家族のカタチ
家族とは一体なんだろうか?
血が繋がっていれば家族なのだろうか?
一緒に暮らしていれば家族なのか?
家族の定義ってのは、個々個人によって異なる。
だから、僕たちは僕たちの家族のカタチがある。
『怪奇家族』
僕たちがそう呼ばれてる理由。
それはきっとほかの家族とは違うから。大きく人ならざるものだから。
これは僕たち十二人の子供と一人の父親との特殊な『家族』の物語である。
朝、目を覚ますといつもの天井がボヤけた視界に映る。何年前からだろうか、こんな穏やかな生活ができるようになったのは。
もう遠い昔のように感じるが、実際は5年前のあの日から。
僕の父親と呼べる人が助けてくれたあの日から僕は今の生活を手に入れた。
本当の父親と母親はもうこの世にはいない。
僕は何もできなかった。
いや、違う。
その後を思考しようとした時だった。部屋の扉が勢いよく開く。
バァンッと扉と壁を打ち付ける音。
それと時を同じくして
「おきなよ、兄さん。朝だよ、遅刻するよ」
「ん·····あぁ今起きるよ、ありがとう」
「待ってるよ〜」
そう言って出ていった彼女の名前は『心咲』書いて『こえ』と読む。
歳が同じ彼女が僕のことを兄さんと呼ぶのは父さんが俺の後に彼女を連れてきたから。ただそれだけ。
心咲とは父さんが付けた名前だけど、意味は教えてくれなかった。心咲と父さんしか知らないことだ。
それに僕は無理に聞こうとはしなかった。
僕はまだ肌寒い空気を振り切るように毛布を取って、冷たい床に足をつける。ブルっと一振るいして部屋を出た。
一階に下りると、食卓には十二人分の朝食が用意されていた。二年前までは壮観だと思ってた光景も今では日常になろうとしていた。
毎朝、これを作ってくれる心咲と華に感謝しようと改めて思う。
どうやら、僕が最後のようで全員集まっている。
父さんは早く朝食を済ませたようでもういない。
一番端の席に着席すると、隣のイケメンが声をかけてくる。
「おう、志麻起きたか」
「あぁ兄さん、おはよう。今日の準備してたら寝れなくてさ」
「遠足前の小学生じゃあるまいし、今年から高校生なんだからもっと大人になれよ」
そう言ってコーヒーに口を付けた彼は僕の兄の『仁』と書いて『ひと』と読む。
長身で整った顔立ち、僕の二つ年上の彼を羨ましいと思ってることは内心にしまう。
「兄さんは随分と落ち着いてるな。楽しみとかないわけ?」
俺は椅子に座りながら尋ねた。
コーヒーから口を離して、そっと食卓にカップを置く。
「特にないな。この生活が始まってからは特に、な」
「そっか。兄さんは大人なんだな」
「あぁ、お前も早く走らないと俺みたいになれないぞ」
「はいはい、そうですね」
僕は兄さんの発言を流しつつ、朝食に手をつける。
手早く朝食を済ませてから、賑わいを背景に僕は自室に戻り身支度を済ませる。
荷物を持って部屋を出ると、父さんが廊下を歩いてきた。
「志麻、今日から高校生だがくれぐれも」
「大丈夫だよ、父さん」
「それならいいんだ」
「うん、じゃいってきます」
「あぁ、気をつけてな」
そう残して僕は一階に下りる。
広々とした玄関には兄弟十二人がそろい踏みしていた。
僕たちは靴を履き替えて、家を出る。
僕たちのいていい場所。
僕たちは怪奇家族。周りとは異なる家族。
そう、それは、周りとは明らかに違うもの。
それが何かを語るのはこれからの話。