JK、お姫様ベッドで目覚める。
(ん・・・朝?変な夢だったなあ・・・なんであんな夢・・・お兄ちゃんの異世界モノ転生系ラノベとか読んでたから?っていうか、いま、何時・・・?)
「あら、お妃様、お目覚めでございますか?」
(は・・・???)
美しい鈴みたいな声、こんな声知らない、いつもならお母さんが起こしてくれるはず、だけど、お母さんだってこんな声出せない、誰!?ガバっと布団ごと起き上がって声のする方を見ると、そこには真っ赤な髪の美少女が立っていた。
わたしが寝ていたベッドは、レースのカーテンが付いていて、屋根があって、大きい。海外のお姫様のベッドみたいだ。お姫様ベッドの横にはファンタジーな美少女。アニメとかに出てきそうな・・・。
「お妃様、3日間もお眠りでしたのよ、我が王も心配して、先程までは此方にいらしたんです。ですが、女というものは、殿方に寝顔を見られるのは恥ずかしいことなのですよと、ようやく部屋から出ていって頂いたのです。ご気分は、如何でございますか?」
美少女が、歳は12歳くらいに見えるのに、大人びた話し方してる・・・っていうか、誰?ここ、どこ?
(ここは・・・)
えっ、声が出ない!!!
「あら、そうでしたわね、申し遅れました、わたくし、お妃様のお世話をさせて頂きます、竜族の、フェイと申します。お妃様のお声は、いまは我が王セルファス様が預かっておられますの。声は聞こえずとも、おっしゃっていることは念話で伝わっておりますから御安心くださいませ!」
美少女ーフェイさんは、にっこり微笑んで言った。
(そっかあ、なら一安心・・・じゃなくって!待って全然わかんない。ツッコミどころは満載だけど、も、とりあえず、お妃様って、どういう事ですか!?)
「あらあら、そこからでしたのね。ええと、貴女様は、我が王、人間界では魔王とも言いますわね、その方の妃、つまり正室として、あちらの世界・・・貴女様が元々住んでらした世界から召喚の儀によって召喚されたのです。ほら、その婚姻の証として、腕環が付いてますでしょう?」
確かに、なんか腕に細いブレスレットがはまってる・・・まったく理解できない・・・召喚?あの、お兄ちゃんがよく読んでたラノベとか異世界転生系とかゲームとかの話の、あの召喚??
唖然とするわたしに構わず、フェイさんは話を続ける。
「我々魔族を統べる王の一族は、代々人間の女を妻に娶ります。魔族にもそれぞれ種類がありますが、どれかひとつの種族が力を持ちすぎないようにする為、つまりすべてに均衝をもたらす為、これは必要なことなのです。」
(魔王、魔族・・・。)
確かに、あの人は魔王っぽかった。イケメンどころじゃない尊い顔立ちに、黒いマント、そして冷たい声・・・。
(いやいや、でもいきなり連れて来られて、結婚とか言われても!!てか、なんでわたしなんですか!?)
「それは・・・わたくしどもにも解りませんの。ただ、貴女様が選ばれた、ということです。人間界的に言えば、運命、とも言いますわね(ハート)」
(いやいやいや、わたし、家族いるし!ってかまだ16歳になったばっかりだし、学校もあるし、嫌です!)
キラキラ瞳を輝かせながら、運命とか言っちゃってるフェイさん、可愛すぎますけど、そんなのありえないです。これこそほんとの絶起じゃない?・・・泣きそう。
「あら、お妃様・・・」
「フェイ、退がれ。」
JK語広辞苑 令和二年監修
絶起 絶望の起床の意 本来は寝坊してしまった際などに用いる用語