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JKは魔王の嫁になる。  作者: かつらぎ
第一章 出会い&育み編
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魔王の困惑

身体の自由が効かないのか、魔法陣の上に横たわっているのは・・・まだ幼さの残る娘だった。


(ーーー子供、か?)


娘からは、まだ此方がはっきりと見えていないようだ。微かに動く身体は、苦しそうだ。


少し茶色がかった髪は、肩よりすこし短いくらいだろうか、幼い子供を思わせる前髪に、白い肌。少し化粧をしてるのか、頰は紅く、唇は熟れた桃のようだ。


此方では見たことのない、摩訶不思議な衣服を身に纏っている。祖母上や母上が着ていらした小袖とも違う。同じ国の娘、ではないのか?しかし、裾が短過ぎはしないか?細い脚に、大腿が・・・露わになっているではないか!!


「・・・なんだ、コレは・・・。」


華奢な身体つきだが、健康そうに見える。あれは・・・何だろうか、黒い大きな袋を両肩に背負い、不思議な四角い小さな薄い板を手に握りしめて、娘は何とか周りの様子を伺おうとしているようだった。



「子供、か?これは一体、どういうことだ。」


横たわる娘を一通り観察したが・・・何とも奇妙な娘だ。そして幼い。召喚の儀を行ったオームに尋ねるが、オームも他の側近達も、いまだ微動だにしない。


皆目の前の娘に釘付けで、娘が動くのを待っている。ここに集う者等の殆どは、召喚された人間を、初めて目にするのだろう、人間の娘を目の前にして、ただ次の動きを待つばかりだ。


方々から、ざわめく声が聞こえた。・・・生きているのか・・・人間の娘とはあのように小さかったか・・・奇妙な娘だ・・・次第に大きくなるざわめきと、無言の側近達。私は苛立ち、少し大きな声を出した。


「黙れ、今すぐ答えぬか!」


しん、と静まり返る広間。漸く、オームが口を開いた。


「・・・恐れながら、我が王よ、その娘こそ貴方様の妻となられる方で御座います。」


いつもならば、私の意図を汲み、必要な答えしか答えぬ筈の家臣。そのオームが愚かにも分かりきった事を言う。許しを請うから召喚の許可を出したのではないか、なにを言っているのだ。


「そんなことは解っている!そうではない、まだ幼い子供ではないか!」


妻、と呼ぶにはまだ幼い娘。妻を娶ることの意味を、私が理解していないとでも思ったか。


「我が王よ、この娘こそ、確かに奥方様に間違いは御座いません。我らの召喚の術は神の御業にも引けを取らぬ完成度。人間供の真似事とは違い、間違いなどあろうはずが御座いません。・・・成人はしておらぬ様ですが、娘の歳は十六。契りを結ぶには問題無いかと。先々代の王妃、貴方様の御祖母上様がこの城へ嫁いできたのもその歳のことで御座いました。」


オームは先程よりも静かに、話し始める。そんな事は解っている。


「・・・昔とは時代が違うだろう。このように幼くては、我が妻として務めなど果たせぬのではないか、親元に帰りたいと騒ぐのではないか。」


幼さの残るこの娘は、逃げたいと言うのではないか、母上のように、傷付き、身体も心も病に侵され、最期には自ら死を選ぶのではないか、私を一人残して・・・。


声にならない、声がため息となった。


「・・・ッ妻・・・って、ど、ういうことですかーーー!?」


突然、叫び声が聞こえた。目の前の娘だ。身体は未だ動けぬというのに、顔だけをこちらに向けて、必死に声を振り絞っていた。


視界もはっきりしてきたのか、娘の瞳が私を捉える。・・・なんだ、これは。


意思の強そうな黒い瞳。頰は先程よりも上気し、耳まで紅く染まっている。熟れた桃色の唇は、小さいが可愛らしい。空腹の時食事を求める様に、自然と、吸い寄せられそうだ。



・・・突然、心の臓が握り潰されたかのように、痛み、息をするのが苦しくなった。

困惑 こんわく どうしてよいかわからなくてとまどうこと。

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