葛藤
とにかく追いつきたい、だったらスピードを上げればいい。
しかしそうはいかない。
なぜならここはまだ街の中。
人はたくさんいるし障害物もある。
辛うじて匂いは途絶えてはいないものの、いつ消えてしまってもおかしくない状況が
より一層不安を掻き立てる。
「…この方向、やはり街から出ようとしているな。」
セラスには東西南北合わせて四箇所から外部との出入りが出来る。
もちろん、検問はあるものの、あの三人組がおとなしく受けるとは思えない。
ラパを走らせること約十分。
匂いは西門へ続いていた。
自分はスピードを落とし門へ近づくと案の定、無理やり突破したらしい。
周辺には怪我を負った守衛が数人いた。
「大丈夫ですか!?」
自分は腕から出血している犬獣人に問いかけた。
「…うう…俺は大丈夫だ…。」
「ラパに乗った三人組にやられたんですね?」
「ああ…あいつら…止めようとしたが僕たちの制止を振り切ってこの門から出て行きやがった…」
「この門からどっちの方角に行ったか分かりますか?」
「この門を出て真っ直ぐだ。」
「ありがとうございます。」
自分はお礼を言い早速ラパを走らせようとした。
「ちょっと、君。奴らを追うのかい?」
すると守衛は痛みと心配が合わさった眼差しで言った。
「はい、もちろん。」
自信満々に言った。
「だけど君、何か武器は持っているかい?」
その問いにはっ、となり腰に手を当てる。
配達員が剣を持っている訳がない。
「だったら僕の短剣を持っていくといい。」
守衛はそう言って腰から鞘を取り差し出した。
「助かります!」
自分は有り難く受け取った。
「無茶はするなよ。少しでも危険を感じたら引き返すんだ。」
「はい、ありがとうございます!」
自分は鞘をベルトに固定し今度こそラパを発進させた。
門を出るとだだっ広い草原がお出迎えをしてくれた。
草原?だったら障害物が無いから見つけやすいじゃん!
確かに人間だったらそうだろう。
獣人、もとい犬獣人は違う。
現世の犬同様、聴覚や嗅覚、身体能力は優れていても視力は低いのである。
なのでここでも嗅覚が頼りになる。
「…真っ直ぐだな。」
再びラパを発進させてから頭の中の地図を開く。
「この方向には確か…小さな森があったな。もしやそこに潜伏するつもりなのか。」
旅の途中の暇つぶしで地図を眺めていて良かった、と思いつつ
森に近づくにつれ緊張が高まる。
「大丈夫だ、相手は盗賊だ…凶暴なタトタトじゃない。」
「ピー」
ラパが鳴く。
どうやら自分は無意識にラパを止めてしまったようだ。
「…くそ!どうしてだ!」
足の震えが止まらない。
「早く…追いつかないといけないのに!」
ラパを発進出来ない。
「どうすればいいんだ!」
「俺たちに任せればいい。」
自分は我慢出来ず叫ぶと後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「え?!」
自分は驚きつつ後ろを振り返るとそこにはいつもの二人がラパに跨っていた。
「もう!一人で無茶しないの!」
ティラは腰に手を当てながら言った。
「クーロ、奴らはこの先か?」
トーダが訪ねた。
「う、うん。この先には森があるから多分そこに潜伏してると思う。」
「そうか。奴らは何人だ?」
「宝石店を襲ったのは三人だったよ。」
「そうか。」
トーダはラパの手綱をぎゅっと握り自分の前に躍り出た。
「どうする、クーロ。お前は引き返すか?」
トーダのその問いにもちろん即答は出来ない。
「分かっていると思うがそんな中途半端な気持ちじゃあ、今度こそ死ぬぞ。」
分かっている。
だけどここで『町に戻るわ。二人とも頑張ってね。』なんて言えるか。
それにここで一歩を踏み出さないと今後、同じ場面に遭遇した時二人に任せっぱなしになるだろう。
そんなお荷物になるのは嫌だ。
「クーロ、無理しなくていいのよ。」
ティラはそう言うが違う、違うんだ。
ここは無理をしなければならないんだ。
「…トーダ、ティラ。一緒に行かせて。」
その返事を聞いたトーダはふっ、と鼻で笑った。
「だと思ったぜ。それじゃあクーロ、匂いの追跡頼む。」
「うん!」
今度は自分が二人の前に躍り出た。
森はもうすぐ。
二人からの後押しをしっかり受け止め、ラパを走らせた。
「…よし、止まれ。」
先頭の虎獣人はそう言うと後ろの狼獣人とトカゲ獣人はラパを停止させた。
「ふう〜親分、今回はヤバかったっすね!」
トカゲ獣人はラパから降りながら言った。
「まさかあの大都市、セラスでヤるなんて思ってもなかったっすよ!」
狼獣人も同様、降りながら言った。
「よし、今日はここで野宿だ。ラパは手綱を木に縛り付けておけ。
あと荷物は降ろすなよ。」
「アイアイサー!」
二人は早速、指示されたことを実行に移す。
「親分、それでは早速野宿の準備を…親分?」
「そこに隠れているやつ、出てこい!」
虎獣人は茂みに向かって大声で言った。
「…っく、ばれちゃあ仕方ないな。」
もぞもぞと茂みから出てきたのトーダ。
「こ、こいつ!」
狼獣人は唸りながら言った。
「つ、つけられていたのか!」
トカゲ獣人は驚きながら言った。
「ほう、これはこれは。一応聞いておくが俺たちに何か用かな?」
虎獣人が問いかける。
「ああ。セラスにある宝石店で強盗があったんだが…その強盗犯の匂いを
辿るとお前たちに行き着いたんだ。」
「こ、このヤロー!」
「待て。」
虎獣人は今にも殴り掛かりそうなトカゲ獣人を冷めた声で制止した。
「なるほど。しかし不可解な点があるな。あんた、どこからどう見ても鳥獣人だよな。
鳥獣人は匂いで追跡できるほど鼻が良くない。ってことはお仲間さんがいるんだろ?」
「その通り!」
「ぎゃ!!」
「っく!!」
すかさずトーダとは別の茂みから飛び出し自分は狼獣人、
ティラはトカゲ獣人の首元にナイフを当てた。
「な、何!?裏に回り込まれていただと!?」
「ああそうさ、俺は鳥獣人だ。鼻は良くない。だから犬獣人と猫獣人に手を貸して貰った。」
トーダはそう言い終えると腰に着けてある鞘から剣を引き抜いた。
「さあ、その二人の命が欲しければ武器を捨てて跪け!!!」
トーダは剣を握りながらゆっくりと虎獣人に近づく。
「お、親方!俺たちのことはいいから早く逃げてくだせぇ!!」
「お黙り!!」
「ぎゃあ!」
ティラはトカゲ獣人の首元に軽くナイフを入れる。
「…っく、しょうがねぇ…」
虎獣人は腰から鞘を外しぶっきらぼうに放り投げた。
「そ、そんな、親方!」
今度は狼獣人が叫ぶ。
「それじゃあ、俺たちと一緒に…」
来てもらうぞ、と言えなかった。
なぜなら突然、何者かに煙幕を投げられたからだ。
「ぐっ!」
「きゃあ!」
その隙にトカゲ獣人と狼獣人は二人を押し飛ばした。
「ふん、こんなところで捕まってたまるかよ!」
「親分、宝石はどうしましょう?」
「バカ!今は逃げるしかねーだろ!」
そして煙が立ち消える頃、三人の姿は無かった。
「ごほっ、ごほ…くそ、逃げられたか…!」
トーダはゆっくりと立ち上がり辺りを見回した。
「…ああ、そうみたいだね、まさか他にも仲間がいたとは。」
「ごほっ…まあ、盗まれた宝石は取り返せたわね。」
ティラは木に繋がれている三頭のラパを見ながら言った。
「それよりもこの薬、凄いね。まさか獣の匂いを消せるなんて。」
自分はそう言うとポケットから小瓶を取り出した。
中には紫色の怪しい粉が入っている。
そう、これのおかげでばれずに回り込むことが出来たのだ。
「ふふっ、これはクーロと雑貨屋を回っている時に買ったのよ。」
「え!?全然気づかなかった。」
「そこまで能天気じゃないわよ。」
「まさかこんなすぐに役に立つなんてな。」
「へへっ!」
ティラはふん、と鼻を鳴らした。
「それじゃあ、宝石持ってセラスに戻るか!」
トーダは翼を回しながら言った。
「ねえ、盗賊たちが置いてったラパはどうするの?」
ティラはラパを指差しながら言った。
「そうだなぁ…一緒に連れて帰るか。」
そんなやり取りをしてから二人は歩き出した。
「待って!」
「?」
自分のとっさの一言で二人は振り返った。
「ん?どうした?」
トーダが不思議そうな顔で聞く。
「まさか、敵!?」
ティラは素早く短剣に手を当てる。
「い、いや、違うんだ。あの…まだ二人にお礼を言ってなかったなって。」
自分はしっかりと二人の目を見て言った。
「ありがとう。」
突然、かしこまった自分の態度に二人は呆然としていた。
やがて…
「ふっ、ふははははっ!」
「ふふふっ!」
「い、いや、そ、その…笑うなよ!」
人間だったらきっと顔は真っ赤になっていただろう。
「仲間なんだからあたりまえでしょ!」
「そうだぞ!」
トーダは翼でばしっ!っと肩を叩いた。
「…ううっ、なんだか照れくさいな。」
「いまさら照れる必要はないでしょ、何年一緒にいるのよ?」
ティラはそう言うが顔をそらして歩き始めてしまったので本人も
照れているのがバレバレだった。
「よし、それじゃあ気を取り直して宝石返しに行くか!」
「うん!」
こうして宝石奪還作戦は無事に幕を下ろしたのであった。
初めての方ははじめまして。
二回目以降の方はどうも。
たむです。
早速脱線しますがけもケットどうしようかなぁ…
行きたいけど例のウイルスが怖いし好きな有名サークルさんも今回ばかりは参加していないし…
というかこんな一般ケモナーだったら通販でよくね?
…けど冬コミ最後に東京行ってないからそろそろ行きたい…
そんな『葛藤』をしています。
しかも今回はカタログが通販のみ販売なので前日に行くか行かないか決めることができません。
う〜ん、この。
全てはウイルスが悪いんです。ウイルスが。
そして…
投稿期間が空いてしまってすみません。
最近仕事が忙しく…
まあ今後もちまちま書いて投稿していくつもりなのでよろしくお願いします。
それではまた。




