第103話 懸け橋交流会(その1) ー孝、久美子に助言するー
ホテルのプールでのデート(第100話~第102話)から2か月後、今は9月、週末のI大でのグラウンド、100分の1の男性およびその恋人と妻との交流会を行った。
場所の使用許可は、もちろん撫山教授を介して得てある。
参加者数は40名超。一応、あまり結婚生活が上手くいっていない夫婦にも声をかけた。懸念していたが、喜んで参加してもらった。
実は、今回、あまり私(=愛唯)はあまり関わっていない。取り仕切ったのは、優子と瀬名だ。
と言うのも、優子がね。。。
「この交流会は私と瀬名と取り仕切りたいんだ。
だって、愛唯は去年、時に『悪事』も行って、
孝を学外に何度も連れ出している。
その愛唯と対等になるためには、
この交流会は今後、私と瀬名が取り仕切りたいんだ。」
て、ことで、この交流会については、優子と瀬名に任せることにした。
それに、取り仕切るのは優子と瀬名だけじゃない。。。
里子と久美子、それとなんと綾子(第62話~第63話、第68話、第87話)も協力することになった。
実は、1か月ほど前、私(=愛唯)が同席の上、綾子を共同住宅に呼んで、瀬名が俊君の自殺の原因(第70話)を話した上で、協力を依頼したんだ。
もちろん、俊君の自殺の原因については、他言無用を約束させた。
綾子に俊君の自殺の原因を話した上で協力を依頼した。瀬名は綾子にこう語った。
「もう、俊君の悲劇は繰り返してはならないわ。。。
だから、100分の1の男性の恋人や妻は団結しなければならないと思うの。。。
綾子、お願い。協力して。
あなたは100分の1の男性の恋人や妻に仲が良かったと愛唯さんから聞いている。
あなたの力が必要なの。。。」
綾子は目から一筋の涙を流し、静かに口を開いた。
「俊が就職で悩んでいることは知っていた。。。
でも、拍子法行為に行ったことは知らなかった。。。
もし、、、知っていたら。。。」
私は口を開いた。
「拍子法行為は他言無用なことを義務付けられているためだ。。。
他言無用だから、俊君は綾子にも言えなかったんだろう。。。」
改めて思う。
バカ(=孝)は拍子法行為に行くことを、よく私に打ち明けてくれたと(第68話)。。。
もし、バカ(=孝)が私に打ち明けてくれなかったらと思うと、、、
あまり想像したくない。。。
私は続ける。
「何度も言うが、俊君の自殺の原因は他言無用だ。
これは俊君の名誉を守るためだ。俊君のご両親にも話すんじゃない。
出自を辿らせないためだ。」
綾子は涙を流しながら頷いた。
「わかっている。。。」
瀬名は綾子に改めて迫る。
「綾子、改めてお願い。協力して。。。
都合の良いお願いかも知れないけど。。。」
綾子は涙を拭って快諾した。
「もちろん協力するわ。
もう二度とあんな悲劇は繰り返しちゃいけないわ。。。」
こうして綾子には、100分の1の男性の妻や恋人に、交流会の参加を呼び掛けてもらった。
バカ(=孝)をはじめ、100分の1の男性達は、グランドで日差しを防ぐためのテントを張ってもらった。
テントの脇で瀬名と綾子はバーベキューを参加者に振る舞った。
バカ(=孝)と100分の1の男性の数名はバーベキューを手伝った。
ああ、参加費は事前に徴収させてもらった。
参加者はテントの下で肉と酒を楽しんだ。
優子、里子、久美子はレクレーションとして、テニス大会を実施した。
で、唯一のテニス経験者の優子が優勝するかと思えば、
さにあらず、、、久美子と里子のワンツーフィニッシュだった。。。
後の優子:「だから、、、中高でテニス部だったけど、、、
レギュラーじゃなかったから。。。」
後の愛唯:「それにしたって、久美子と里子はテニス未経験者だぞ?」
後の優子:「・・・」
さて、話をバーベキューを楽しんでいる、テントに戻す。
レクレーションのテニス大会を終えた、久美子と里子が、テントにやってきた。
優子は綾子と代わって、バーベキューの調理を瀬名の手伝いに行った。
そして綾子もテントにやってきた。
バカ(=孝)も100分の1の男性と代わり、休憩に来た。
つまり、テントには、私(=愛唯)、里子、久美子、綾子、バカ(=孝)の5人である。
私は久美子に笑顔で話しかけた。
「久美子さん、里子から聞いた。竜二との結婚おめでとう。」
久美子は照れくさそうに話す。
「どうも。。。」
私は久美子に問うた。
「で、一夫多妻を受け入れるって聞いたけど、、、
2番目以降の妻の選定は順調なの?」
久美子はため息をついて答えた。
「うーん、うまくいかないわ。。。
竜二に言い寄ってた女の子とは接触しているんだけど、
信頼関係を築くのは無理ね。。。
竜二がHW大に転校しちゃったから、
別の100分の1の男性にアタックしていたり、、、
それどころか、HW大に会いに行ける私を妬む女の子もいて、、、」
私は戸惑い、久美子に問うた。
「え? 久美子さんしかHW大に行ってないの?」
久美子が答えた。
「ええ、会いに行っても、HW大内への立ち入り許可がいるし、、、
竜二の奴、私にしか、立ち入り申請を出さないから。。。
だから、私しかHW大まで会いに行けないの。。。
そんな状態だから、妬む女の子もいて、
とても、私がすでに竜二と結婚しているなんて言えないし。。。」
バカ(=孝)が口を開いた。
「久美子さんが竜二君に逆プロポーズした時、竜二君、涙を流して、
『俺みたいなバカでよいのか?
パンデミックの頃、
看病してくれたお前(=久美子)を裏切って他の女に手を出した、
こんなバカな俺で良いのか?』(第102話)
と言ったんですよね?」
久美子は戸惑いながら頷く。
「ええ。。。」
バカ(=孝)は続けた。
「だったら、無理に見つけても、竜二君が反発するだけです。
竜二君にとって、久美子さんは特別な存在なんだと思います。
そして、竜二君は久美子さんに罪の意識を抱えています。
竜二君の身勝手かもしれませんが、その贖罪のため、
二度と久美子さん以外の女性と親しくなろうとは思ってないのでは?」
里子は問う。
「いくら拍子法行為から竜二を守るためと言っても、
竜二は受け入れないってこと?」
私は答えた。
「実は、当初、孝は一夫多妻を受け入れなかったの。
『拍子法行為を我慢すればよいことだから』
って。。。
それを私と優子が二人掛かりで説得したの。(第79話)」
里子と久美子は顔を見合わせ、そして二人はバカ(=孝)に顔を向け、里子は孝に問うた。
「孝。じゃ、どうして、一夫多妻を受け入れたの?」
孝は戸惑いながら答えた。
「優子さんに叱られたんですよ。
『拍子法行為のとき、
愛唯さんの様子は見ちゃいられなかった』
って。。。
僕だけが我慢すればよいことじゃない。
愛唯さんにも多大な負担をかける。
『それを愛と呼べるのか?』
って、優子さんに叱られたんです。。。」
バカ(=孝)は続けた。
「愛唯さんと優子さんから、
『一夫多妻は避けられない。
だったら、少しはマシな一夫多妻を選ぶべきだ』
と。。。
だったら、愛唯さん以外の2番目、3番目の妻は誰が良いかって考えたら、
優子さんと瀬名さんでした。
ま、選んだのは愛唯さんですが(第79話、第80話)、
その人選は僕も同意しました。
だって、二人とも、愛唯さんだけでなく僕も信頼してましたし。。。」
バカ(=孝)はさらに続けた。
「だから、竜二君のことが好きな女子から探すのではなく、
竜二君と久美子さんの両方が信頼している女の子から探したら、
いかがでしょうか?」
久美子は孝に問う。
「つまり、竜二への恋愛感情は一旦置いておけと?
そして、私と竜二の両方が信頼している女の子から探せと?」
バカ(=孝)はうなずき答えた。
「ええ、
竜二君と久美子さんの両方から信頼を得ている女の子を探して、
その女の子に、
『竜二君を異性としてどう思っているか?』
を聞いた方が早いでしょうね。。。」
里子は久美子に向かって問うた。
「久美子、竜二とあんたの両方が信頼している女の子っている?」
久美子はうなずき答える。
「まあ、同じ体育系の女子クラスメートとか、サッカー部のマネージャは、
私も竜二も信頼しているわ。。。
とくに、サッカー部のマネージャは、
サッカー部メンバーの弔いには世話になっているし(第51話)、、、
そこから話してみる。。。」
里子は久美子に語る。
「よし!
2番目と3番目の妻が決まったら、私に言って。。。
私もHW大に行って、竜二を説得するから。。。」
(次話に続く)
当初、久美子と竜二は第36話~第40話の『vs不届きな奴ら』のみの登場の予定でした。
作者の勝手な思い入れですが、HW大転校後の竜二の様子も描きたくなったのです。だから、第50話~第51話の『瀬名の教育実習』にも登場いただきました。
だた、これで久美子と竜二の登場はなくなる予定でした。
しかし、結婚後の主人公の愛唯と優子と瀬名の活躍を描くためには、里子に恋人ができるシナリオにする必要が生じました。
一方、里子の恋人が年下の浩司となるため、第87話での里子への説得するシーンが必要となりました。
しかし、愛唯、優子、瀬名の説得だけでは力不足と思いました。
そこで、愛唯と孝の結婚パーティで久美子の再登場させ、里子を説得していただきました。
当初の予定と異なり、久美子もこの物語の重要人物になってしまいました。
今後とも久美子は活躍する予定です。
あ、、、いずれ、竜二も再登場する予定です。