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宣告師  作者: 坂本カズキ
3/7

佐藤さん③

佐藤③です。言いにくいですね。全て謎が解けます!それではどうぞ

「佐藤信彦さん。医師からから指示されてない、薬を勝手に注射する事は明らかに医師法17条に違反します。」


佐藤さん夫婦の件に関して謎がわかってから約2週間経った。


「奥さん・・・旦那さん、なんだかあっけなくいなくなりましたね」

 すると、天井を見上げたまま「そうですね」と呟き、少し寂しそうな顔をしながら語った

「あの方は法を犯してまで、私の体調を良くしようとしてくださったんですから・・・」 

  

 田口は真剣な顔つきになり、奥さんの顔を見て言った。


「奥さん。なぜ嘘なんかついてるんですか?」

 

「・・・うそ?」

 

 田口は大きく息を吸った

「まず、初めに怪しいと思ったのが余命宣告をした際、彼は病室から出ていく時に笑っていた。そこから僕は貴方達には何かあると考えてきました。そしてこの前、僕があなたを看護した時、貴方は無理やり右腕を隠した。それは貴方の右腕に注射痕があるから。その後、貴方の夫とすれ違った時、彼は妙に緊張していた。それは、彼が注射器を持ってる事が原因だったから。」


「・・・・・・よく気付きましたわね」


 田口は人1倍強い観察眼で、真実を見出していた。しかし、佐藤信彦は田口が真実を気付いたよりも先に、出頭していたのだ。


「貴方の夫の1番の目的は、貴方が亡くなった時の遺産だった。だから注射器で毒物を体内に入れ、貴方を殺そうとした。」

「・・・お見事だわ」

「貴方はわざと嘘をついて、夫の罪を軽くした。」

 田口は分からない。目の前の寝たきりのお婆さんが何故、自分を殺そうとしていた人を許すような事をしたのか

「遅かれ早かれ貴方に気付かれ、夫に重罪がかせられる所でしたからねぇ」

「だから、だから何故!彼を許したんですか!?」



女性は深い沈黙の後、話始めた


「・・・私は若い時から仕事漬けの毎日だった。ずっとずっと、仕事をしてきた人生だった。歳を重ね、仕事も退職した時、私にはお金しかし残らなかったわ。そんな時に彼が来たのよ。初めて見た時に分かったわ、彼がお金目当ての詐欺師ってね。だけど、私にはそれでよかった。彼といるだけで楽しかった。彼とどこか行くのが楽しかった。彼とご飯を食べるのが楽しかった。・・・・なぜ彼を許したかって?私はね、私の人生の終わりに、私らしく花を咲かせる事ができて満足だからよ。」


「・・・・・・」

 田口は納得する事のできない智恵子さんの思考を前に、これ以上何も言うことができなくなっていた。

 だが、少しずつ自分に足りない物を見いだせているような気もした。


         数週間後


智恵子さんは亡くなった。毒物が体の致死量を遥かに超えてた事が原因だろう。

智恵子さんは、最後に僕にこう言った。


「医者は愛を必要とされる生き物よ」


 智恵子さん。あなたが最後に咲かせたあなたの花は、人生と共に枯れてしまいました。ですが、あなたから受け取った意識という種を僕に育ませてください。




佐藤編最後まで読んでいただきありがとうございました。引き続きこの作品は投稿させていただきますのでよろしくお願いします。

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