第102話 次の年のプールデート(その3) ー里子、久美子と竜二の結婚を語るー
(前話からの続き)
里子は竜二(第35話~第40話、第50話~第51話)の拍子法行為について語り始めた。
「あれは、4月の連休の前、部活していたら、
突然、久美子が部室に訪ねてきた。。。
久美子の話じゃ、
久美子の指導教員経由でHW大の竜二の指導教員から
『HW大に来てほしい』
という連絡があったそうだ。。。」
里子は続ける。
「久美子はとても戸惑ってね。。。
何回かHW大に竜二に会いに行ったことはあるけど、
それは竜二が久美子のHW大構内への立ち入り申請を出して、
許可を得て、ようやく会いに行けたそうだ。。。
それが、HW大の指導教員が、
『立ち入り許可を久美子に出すから、至急HW大に来てほしい。』
という連絡だったから、この異常さに久美子は戸惑って、
相談のため私に会いに来たんだ。。。」
里子は続ける。
「私はこの異常さに、
とっさに竜二に拍子法行為が命じられたと直感したんだ。。。」
里子は続ける。
「私は久美子と一緒に、久美子の指導教員の個室に行ってね。。。
『竜二は拍子法行為に行くんですよね?
もしそうなら、私が久美子に付き添いますから、
私にもHW大の立ち入り許可をください。』
って頼んだんだ。。。」
里子は続ける。
「久美子の指導教員は驚いた様子だったけど、うなずいて、
すぐにHW大の竜二の指導教員に連絡を取ってくれて、
私のHW大構内への立ち入り許可を得て、
私と久美子は急いでHW大へ向かったんだ。。。」
里子は続ける。
「久美子は拍子法行為について知らなかったみたいでね。。。
HW大への向かう列車の中、何度も
『拍子法行為って何?』
って訊かれたけど、移動中に動揺させちゃいけないから、
『向こう(=HW大)に着いたら説明する』
って答えなかった。。。」
里子は続ける。
「私と久美子がHW大に到着した時には、
すでに竜二は拍子法行為に出た後だった。。。」
里子は続ける。
「私と久美子は、竜二の指導教員に連れられて、HW大構内の簡易宿泊所に通された。
そこで竜二の指導教員から、
『竜二が帰った翌日に、急遽HW大のサッカー部の合宿を行って、
竜二を見張る。
でも、帰ってきた夜は見張ることができない。
だから、簡易宿泊所で竜二と一緒に宿泊することを許可するから、
竜二を見張ってほしい。』
って頼まれたんだ。。。」
まるで、バカ(=孝)が拍子法行為から帰ってきたときと、そっくりだ。。。
あの時は、バカ(=孝)が帰ってきた夜は、当時の私(=愛唯)の下宿で寝泊まりし(第74話)、翌日は特別合宿で夜はCCコースの先生にバカ(=孝)を見張ってもらった(第75話)。。。
里子は続ける。
「HW大の簡易宿泊所の部屋で、久美子と二人っきりになった時、
久美子から再度、
『拍子法行為って何?』
って訊かれた。
このときは、正直に話したよ。
俊の自殺の原因も拍子法行為だって話した(第68話)。
そしたら、久美子はひどく狼狽してさ。。。
まるで、あの時の愛唯みたいだった(第73話)。。。
久美子は大粒の涙を流してさ。。。
『竜二は大丈夫だよね?』
って、何度も私に訊いたんだ。。。」
里子は続ける。
「私は久美子の肩を抱いてさ。
『大丈夫。私もついている。
竜二が帰ってきたら、二人で見守ろう!』
って励ましたさ。。。
そしたら、涙を流しながら久美子は私に尋ねたのさ。。。
『竜二を拍子法行為から守る方法はないの?』
って。。。」
里子は続ける。
「私は
『ある』
って答えた。
続けて、
『それは、久美子、お前が竜二と結婚することだ』
って。。。
私は更に続けて、
『結婚すれば、少なくとも1年間は、
竜二から拍子法行為から守ることができる。
I大から遠く離れたHW大にいる竜二を、
少なくとも卒業までは守ることができる。』
と言った。。。」
私(=愛唯)は尋ねた。
「それで、久美子さんは、竜二と結婚する意志を固めたと。。。」
里子は無言で頷いた。
ただ、ここで里子は苦笑いを浮かべた。
「ただ、すぐに、何年も連続して竜二を拍子法行為から守るには、
一夫多妻を受け入れなくちゃいけないことに、久美子は気付いちゃってね。。。
久美子は
『もしかして、
愛唯さんや孝さんが一夫多妻を受け入れたのはそういうこと?』
って尋ねた。
仕方がないから、
『その通り』
って答えた。」
里子は続ける。
「久美子はすぐに、竜二がI大にいた頃、
竜二に言い寄ってきた女の子に連絡を取り、2番目の以降の妻を探そうとした。
でも、それは私が反対した。
愛唯と優子は中学以来の親友だが、それでも一夫多妻が難しいことを、
同じ研究室の優子から聞かされていたから。。。
久美子に、
『竜二に言い寄ってきた女の子の中で、
親友と呼べる程、信頼のおける女の子がいたのか?
そうじゃなきゃ論外だよ。』
って。。。」
里子は続ける。
「久美子は、
『竜二に言い寄ってきた女の子とは友人にはなれなかった。。。
そんな子を2番目以降の妻にしたら、
結婚生活の破綻は火を見るより明らかね。。。』
と納得し、
いまはまず、竜二と結婚し、
結婚したらI大に戻って、2番目以降の妻を探すってことになった。。。」
里子は続ける。
「竜二は翌日の夕方に帰って来てね。。。
竜二の指導教員が竜二を簡易宿泊所に連れて行って、
私達(里子、久美子)が待っていたことに驚いたさ。。。
久美子が
『拍子法行為はどうだった?』
って訊くと、竜二は
『いまさら、好きでもねー女とセッ◯スするなんて、慣れっこだよ。』
って強がりを言っていたけど、ちょっと表情はおかしかったな。。。」
里子は続ける。
「竜二の指導教員が部屋から出ていくと、
すぐに久美子は竜二に逆プロポーズしたよ。。。
竜二は久美子の逆プロポーズに驚いて、
『俺みたいなバカでよいのか?
パンデミックの頃、看病してくれたお前(=久美子)を裏切って、
他の女に手を出した、こんなバカな俺で良いのか?』
って涙ながらに、久美子に問うたよ。。。
そしたら、久美子は、
『あんたみたいなバカ、ほっとけないのよ!』
涙を流して答えた。。。
そして竜二は久美子の逆プロポーズを受け入れた。。。」
里子は続ける。
「翌日の朝、竜二は彼の指導教員に久美子との婚約を伝えてね。
『結婚の手続きのため、
しばらく、久美子のHW大への立ち入り許可をお願いします。』
って頼んだ。
もちろん、彼の指導教員は快く引き受けてくれたよ。
書類の手続きで、正式に結婚したのは5月の連休明け、
HW大でささやかな結婚パーティが開かれ、
私も特別にHW大の立ち入り許可を得て、
そのパーティに参加したってわけ。。。」
里子はデッキチェアから立ち、私達(=ヨメンズ、孝)に笑顔で語った。
「ということで、同じ100分の1の男性の妻である、
久美子にも声を掛けるから、よろしくね。。。」
そう言って、里子は、プールデッキの反対側の浩司や妻の候補8名の方へ歩いて行った。。。
私(=愛唯)は優子と瀬名に語り掛けた。
「まあ、協力者は多い方が良いから、100分の1の男性の妻や、
結婚が濃厚な恋人にも声を掛けますか。。。」
優子と瀬名は同意した。
「そうね。。。」
「賛成。。。」
優子はプールデッキの反対側にいる里子と浩司を見て、ポツリと言った。
「それにしても、、、
『里子と浩司の関係』って、『愛唯と孝の関係』に似ているな。。。」
私(=愛唯)は意外な指摘に驚く。
愛唯 :「そうなの?」
優子は答える。
「ほら、愛唯は『かわいくて、気品のある、お嬢さん』なキャラを
演じていた(プロローグ)。。。
ところが、孝と付き合い始めて、
素の『男勝りで、がさつで、ズボラ』なキャラに戻った(第26話)。
一方、里子は『男勝り』を演じるために、
いかつい顔をしていたが、浩司はそれをやめさせ、
里子の本来の柔らかな笑顔の女の子に戻した(第100話)。
どちらも、付き合った女の子の本来の姿に戻している。
似ているって思わない?」
瀬名は同意する。
「確かに。。。」
私は不満だ。
「えー!?
私は『かわいくて、気品のある、お嬢さん』なキャラに戻したいんだけど。。。
まあ、いろいろやらかしているから、I大在学中は戻すのは無理だけど。。。
RRFM社に入社後は戻すつもりだけど。。。」
優子はあきれて返す。
「だから、あきらめなって!
もう結婚したんだから、
『かわいくて、気品のある、お嬢さん』なキャラに
戻す必要なんてないんだし。。。」
私(=愛唯)は渋々同意する。
「まあ、そうなんだけど。。。」
でも、就職後は『かわいくて、気品のある、お嬢さん』なキャラに戻す気の私なのでした。。。