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JKは魔王の嫁になる。  作者: かつらぎ
第三章 煩悩&闘い編
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魔王の辛抱

「ぎゃああああああ!」


「煩い!逃げ回るな、まだまだだ!!」


「もう、勘弁してくれぬか・・・おっと!・・・あぶ・・」


・・・シャンめ、その様な顔をしても無駄だ。許さぬ。


「わ、我が王よ!なぜ、なぜ我だけ!!」


「気付かぬか・・・そういえば、出番が無いと申しておったそうではないか。喜べ、出番だぞ!!」


シャンめ、またかわしおった。ユリと二人きりで楽しそうに遊んでいた事・・・私がそう簡単に許す筈なかろう。


「えっ・・・フェイめ!!」


「遊んで貰いたかったのだろう?そう聞いたぞ。」


全くこれしきで情け無い。此奴も100年の間に腕が鈍ったな。


「うう・・・朝から付き合えと言うから散歩かと思いついて来て見れば・・・あっ、ユリ様!ほらユリ様が起きてきたようだぞ!!」


「ん?その様だな・・・では着替えて朝餉にするか・・・」


「(助かった・・・腹黒め!!)」


「・・・何か言ったか?」


「いえ、何も!我が王!!」


シャンめ、あからさまにほっとしている様だな。まあいい。遊んでやるのは今日だけではないぞ?覚悟しろ。



ユリと執務室で茶を飲み話をした日から直ぐ、ユリは私の私室に移り、閨で共に寝起きする様になった。


あの日言ってしまってから後悔する事になったのだが、ユリが嫌ではないと知り、私は嬉しくもあった。


(・・・しかし、毎晩隣にユリが居るかと思うと、落ち着かぬな。)


冷たい態度など取る事もできるわけがなく、仕方なく寝たふりをして夜はやり過ごし、ユリが深く眠った後、夜中に密かにユリの寝顔を眺めては、ため息を吐き、朝は早く起きて滝行や剣の稽古をして己の『煩悩』を打ち消す・・・これではまるで、拷問でも受けているかの様だ。


その上、弱る私に追い撃ちをかけるかの様に、側近達が何やら画策している。


挙句、執務室の卓上に、挿絵と付箋付きの『いろは本』が積み広げられていた時には、怒りのあまり倒れるかと思った。まあ・・・その後・・・結局最後まで読んでしまったのだが。


無駄に知識ばかりが付いてしまった・・・矢張り、耐えねばならぬのか?女子(おなご)とは、この様にすれば喜ぶのか・・・このくらいならば・・・いや、駄目だ。それでは、これまでの努力の意味が無いではないか。・・・許せぬ。皆で私を苦しめて、何が楽しい。


(ああ、毎晩そんな眼で、私を見つめないでくれ。お前を、壊してしまう訳にはいかないのだ。)


怖がらせる様な事はしないとユリに誓ってしまったが、果たして私の理性をいつまで保てるか・・・。



目の前のユリは、今日も美味しそうに朝餉を食べ、無邪気にしている。


それにしても・・・ユリは私が隣に寝て居ても、何とも思わぬのか?気にはならないのだろうか・・・?


「セル様、どうしたんですか?あんまり食べてないみたいだし、なんかあったんですか?難しい顔して・・・。」


眉間に皺が寄ってしまったか。つい、思考に耽ってしまった。


「ああ、いや、ユリはいつでも美味しそうに食べているな、と考えていた・・・。」


「ふーん・・・。そういえば、朝起きるといつもセル様いないですけど、いつもそんなに早起きして、なにしてるんですか?」


まさかユリへの気持ちを紛らわせていたなどと、口が裂けても言えぬ。


「それは・・・いや、シャンと朝の鍛練をしていた。」


「えっ、そうだったんですか!?」


「ああ、そうだ。また街に行くならば、矢張り、もうああいった事が無い様にせねば、と思い・・・。」


これは事実だ。・・・いや、半分は事実だ。ユリにもう二度と、あの様な傷を付けさせたりはしない。


「そうだったんですね!良かったー!てっきり私が隣に寝てたら嫌なのかなって、思っちゃいました!」


「・・・いや、そんな事は無い。」


『恋』とは、この様に悩ましいものだったのか・・・?憎しみや悲しみとは違う。怒りとも違う。しかし、狂おしく、苦しい。大抵の事は、耐えれば良いと思っていた。今まで、ユリに出会うまでは、全ての感情を無視していられた。だが・・・狂いそうな己の心は、抑えられない。耐えねばならない事が、こんなにも辛いとは・・・。


(この理性、果たしていつまで()つのだろうか・・・。)



こうして、私にとっては永遠よりも長い拷問の様な一月が過ぎた。

辛抱 しんぼう つらさを(かなり長期間)じっと我慢する、また、苦しいことを我慢すること。こらえ忍ぶこと。仏語「心法」から。「辛棒」とも当てて書く。

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