狼が来るぞ
狼がくるよ
どこかで声がしました。
大人が数人様子を見に行きました。
狼がくるよ
村はずれに住む醜い少女が、森の入り口から叫んでいました。
「あいつは大人の気が引きたいだけさ」
誰かが言いました。
「親もいない一人暮らしが寂しいのさ」
誰かが笑いました。
そうして大人たちは、村へ戻っていきました。
狼がくるよ
訴え続けた醜い少女は、声すら醜くなるまで叫び続けました。
けれど大人は、誰ひとりとして少女の元へ駆けつけはしませんでした。
翌朝、森の入り口で、狼に食い殺された少女の骸が見つかりました。
狼がいるよ
どこかで声がしました。
大人が数人様子を見に行きました。
狼がいるよ
村に住む美しい少女が、森の入り口から叫んでいました。
「あの子が大人を求めている」
誰かが言いました。
「親もいない一人暮らしだ、大人が助けてやらなきゃ」
誰かが。
そうして大人たちは、武器を取りに村へ戻っていきました。
狼がいるよ
美しい少女は、大人が見えなくなるまで叫び続けました。
けれど大人は、誰ひとりとして少女の元へ駆けつけることはできませんでした。
翌朝、村の中で、狼に食い殺された村人たちの骸が見つかりました。
狼が来るよ
狼がいるよ
狼が来るから、来ちゃいけないよ
狼がいるから、戻っちゃいけないよ
でも
本当の狼は、誰?
オ・オ・カ・ミ・ガ・ク・ル・ゾ
fin