
里子はバカ(=孝)に問うた。
「まあ、瀬名はまじめだけどさ。。。
孝、当時、課題が出ていないときでも、
瀬名は毎日、コンピュータルームに来ていたの?」
バカ(=孝)は首を傾け、答えた。
「いや、当時、つまり聡君との会話の前までは、
課題がないときは、瀬名さんでも、コンピュータルームには週1回、
1,2時間自習している程度だったと思います。。。」
私はバカ(=孝)に問うた。
「つまり、
『たまたま』コンピュータルームにきた聡君(=里子の元恋人)の会話を、
『たまたま』コンピュータルームにいた瀬名が聞いたってこと?」
バカ(=孝)は無言で頷いた。
里子は私とバカ(=孝)に語る。
「つまり、優子も瀬名も、孝を好きになったキッカケは『偶然』だ。
ちょっと、『偶然』が重なりすぎていないか?」
言われてみれば、私がバカ(=孝)を好きになったキッカケは、CCコースの男子クラスメートの弔いをバカ(=孝)と一緒に行ったことだ。
しかし、あれも誰かの導きとしか思えないような偶然が重なったためだ(第1話、第2話)。
そう、私達(=ヨメンズ、孝)の間には『偶然』が重なりすぎている。
優子は『翔(=優子の元恋人)の導き』と言っているし、私は健司(=愛唯の元恋人)か武(=愛唯の弟)の導きと思っていた。
でも、瀬名の場合は、パンデミック前のことで、彼女の兄は存命だったときなので、当然、彼女の兄の導きではない。
では、、、『いったい誰が導いたのだろうか?』
このとき、私(=愛唯)は初めて、私達(=ヨメンズ、孝)のことに疑念を抱いた。
そう、言われてみれば、『何かがおかしい』のだ。
『何か特殊』なのだ。100分の1の男性と結婚に至る女性は圧倒的少数なため、今まで気付かなかった。
だが、こうして、100分の1の男性の恋人や妻と交流すると、私達(=ヨメンズ、孝)の異常さに気付く。。。
テント内で、私(=愛唯)と里子と久美子の会話を聞いていた綾子が、苦笑いを浮かべて口を開いた。
「まあ、愛唯さん、優子さん、瀬名さん、孝さんのところは特殊ですけど、、、
でも、愛唯さんと孝さんが
『恋人として付き合っていた頃から特殊だった』ので、、、
その話を聞いて、なんか納得したというのがありますね。。。」
私達(=愛唯、里子、久美子、孝)は一様に驚いた。
「「「「え?」」」」
(次話に続く)