天からのオクリモノ
なし
人間というのは、個人によって違いがある。それがあるから、いじめや差別が生まれる。
違い。
何が違うかは分かるようで分からない。
だから、おもしろい。そして、めんどくさい。
才能を持つものはそれを行使する義務がある。
だが、それを持たない者は持つ者を憎む。
憎みや嫉みが孤独をもたらす。
才能は能力だ。
僕たち、義兄弟は全員超能力が使える。
宇宙が誕生して、約146億年も前の話だ。
その始まりは、ビックバンと呼ばれる大爆発によるもの。
その時から今現在までの時空の流れ、空間の淀み、それらが狂うことによって未来が紡がれる。
その際に不具合によって起こってしまった現象。
超能力を持った生命体の誕生。
西暦2020年の現在から30年前から、急激に超能力を持つ者が増えた。
1990年、夏。
ブラジルのサンパウロと言う地域で一人目の超能力者が拘束された。
その能力者は感情に左右されて、周りを破壊する能力だと聞いた。
その能力者は世界から集められた研究者によって、水面下で実験動物にされた。
もっとわかりやすく言えば、研究者によって
━━━━━━━━━━殺された。
さらに、それを機に世界各地に超能力者が現れた。今では超能力者と無能力者がいる世界を珍しいとは思う者は少ない。
しかし、超能力者を良しと思うものもまた少ない。
結果として生まれたのは、集団無能力者による一人の能力者へのいじめや差別。
能力者が生まれる前も後も根本的にはなにも変わりない。
だから、僕達超能力者は自分が超能力者であることを隠して生きていくことがと多い。
でも、能力は簡単に隠せるほど容易なものではない。
感情によって働く能力だってある。
今現状で、能力によっての死者は出てはいないものの負傷者はそれなりの数が出ている。
しかも、その数は年々増加傾向にある。
その数は能力者の増大と比例している。
法律は2000年の記念すべき年に更新された。
能力者による無能力者への負傷行為または殺傷行為は重罪とし、懲役30年以下、または1億以下の賠償金を支払わなければいけない。だが、もしその行為に残虐性が認められれば極刑に処す。と。
あまりにも能力者にとっては残虐すぎる法律。
この法律が暗に示してるのはこうだ。
能力者は能力を行使した時点で重罪となるってこと。
つまり、無能力者が能力者へのいじめによって能力を発動してもそれは法律の有効となり、重罪となるということだ。
さらにその翌年。
能力者を区別するためのレベル提示がされた。
レベルは1から10段階で大きければ大きいほど能力は強いということだ。
そして、能力の種類も多々あり、物質に触れなくても物を動かしたり、他人の心を読んだり、と多様だ。
もし、神様がいるのなら僕は訊きたい。
どうして、こんなものを人間なんかの弱い生き物なんかに与えたのか、と。
そんなことを思いながら、僕たちは今日も能力者だと隠していつもの通学路を通う。
その時だった。制服の裾をクイッと引っ張られた。
振り返ると、心咲と一緒にいたはずの愛紗が心配そうに見ていた。
気が付くと愛紗が通う幼稚園の路地まで来ていた。
「にぃに、だいじょうぶ?」
僕は振り返り愛紗と同じくらいの高さまでしゃがんでそっと頭に手を添える。
「うん、大丈夫だよ。ありがと」
「うん!よかった!」
愛紗は心配そうな表情から笑みを浮かべた。
この子の名前は『愛紗』と書いて『ありす』と読む。長い地毛の茶色の髪の毛は艶やかだ。
まだ五歳になりたてのこの子にも超能力が発動した。しかし、その能力は今までに例をみないもので発動したのは一回のみ。
この子を父さんが引き取る前。この子の本当の両親が原因だと聞いた。
その話を聞いた父さんが愛紗を引き取った。
引き取った当初はこの子の目には光がなかった。
無気力無感情で涙すら流さなかった。
もちろん笑顔すら浮かべなかった。
それが今では笑顔をよく見せるようになった。
本当によかったと心から思う。
「兄さん、私、愛紗を幼稚園連れていくからここで」
愛紗の後ろから声を掛けられた。
「ああ、頼むよ。じゃまたな、愛紗」
「うん!バイバイにぃに!大好き!」
愛紗はうんっと大きく頷いてから、心咲と手を繋いで歩いていく。
僕さその背中を微笑みながら見送った。
基本、ここで幼稚園組、小学組と中学組、高校組は別れる。
現状は幼稚園組は愛紗一人。小学組は三人。
「·····それっくらいストレートに言わないとダメかな·····」
なにかボソッと心咲が言ったように聞こえたが、空耳かと思い、初めての高校への道中に戻る。
中高一貫性の高校、星城学園は土地は一緒だが校舎が違う。
だから、中学組と高校組は校門で別れる。
現状で高校組は四人、中学組も三人。
初めての高校ライフを僕は楽しめるかは心配だ。
なにもないことを願い、今日も頑張ることにしよう。
なし