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セントティーナの夜  作者: たむ
アラルス編
15/36

石の在り処

 医者が言うには最低でも二週間は休息を取らなければならないらしい。

これでも交渉して短くなった方で本当は一ヶ月様子を見た方が良いと言った。

だが、ここでぐずぐずしてられない。

一刻も早く『大樹の石』に関する手がかりを見つけなければ…!

そう考えに思いふけっているといきなり病室のドアが開いた。

「クーロ!おはよっ!」

「どうだ、調子は?」

「…毎回言ってるけどノックぐらいしてくれ。」

まったく、もしもドアを開けた瞬間、自分が裸になって体を拭いてたりしてそれを見たティラは大声上げて周りに迷惑かけるんだから、どうせ…。

と、心の中で思いつつも毎日お見舞いに来てくれるのはとても嬉しい。

「へへへ、なんと今日はゲストがいます!」

「はっ、まさか!」

自分は勢いよく上半身を起こした。

「こら、また傷口が開くぞ。」

「さすがにもう大丈夫だよ。それより早く!」

「はは、そんなに慌てんなって。」

二人が病室に入ってくると少し遅れて三人目が入ってきた。

「クーロさん、この度はうちの娘が大変なご迷惑をお掛けしてしまいまして

申し訳ございません。」

「いえいえ、危険な洞窟の中で気を抜いてしまった自分が悪いんです。ニーナさんは悪くないですよ。」

ニーナの父、テラさんはハンカチで汗を拭いた。

「あの、早々ですが少しお聞きしたいことがありまして…」

「大樹の石、についてですか?」

「はい。大樹の石はどこで手に入れたんですか?」

それはずっと聞きたかったこと。

テラさんは自分たちが洞窟に出発した後、村を代表してセラスへ買い出しに行ってしまったらしい。

それで丸々一週間、村を留守にしていた。

「実は…」

テラさんの口調と顔の表情で嫌な予感がした。

「私も知らないのです。」

やっぱりそうか。

「あのお守り、もとい大樹の石は私の父から譲り受けたものだったのです。」

テラさんは窓から外を見ながら静かに言った。

「私の父、ロテスは冒険家でした。様々な地域を巡って、そこで困っている人を助け、

生計を立てていたようです。」

「なんか私たちみたいね。」

ティラがボソッと言った。

「恐らく旅をしていた時期にどこかで手に入れたのでしょう。」

「それでも…!何か手がかりはないでしょうか?」

勢い余って少々大きな声を出してしまった。

「そう言われましても…」

テラさんは腕を組みながら唸ってしまった。

そして渋い顔をしながら口を開いた…のはトーダだった。

「お前、何か俺たちに隠し事してるだろ。」

「え!?」

突拍子な言葉に驚くティラ。

「え?い、いや、女神さまの元で起こったことはさっき話した通りだし大樹の石についても…」

「なぜそこまで石にこだわる?」

「くっ…」

トーダの口調と表情で言葉が詰まる。

「まさか護身用にもう一つ欲しいとか思ってないだろうな?」

背中に嫌な汗が一滴流れる。

「俺は今まで様々な本を読んできた。また、様々な地域を巡ってそこに住む人々から話を聞いた。しかし、大樹の石は今回初めて聞いた代物だ。」

俺が言いたいことは分かるよな、というような目でこちらを見てくる。

「ああ。トーダの言いたいことは分かる、分かるんだがこれには事情があるんだ。」

「そんな…クーロ、何か隠していたの?」

今度はティラが不安そうな目で見つめてくる。もうここまで追い詰められてしまったら白状するしかなさそうだ。

「まあ二人に信じてもらえるか分からないけど…話すね。っとその前にテラさん、申し訳ないのですが

席を外してもらえませんか?」

「あ、ああ。分かった。」

テラさんはそそくさと部屋を出て行った。


もう一つの世界のこと、信じてもらえるだろうか。

自分の答えは否、けれど微かな希望はある。

ティラとトーダはこれまで苦楽を共にし心を通わせた仲間ということ。

自分は机の上にあるコップに水を注ぎ、口を湿らせてから話を始めたのだった。

次でアラルス偏ラスト!!!

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