表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

狼が来るぞ

作者: 早瀬和樹

 狼がくるよ


 どこかで声がしました。

 大人が数人様子を見に行きました。


 狼がくるよ


 村はずれに住む醜い少女が、森の入り口から叫んでいました。

「あいつは大人の気が引きたいだけさ」

 誰かが言いました。

「親もいない一人暮らしが寂しいのさ」

 誰かが笑いました。

 そうして大人たちは、村へ戻っていきました。


 狼がくるよ


 訴え続けた醜い少女は、声すら醜くなるまで叫び続けました。

 けれど大人は、誰ひとりとして少女の元へ駆けつけはしませんでした。


 翌朝、森の入り口で、狼に食い殺された少女の骸が見つかりました。




 狼がいるよ


 どこかで声がしました。

 大人が数人様子を見に行きました。


 狼がいるよ


 村に住む美しい少女が、森の入り口から叫んでいました。

「あの子が大人を求めている」

 誰かが言いました。

「親もいない一人暮らしだ、大人が助けてやらなきゃ」

 誰かが。

 そうして大人たちは、武器を取りに村へ戻っていきました。


 狼がいるよ


 美しい少女は、大人が見えなくなるまで叫び続けました。

 けれど大人は、誰ひとりとして少女の元へ駆けつけることはできませんでした。


 翌朝、村の中で、狼に食い殺された村人たちの骸が見つかりました。



 狼が来るよ

 狼がいるよ

 狼が来るから、来ちゃいけないよ

 狼がいるから、戻っちゃいけないよ


 でも

 本当の狼は、誰?


 オ・オ・カ・ミ・ガ・ク・ル・ゾ




fin

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ