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セントティーナの夜  作者: たむ
アルク編
34/36

魔女の正体

 時刻は午後三時過ぎ。

ソフィアと長話をしてしまったため、かなり時間を食ってしまった。

「タナス見つかるかな?」

ティラが不安そうな声を出す。

「依頼内容はタナスを捕まえることなのですか?」

「まあそんなところだ。」

「そうですか。それで捕獲方法は?」

「背後から三人で斬りつける予定だけど…もしかして…」

自分はある期待の目をソフィアに向けた。

「はい。私の魔法だったら気づかれることなく倒すことが出来ます。」

「おお〜!すごい!」

ティラは感嘆の声を上げる。

「まあ、いつでもどこでも使えるわけではありません。

体力的に一日十回ぐらいしか出せませんし『魔法』という特性上、

珍しいものなのであまり見知らぬ人に見られるのは

気分の良いものではありません。」

珍しいもの、というのは何かとトラブルに巻き込まれやすいものだ。

「まあ、今回は人もいないと思いますし数回だったら大丈夫ですよ。」

「ありがとう、助かる。」

「それでタナスはどの辺りにいるのでしょうか?」

「そうだな…」

トーダは地図と周りの風景を交互に見比べる。

「もうそろそろで草原に出るはずだ。そこに生息しているらしい。」

「なるほど。」


 そして数分後、トーダの言う通り林を抜けるとだだっ広い草原に出た。

「うわ〜広い!春になったらここにピクニックに来たいわね。」

ティラの言うように、それくらい気持ちがよかった。

「さてと、肝心のタナスは…ん?あれか?」

辺りを見回すと遠くに四本足であるく獣の姿が見える。

「あ!あれじゃない?」

ティラも自分と同じ方向を指差しながら言った。

「よし、じゃあバレないように行こう。」

四人はラパの手綱を木に繋いでゆっくりと近づく。

「魔法ってどのくらいの距離から届くの?」

「もうこのくらいなら届くわ。けど当たるかどうか微妙だからもう少し

近づかないと。」

忍び足で更に近づく。

「みなさん、このくらいで大丈夫です。」

ソフィアは小声でそう言うと杖を頭上に掲げた。

「トーダさん、気絶させるくらいの威力で良いのですね。」

「ああ、頼む。」

「では。」

ソフィアは小声で呪文を唱え始めた。

二回目だがやはり何を言っているのか分からない。

「…天を穿け!ライジング・エナジー!!」

すると先端から雷みたいな電気の線がジグザク曲がりながらタナスに当たる。

「ぴぎゃぁぁぁ!」

タナスは大きな声で鳴くと同時に倒れた。

「今です。」

「うん!」

三人はロープを取り出し足をぐるぐる巻にする。

「よし、それじゃあ運ぶぞ。」

「あ、ごめんなさい。私、力が無いので。」

「うん、大丈夫よ。私たちで運ぶから。」

四人はラパの元へ戻る。

「よいしょっ、と。」

タナスは三人がかりでも重かったが何とか台車に乗せることが出来た。

「ふぅ〜。あと二体は乗りそうだが…」

トーダは辺りを見回す。

「もう夕暮れだね。」

自分は時計を取り出すと午後五時前。

「今日はもう引き上げない?」

「ああ、そうだな。」

トーダはラパの手綱を木から外す。

「あの…みなさんは宿を取られているのですか?」

「うん。取ってるよ。」

「そうですか…私アルクへ向かう途中だったので宿が取れるかどうか…」

「ん〜まあ今はそこまで混雑してないから大丈夫だと思うよ。」

「そう、なら良かった。」

「もし取れなかったら私たちの部屋においでよ。」

「ってことはティラが床で寝るんだね。」

自分はにこやかな笑顔で言った。

「あら、クーロに決まっているじゃない。」

ティラもにこやかな笑顔で言った。

「えぇ〜またまた〜。ここはティラ隊長がお手本見せるべきだよ〜。」

「まあ、こんなか弱い女子にそんな事言うなんて…いけず〜」

そしてトーダはため息まじりにソフィアへ言った。

「まあ毎日こんな調子だが改めてよろしく頼む。」

「…はい。」

トーダとソフィアの冷ややかな視線を受けながらもクーロとティラの

言い合いは続いたのだった。




 荷台に大きな獲物を乗せた四人はやっとアルクまで戻ることができた。

「ふ~、そしたらこのタナスをまずは『アマース』へ持っていけばいいんだな。」

ノアから貰った依頼書にはアマースに二頭、トルマンに一頭の順で届けて欲しい

との事だった。

「あ、そうだ。四人で行くよりも分担して行動したほうが効率いいな。

俺は一人で先にアマースに行こうかな。」

「それじゃあ私はノアさんに連絡しに行くね。」

「じゃあ自分はソフィアを自分が泊まっているホテルに案内するよ。」

「案内だなんてそんな…」

ソフィアは最初、そう言って首を横に振った。だが、

「…やっぱりお願いします。」

すぐに考えを改め直したらしい。

「よし、三人はそれぞれの用事が済んだらアマースへ来てくれ。」

「うん!」

「分かったわ!」



 自分はソフィアと一緒に泊まっているホテルへ向かう。

「…」

「…」

ソフィアは見た目通りあまりおしゃべりはしないタイプみたいだ。

「あそこのホテルだよ。」

二人は早速ホテルの中へ入り空室状況を聞いた。

「申し訳ございません。ただ今満室となっておりまして…」

「ええっ!ついこの前までは空いていたのに…」

う~ん、だとすると自分たちの部屋に招くか。

「すみません、自分が泊まっている部屋に一人追加で泊まる事って出来ますか?」

「まあ、出来ますけど…」

「えっ?ちょっと!?」

ソフィアは自分の裾を軽く引っ張った。

「へーきへーき。それじゃあ行くよ。」

自分は歩き出すとソフィアは何も言わず着いてくる。

「ここだよ。」

自分はゆっくりとドアを開けた。

「荷物は適当に置いちゃっていいから。」

「うん…」

ソフィアは部屋の角っこに荷物を置いた。

「いやぁ~まさか満室だったとは…」

「あの、本当にいいんですか?」

ソフィアは困惑気味に言った。

「いいんだよ。」

「…ありがとうございます。」

ソフィアは軽く頭を下げる。

「さてと、荷物も置いたし早速トーダの所へ向かうか!」

「待って!」

自分はドアへ向かって歩き始めたが再びソフィアに服を掴まれてしまった。

「ん?どうしたの?」

自分は振り返りソフィアの顔を見る。

「あの…聞きたいことがあります。」

「ん?何?」

「あの…その…よく分からなかったら無視して頂いて構いません。」

「うん。」

すぅー…ふぅ~っ、とソフィアは深呼吸をした。

大切なことを言う前の癖なのかもしれない。

「それでは聞きます。」

ごくり、と唾を飲む。

「あなた、『地球』から来ましたか?」



──あなた、地球から来ましたか──


──あなた、地球──


──地球──



「えっ…」

自分は無意識に一歩後ろへ下がった。

「そうなのですか?」

逆にソフィアは一歩前に出た。

「…とうだよ。」

「え?」

「本当だよ。自分は地球…日本から来たんだ。」

するとソフィアは再び深呼吸をした。

また驚くべきことでも言うのだろうか。

「やった!やっと会えた!」

ソフィアは笑顔を満開にして自分に飛びついてきた。

「わっ!?ちょ!」

ソフィアは小柄だがそれに似合わない力で押し倒されてしまった。

「あっ、ごめんなさい。」

ソフィアは自分から離れた。

「だ、大丈夫。それより…」

自分もゆっくり立ち上がった。

「君も…日本から来たの?」

「ええ。そしてあなたと同じ、現実世界では意識不明です。」

「なんでそのことまで…」

「だってあなたも大樹の石、探しているんでしょう?それで十分です。」

次から次へと飛び出す言葉に付いていくのがきつい。

そして聞きたいことは山ほどあるはずなのに一つも出てこない。

「私も聞きたいことはありますが時間がありません。トーダさんたちを待たせて

いますからね。けど、これだけは言っておきます。」

自分は依然、混乱している。

「私が先に大樹の石を見つけても抜け駆けはしません。」

「はぁ…」

やっと声が出た。

「あ、あとこのことはトーダさんやティラさんを含む他人には内緒にして

おいてください。二人きりになった時、またお話しましょう。」

「…う、うん。」

「それでは行きましょう。…大丈夫ですか?」

「うん…」

自分とは対照的にソフィアは既にいつもの調子に戻っていた。

「大丈夫。」

二人はホテルを後にし、トーダとティラが居るであろうアマースへ向かった。

どうもたむです。


少しずつ物語が動き始めてきました。

前に言ったかもしれませんがこの先の物語は自分でもわかりません。

そもそもソフィアが出てくること自体当初はひとかけらも想像していませんでした。


物語の方向性は基本的には四人に任せています。

自分がイベントを考え起こし、それによって四人はどう対処するのか…

というスタンスです。

さて、ソフィアもクーロと同じ現世からやってきたというのは今後どのような意味を持ってくるのか…

目が離せませんね。(にっこり)


それではこのへんで。

今後もよろしくお願いします。

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