JK、魔王をからかってみる。
「あの!わたし、人間界に、行ってみたいんです!」
言えた!セル様は食べかけの卵焼きをお箸でつまんだまま、こちらを見る。
あれ、無表情に戻ってしまった。卵焼きを口に入れて、食べ終わると言った。
「ユリ・・・それは、この城を出ていきたいということか?」
さっきの笑顔の人は誰、ってぐらい、冷たい言い方。わたしは慌てて言い直した。
「えっとお城を出ていきたいんじゃなくて、遊びに行ってみたいんです!調味料も欲しいし、そう!さっきの畑のこともそうですけど、人間界の生活や文化を見てみたいっていうか・・・」
セル様、明らかにホッとしてる。表情がくるくる変わって、さっきみたいなのはちょっと恐いけど、一緒にいて楽しいし、きゅんきゅんする。
「・・・逃げないのか?」
今度は甘えんぼの子供みたいにスネてる!?・・・112歳も年上なのに、セル様、可愛すぎるよ!!ナニコレ。
「わたしの家はここです。だって、元の世界には帰れないし、他に知り合いもいないし。それとも、セル様はわたしがいない方が、いいですか?」
ちょっといじわるだったかな、でも、人間界に行くためには、セル様にオッケーもらわないと。
「何を言う!!ユリがいなくなったら、私はもう・・・」
セル様、ごめんなさい。イケメンなのに、泣きそうな顔。魔王にこんな顔させて、罪悪感しかないです。
「・・・・・わかった、城の外へ出ることを、許可しよう。」
ため息をついて、セル様が言った。やった!成功した!?
「ただし、一人では行かせられぬ。護衛は勿論だが、私も共に、人間界に行くとしよう。」
あれから2週間。今日はいよいよ人間界に出発する日だ。あのピクニックデートの後、セル様が100年ぶりに出掛けるということで、お城の中は大騒ぎになった。
でも、フェイさん、オームさん、シャンさん、フラーさんは、すっごく喜んでた。
今まで何があってもお城から出ようとしなかったんだって、セル様。あーなるほどね。引きこもりだったからね。
フェイさんなんかは、我が竜族の誇りにかけて、なんて言って、お出掛け用のペアルックまで作り出しちゃって、それはさすがに恥ずかしいって言ったら・・・セル様がちょっとだけ残念そうにしてて、面白かった。
人間界では魔法を使うと、魔王だってバレちゃうから、各所への連絡や、食料の準備とか、やらなきゃいけないことはたくさんあったらしい。なんか、旅行にでも行くみたいだな。あれ、大事になっちゃったかな?
出掛ける準備がすむまでに、セル様はお仕事を急いで片付けると言って、また執務室に篭ってしまった。
わたしは、もちろんその間、秒でお城の中を大リフォームした。匠の技、ってやつ?
埃やゴミなんかは、スライムが全部食べてくれて、リフォームのお手伝いはフラーさん達が手伝ってくれた。不死族だから、不眠不休でも大丈夫なんだって!
なぜか、フラーさん以外の人たちは、みんなガイコツだし、全然話してくれなくて、最初はちょっと怖かったけど、一緒に色々作業してみると、実は照れ屋さんで、とっても優しいことがわかった。
こうして、隅々までキレイになったお城は、光がたくさん降り注いでて立派で、美しい。シンデレラ城みたいに生まれ変わった。
わっしょい!
JK語広辞苑 令和二年監修
きゅんきゅんする 胸がときめく様
秒で 急いでの類義語 英語より派生の説あり
わっしょい 盛り上がる様子ないしは感情を表す様




