正体は…?
宿に着いた三人は特にすることも無かったのでチェンガ(現世で言うトランプのばば抜きみたいなカードゲーム)
で暇潰しをしていた。
「そういえばまだモンスターの名前聞いてないな。」
トーダが自分の手札を引きながら呟いた。
「確かに。タトタトみたいなのだったらいいんだけどね。」
自分はティラの手札を引きながら呟いた。
タトタトとは現世で言う中型犬みたいな風貌のモンスターだ。
見た目とは裏腹にとても臆病で人を襲う事は滅多に無い、最弱のモンスターである。
「んなわけないでしょ。」
ティラはトーダの手札を引きながら呟いた。
「おっ、上がり~!」
二枚のカードをぱさっと置き、ベットへダイブした。
「ふむ、確かにその通りだな…だとしたら…」
トーダはさっと自分の手札を引いた。自分の手元には史上最強といわれているモンスター「ドルダーガ」
一枚が残っていた。
「セントラあたりかな。」
チェンガが終わったところで時計を見ると十二時五十分。そろそろ村長が来てもいい頃合だ。
「カードもうぼろぼろね。次の町で新しいの買いましょ。」
ティラはカードをトントンと整理して袋に入れた。
「うん、そうだね。このままだと汚れ具合でどれがどのカードか分かっちゃう可能性がある。」
そしてはっ、と気がついた。
「もしかして…もう…?」
「やーね。私はそんな汚い事しないわ。」
トーダの方に視線を移す。
「…俺もそんなことしないぞ。」
「だよね~二人とも信じてる。」
二人が深いため息をついたところでドアがノックされた。
「クーロさん、ティラさん、トーダさん、いらっしゃいますか?」
聞き覚えのある声。
「はい、少々お待ちください。」
自分はドアを開け、ジルを迎え入れた。
「みなさん、お待たせしてしまい申し訳ございません。」
ペコ、と頭を下げた。
「いえいえ。こちらこそ事情を知らずにわがままなことを言ってしまいまして。」
走ってきたのであろう、ジルは手ぬぐいで汗を拭いた。
「それで考えた結果なのですが…」
三人はゴクリ、と唾を飲んだ。
「皆さんに洞窟の場所をお教えします。」
その言葉を聞いてほっとした。だが、それもつかの間。
これからが本番である。
ジルは懐から黄ばんでいる地図を取り出し、机に広げた。
「場所はバーサルとアラルス村の街道を外れたこの辺りにあります。」
トーダは指で示された場所を見て自分たちの地図に印をつけた。
「ここは…おととい野宿した場所に近いね。」
「そうだな。」
「村長さん、洞窟の入り口を見つけるための目印みたいなものはありますか?」
「な〜に、この洞窟の入り口はとても大きいんだ。この辺りをうろうろすればすぐ見つかるはずだよ。」
ジルは懐かしそうな、悲しそうな顔をしながら言った。
「はあ…分かりました…」
シンプルな回答に少々困惑気味でティラは返事した。
「そういえばここで出るモンスターの名前をまだ聞いていなかったんですが…」
その言葉を聞いてジルは顔色を変えた。
「驚かないでください。我が息子を殺した憎たらしいモンスターの名は…」
三人は同時に息を飲み、ジルの顔に視線を合わせる。
「タトタトです。」
その言葉を聞いた瞬間、固まった。
え?タトタト?
あの最弱モンスターが?
人を殺した?
左右に首を振ると自分と同じあ然とした顔でうまく状況を把握できていない二人。
「混乱するのも無理はありません。確かに私たちを襲ったのはタトタトでした。」
「でもタトタトは…」
やっと動き始めたトーダが羽をばたつかせながらジルに問いかける。
「確かにタトタトは全モンスターの中で最弱です。しかし、私たちを襲ったのは通常のタトタトでは
無かったのです。」
「通常…では無い…?」
「はい。外見はほぼ同じなのですが…素早さと攻撃力が桁違いでした。大の大人が全速力で逃げても
追いついてしまうほどで…また、通常では噛まれたとしても少々出血する程度ですが、その時は…」
「いえ、その後はおっしゃらなくて大丈夫です。」
トーダが制止した。大体予測はつく。
「…その後私を含め村は大混乱に陥りました。泣き出す人、家に閉じこもったまま出てこない人、
終いには村を出て行こうとする人までいました。何日たっただろうか、やっとひと段落したところでセラスに使いを
送ったのです。新種のタトタトについて情報が無いか確認したかったために。」
その時ドアがノックされた。入ってきたのは宿屋の女将、シーラさんだった。なんと律儀にお茶を持ってきて
くれた。四人はお茶を一口飲み、話を続けた。
「えーっと、どこまで話したかな?…ああ、セラスに使いを送ったところか。」
ここでティラが手を上げた。
「すみません、なぜバーサルではなくセラスなんですか?」
確かにそこは気になる。情報を得るならバーサルでもいいはずだ。
セラスの方が町の規模が大きいとかそういう理由だろうか。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。セラスではモンスターを研究をしている団体があるんですよ。」
「えっ、そうなの?」
ティラは驚いた反動で体がびく、と揺れた。自分もこの事については初耳だった。
トーダだけは知っていたようでうんうんとうなずいていた。さすがだ。
「しかしなあ、私たちが襲われたのはこの世で最弱のモンスター。その団体、アダヌスには相手に
されなかったのじゃ。」
「そんな…」
自分はため息混じりに呟いた。
「で、結局門前払いを食らって村に戻ってきました。当時、調査が出来ず変異の原因が分からないままの日々に村人は
怯えていました。しかしその後は特に事件などは無く、徐々に活気を取り戻すことができたのです。」
言い終えた後、ジルは窓から外を見た。小学生くらいの子供たちが元気よく走り回っている。…ん?
突然、ジルが立ち上がり窓を開けた。そして大きく息を吸い込み…
「こぅらー!!!学校はどーしたー!!!」
追いかけっこをしていた二人の子供はぴたりと動きを止め、こちらを見る。
「げげっ、村長だ。」
「で、でもなんで宿屋の部屋の中に…?」
「さっさと戻らんか!!」
「ひ、ひとまず逃げろー!」
二人は全速力で走っていった。ジルはそれを見届けた後、窓を閉めて席に戻った。
「いやあ、突然すみません。」
「い、いや、大丈夫ですよ。」
やはりどこの世界も一緒だな、と自分は密かに思う。
「それではモンスターの特性や弱点なども…」
「はい…分かりません…」
ジルは先ほどと打って変わって申し訳なさそうな顔でうつむいた。
「いえ、洞窟の場所が分かっただけでも助かります。」
トーダは礼儀深くお辞儀をした。
「それでは、出発はいつにしますか?」
「明日の朝六時です。」
「そうですか。それではその時間に村人全員でお見送りしますよ。後、何か必要なものがあったら何なりと申し出ください。
出来る限り用意し、無償で提供します。」
「え、そんな。お金は払いますよ。」
ティラはさっとお財布を出した。
「いえいえ、いいんですよ。せめてこれくらいの事はさせてください。」
ジルは微笑みながらそう言った。
「…どうする?」
ティラは振り向いて自分とトーダに問いかけた。
「…そうだな…」
「…そうだね…」
少し時間がたった後、口を開いたのはトーダだった。
「…ここはお言葉に甘えようか。」
コク、と二人はうなずいた。
「意見がまとまったようですね。」
ジルはそう言うと同時に懐から紙とペンを取り出し、何らかの文言とサインを書いた。
「こちらをどうぞ。この紙を店主に見せれば無償で商品を手に入れられます。もし店に無いものが必要でしたら
私のところまで来てください。」
「ありがとうございます。」
自分はその紙を受け取り、かばんにしまった。
「それでは、私はこの辺で。」
「ありがとうございました!」
三人はそろってお辞儀をした。
はい、ということで始まりました!あとがきコーナー~(不定期)
今回は主要登場人物の三人、クーロ、ティラ、トーダの外見について語りたいと思います。この三人は自分の頭の中で某有名ケモノ絵師さん三人のイラスト(手癖)をイメージして書いています。
それでは早速。まずクーロはその名の通り黒いです。(笑)(名前を考えるのがめんどくさかったわけじゃないよ!多分…)けれど全身真っ黒ではなく、お腹と口の周りは白いです。Mさんが実際に描いたキャラをモチーフにしています。
ティラは全身ほぼピンクです。(一部白い箇所もあります。)Hさんが描いたあるキャラと90%重ねています。
トーダはSさんの手癖をモチーフにしています。口ばしは黄色く、翼と顔、ふくらはぎは茶色、そのほかは白です。
本当は自分が実際に描いて説明できればいいのですが何せ自分は絵が描けないので…
と、この辺りでお開きにしたいと思います。(唐突)最後まで読んでくださってありがとうございます。Twitterやってるのでフォローしてね。(唐突2回目)@Ta6666666
それではまた。