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宣告師  作者: 坂本カズキ
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山田さん④

こんにちは。山田さん編の最終回です。よろしくお願いします。

「よし、修太郎。次は雲の出来方についてだ」

 余命宣告されてから2週間が経った。田口はそれからずっと修太郎君と寄り添い、勉強をさせていた。

「おい、田口ちょっといいか?」

 西村がその光景を見て口を挟んだ

「いやだめだ。一分一秒が惜しいんだよ」

 西村は呆れたように田口を見て言った

「そんなに勉強をさせてなんか意味あんのかよ」

 西村はもうじきなくなる人に、この2週間ずっと勉強を教えている田口をもはや軽蔑していた。

「コツコツ・・・」

「あ・る、だそうだ」

 西村はさらに呆れたような顔をした。

「・・・はぁ、分かんねえよ。何もさせなくていいじゃないか」

 田口は修太郎君を見つめながら言った。

「修太郎は指で教えてくれたんだよ。何もせずに死ぬのと、勉強して死ぬのでは何かが違うと」

 西村は少し困った顔をして、何も言わずに病室を出ていった。


 それから田口は1週間、田口は修太郎君につきっきりになり勉強をした。しかし、それも長くはなかった


「せ・ん・せ・い・ぼ・く・も・つ・と・い・き・た・い」

「あぁ、そうだよな・・・」

「い・き・て・も・つ・と・べ・ん・き・よ・う・し・た・い」

「あぁ、そうだよな・・・」

「ぼ・く・せ・ん・せ・い・に・あ・え・て・し・あ・わ・せ・だ・よ」

「あぁ、そう・・・俺もだ」

 気づけば、田口の目から涙があふれかえっていた。泣くことなんていつぶりだろうか。

 いつも余命宣告をして泣く人を目の前に冷淡な姿勢だった田口は今の自分が自分ではないように感じた。

 日にちが経つごとに衰弱していっている修太郎君と、音で会話をし続けた。


           数日後


 修太郎君は亡くなった。

 必ず訪れる未来と分かっていながらも田口のショックは計り知れないものだった。

 動かない修太郎君を前に田口はただただその修太郎君を見つめていた。

「なぁ、もう一度、音を鳴らしてくれよ・・・」

 修太郎君の指に缶ジュースを近づけるも、もちろん音が鳴ることはない。

 修太郎は生きてる時に言った。

『色々勉強したから胸を張って死ねると』


 そして、田口に最後の言葉を送った


『僕のこの指をもらってください』


 





山田さん編どうでしたか。いい話しだったと思っていただけたらとても嬉しいです。これからもこの宣告師は続きますんでよろしくお願いします。

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