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創生な君に花束を。  作者: ゆーさき
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第四章 必然の友

なるべく一目でわかりやすいように、()で誰が発言したかを明記させていただいてます。

第四章 必然の友


 あっという間に二ヶ月が過ぎ、6月。梅雨の時期ということもあり体がしんどい。

 あ、あと祝日無いのもしんどい。

 まあいつもしんどいけど・・・

 花園零華と友達になってから、週に一回本屋に足を運び、本選びに付き添った。

 呼び名もお互いさん付けだし、連絡をとるときも短文かつ失礼がないような文面でお互い送り合っている。

 とはいえ、ここ数年家族以外の異性と深く関わりを持っていなかったので、多少は女性慣れしたかもしれない。

 そんなことを自室で考えながら、ベットに寝転んでいると、花園か家族の誰かとしか使わない携帯に、通知がきた。

 差出人を見ると、昔から付き合いがある男友達の早乙女からだった。

『おっはよ〜!ってもう午前10時なんだけどね笑笑 今日せっかくの日曜なのにさ〜遊ぶ予定なくなっちゃって。だから久しぶりにどうよ!近くの喫茶店とかで!どうせ暇っしょ〜?昔から友達なんて俺ぐらいしかいないんだから笑笑』

 昔からの付き合いだから慣れてしまったけど、なんで毎回煽ってくるのだろうか、、、まあ絡みやすいからいいんだけども。

『了解。マスターがいるとこでいい?』

『お、いいね〜!やっぱ暇だったか笑笑』

『うっさい』

『雨結構強いから気をつけろよ?転びそうだから笑笑』

『はいはい』

 僕は手早く返信を済まし、傘を片手に家を出た。


 家から15分ほど歩いたとこ、小さな喫茶店『kissable』がある。ここのマスターとは、うちの父親と仲が良く昔からお世話になっている。

 ドアを開け、厨房にいる少し白毛の入った髭を生やしたマスターと目があった。

「おやおや雪くん。久しぶりだね。早乙女くんなら奥の窓際の席だよ」(マスター)

 横目で窓際の席を見ると、小声で「こっち!」という声が聞こえる。

「こんにちはマスター。お元気そうでなによりです。」(御狐神)

 店内には本を片手にコーヒを飲む夫人と、カップル一組が楽しそうに会話をしている。会話の邪魔にならないように自分を呼んでいる声の元へ向かった。

「よっ!元気か、ゆーき!」(早乙女)

「元気だよ。全く、、、急に呼び出しやがって。」(御狐神)

 僕は不満げな顔をしながら席についた。

「どうせ暇なんだからいいだろ〜?あんなにうまかったピアノもやめたんだし。」(早乙女)

 こいつの名前は早乙女凪さおとめなぎ僕と同じ中学二年生。小学生の頃から仲が良く、中学校は登校区域が別々のため、それぞれ違う中学に進学した。

 まあ見ての通り友人関係はいまだに続いている。

「ご注文はどうしますか?雪くん。」(マスター)

「あ、、えーーっと、アールグレイミルクティーで。」(御狐神)

「かしこまりました。」(マスター)

 マスターは綺麗な笑みを浮かべながら厨房へ戻っていった。

 目の前に視線を戻すと、凪はニヤニヤしながらこっちを見ていた。

「そういうとこだけは女子力高いよなお前。」(早乙女)

「今はそういう気分なんだよ。」(御狐神)

 僕は彼との会話で終始ブスッとした顔で話をしているが、別に彼との会話がつまらないわけではない。むしろ雑に返してもお互い分かり合えるから楽なのだ。

 ただ分かり合えないときもある。

 それが、、、

「いや〜よかった〜雪に聞いて欲しかったんだよ。俺の恋バナ!」(早乙女)

 そう。端的に言うとこいつはモテる。彼女はいないが、何人かの女の子からアプローチを受けているようだ。まあ凪も何人かを『キープ』しているのだろう。

『キープ』という言葉を聞くと大抵の人は、この人タラシなのかなとか、クズとか思いがちだけど、僕はなんとも言えない。確かに女タラシかもしれないけど、いろんな人から好かれるということは、それだけ彼に魅力があるんだろう。僕にはその魅力が理解できないけど。

「この前さ〜クラスのみんなでカラオケ行ったんだけどさ〜。・・・ちゃんがまじ攻めっけ高くてさあ〜。」(早乙女)

「うん。」(御狐神)

 一度恋愛についての話が始まると、こいつは止まらないので、僕は無心で返事をするロボットになった。

 

 ・・・1時間後・・・


「それでさ〜俺困っちゃって〜。」(早乙女)

「まだ続くのか?ほんとに良く話すな。」(御狐神)

 僕は皮肉まじりに言葉を吐く。すると、

「いいや。ここからが本当に話したかったことだよ。」(早乙女)

「へ?」(御狐神)

「ぶっちゃけ恋バナは久々に会ったから気まずくならないためのアイスブレイクみたいなもんだ。」(早乙女)

「なんだよその気使い。」(御狐神)

 僕は小さな声でツッコミを入れた。

 あのマイペースで人(女性以外)の気持ちなんて考えない凪が、変な気を使うなんて・・・

 彼は頼んだアイスコーヒーを飲み終え、真剣な目つきで話し始めた。

「雪って、、、嘘か嘘じゃないかを見分けられるの得意?」(早乙女)

「ん?嘘の見分け?」(御狐神)

「そう。嘘。」(早乙女)

「うーんそれは聞いてからじゃないとわかんないな。なんかあったのか?」(御狐神)

「まあね。とても興味深い話なんだよ。」(早乙女)

「聞かせてくれ。」(御狐神) 

「雪は人格ってわかるか?」(早乙女)

「人格ってあの人格か?人柄とか、、、」(御狐神)

「そう。個々が持っている行動傾向・心理的特性と検索で出てきたよ。」(早乙女)

「それがどうかしたのか?」(御狐神)

「雪はもし、自分の人格が他者によって改変されていたらどう思う?」(早乙女)

 いきなりの話に僕は困惑した顔を浮かべる。

「あ、現実で考えろよ?」(早乙女)

「ああ、わかってるよ。」(御狐神)

「ひとつ聞く。もし人格がいじられていたとして、変わった本人が気づくことはあるのか?」(御狐神_)

「ない。」(早乙女)

「つまり、人格改変をされる前に関わりを持った人からしたら、改変が行われた後に話すと、まるで別人と喋っているような感覚になるのか。」(御狐神)

「そういうことになるね。」(早乙女)

「それは、、、ひどい話だな。・・・そもそもそんなことができるのか?」(御狐神)

「俺らが生まれた年。14年前。人格を人の手で操作し、完璧な人間を作り出す計画が進んでいたらしい。」(早乙女)

「なんだそれ、、、にわかに信じがたいな。」(御狐神)

「プロジェクトの名前は、『人格改変プロジェクト』」(早乙女)

「人格改変、、プロジェクト、、、」(御狐神)

 凪の顔はいつにも増して真剣な表情になる。

「このプロジェクトの内容は、かなり悲惨なものだったよ。今の俺たちじゃとても理解できない内容だった。いや、、、理解できないというよりも近未来なやり方すぎるんだ。」(早乙女)

「どういうことだ?」(御狐神)

「簡単に言えば、生まれたての赤ちゃんの脳と心臓に電子チップを組み込ませ、遠隔操作が可能な状態にし、個人が持っている人格に他人が干渉することが可能になるというプロジェクト、、、まあ実験だよ。」

(早乙女)

「根拠は、、、あるのか?」(御狐神)

「うちの親だよ。」(早乙女)

「ということはうちの親も知ってるな。」(御狐神)

「ああ、おそらく。」(早乙女)

 実は僕達が友達になったのは偶然ではない。全て仕組まれていた。というのも、僕たちの両親は研究員。僕たちが生まれる前から、僕の両親と凪の両親4人の研究チームを組んでいて、今も一緒に研究を続けている。主に人間についての性質を研究をしているらしいが・・・詳しいことまではわからない。

 僕たちの両親は滅多に家に帰ってこず、昔からこいつと一緒に過ごしてきた。

 ただ僕たちの両親は少しおかしい、研究のためわざと僕たち二人を家に残し、どのようなことを考え、行動するかを観察(監視)するという実験をしていた。

 今は二人で生活していないが小学校卒業まで一緒に過ごしていた。

「親から聞いたって、帰ってきたのか?」(御狐神)

「いや、1ヶ月前に何かの荷物を取りに来たついでに掃除を任されていたんだ。その時、父の書斎(研究室)を整理しようと思って片付けていたら、この資料を見つけたんだ。」(早乙女)

 凪は、まるで、他言禁止と暗示しているような『極秘』の文字が印刷されているA4サイズの資料を、机の上に置いた。

「極秘、、、」(御狐神)

「当時、この実験の被験者となったのは俺らと同じ年14年前に生まれた女の子だったらしい。」(早乙女)

「僕たちと同い年、、、」(御狐神)

「資料には被験者の女の子は『生存』と記されていたよ。記入日は一ヶ月前の今日。」(早乙女)

「嘘ではなさそうだね。」(御狐神)

「ああ。この資料からはな。でも、両親達が嘘の報告書を作っている可能性も否定できない。」(早乙女)

「つまりお前は、両親が隠蔽するぐらい、まずいことをしようとしていると?」(御狐神)

「まあね。今までにもこういうことがあったけど、今回の件は資料に記載されている条件が強すぎる。」(早乙女)

「人格改変か、、、」(御狐神)

「それで終わりじゃない。」(早乙女)

 凪はこれまで以上に真剣な顔をした。

「もう一枚資料があったんだ。その資料には、、、」(早乙女)

「資料には?」(御狐神)

「あるコードが記載されていたんだ。」(早乙女)

「コード?」(御狐神)

「そう。人格改変プロジェクトの最終目標。人が作り出した完璧な人間。それに必要なコード。」(早乙女)

 僕は黙って耳を澄ます。

「コード870。」(早乙女)

「870?」(御狐神)

「ああ。このコードを入力すれば全てが変わると記してあった。」(早乙女)

「そんなのいつでも入力できるじゃないか。」(御狐神)

「それが、そのコードを入力するには、人格を870人分作り出し、削除、改変しなければ入力できないらしい。」(早乙女)

「つまり、、、」(御狐神)

「被験者はこの女の子だけじゃない。」(早乙女)

「まだ、14年前に被験者になった人がいるということか?」(御狐神)

「そうなるね。」(早乙女)

 僕は、凪が最初に言ったことを思い出した。

「確かにこれを聞いて、嘘か誠かと聞かれると、、、答えは出せないな。」(御狐神)

「とりあえずこの件は心の奥底にしまっておいてくれ。俺は引き続き調査を続ける。」(早乙女)

「わかった。」(御狐神)

「気づかれないようにしろよ?」(早乙女)

 いつの間にか、凪の顔は元のゆったりした顔に戻っていた。

 僕も緊張が解けてホッとため息をついた。

「だいぶ喋ったな。俺の話はこれで終わりだ。」(早乙女)

「実に内容が濃い話だった。」(御狐神) 

「疲れたし帰るか!マスターお会計!」(早乙女)

 僕たちはお金を払って年季の入ったドアを開ける。

 時刻は、午後2時を回り、朝から変わらずの雨だった。



 ・・・・零花宅・・・・

「調子はどう?零華。」(???)

「普通よ。ママ。」(零花)

 無表情で答える。

「あら可愛くないわね。まあ安心してちょうだい、あなたの体調は私が一番わかっているもの。」(母)

「じゃあ聞かないで。」(零花)

 私はわざと大きな足音を立てながら自室へ戻った。

「・・・反抗期かしら。」(母)

 

  四章 終


今回のゆーさきの一言

「感想いただけて嬉しいです!」

今回の雪村の一言

「内容難しくても、、、ぜひ読んで欲しい、、な。」

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