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第7話 奴隷と包帯エルフ

1日の獲得ポイントが1000ptを越えました

ブクマ・評価していただいた方ありがとうございます!

 俺はウォルナーさんの知り合いの奴隷商に会いに来ていた。

 傍らにはルーナもいる。

 ウォルナーさんが着せてくれた洋服が気に入ったらしい。

 軽く鼻歌を唄っていた。


「ルーナ、ご機嫌だね」


「うん。パパとママに会えるかもしれないから!」


 無邪気な笑顔を見せる。

 なるほど。

 服のことより、両親に会える方が楽しみなのか。


 しかし、ルーナの希望はあっさりと断たれる。

 ウォルナーさんが紹介してくれた奴隷商のところには、彼女の両親はいなかった。


 最初明るい表情は影を潜める。

 頭も尻尾を力無く垂れていた。

 そのルーナの頭に、俺はそっと手を置く。


「ルーナ、大丈夫だよ。きっと、いつか見つかるから」


「お嬢ちゃん、元気だしな。奴隷商の仲間はいっぱいいる。後で特徴とか教えてくれ。聞いておいてやろう」


 奴隷商の男は目を細めた。

 おそらくルーナぐらいの子どもがいるのかもしれない。

 どこか慈愛に満ちていた。


 ウォルナーさんが紹介してくれた奴隷商ボーヤーさんだ。

 おそらく悪い人ではないのだろう。


「おじさんも探してくれるって」


「ホント?」


「ああ。任せなさい」


「良かったな、ルーナ」


「うん!」


 ルーナの瞳は少し赤くなっていたが、ようやく笑顔を見せてくれた。


「しかし――――」


 俺は周りを見渡す。

 天幕が折り、若干薄暗い中、奴隷と思われる人や亜人、獣族が動き回っていた。

 なんか妙にイメージがこびりついているのだが、奴隷と聞くと、檻に入れたり、足に鉄球をはめたりして、逃走を防止するものだ。


 だが、ここにいる奴隷たちは違う。

 二の腕付近についた焼き印こそ痛々しいが、基本自由らしい。

 そこで食事を作ったり、身体を鍛えたり、読み書きを習ったりしている奴隷もいた。


 その事について尋ねると。


「今時、奴隷をただ売っても売れませんよ。そこに付加価値をつけてあげないと」


「付加価値?」


「食事が作れたり、剣を振るえたり、読み書きができれば、お客さんも喜ぶでしょう? だから私は、奴隷をよく見せるための手伝いをしているんです。それは年季が明けてからの奴隷の力にもなる」


 年季というのは、奴隷の契約期間のことだ。

 法律によって、契約期間は5年と定められている。

 それが終われば、晴れて自由の身となり、きちんとした身分も与えられるという。


「ちゃんと一芸を磨けば、生きていくことができますからな。奴隷商というのは、奴隷のプロデューサーなんですよ」


 ふーん。

 奴隷商にもこういう人間がいるんだな。

 ちょっと感心してしまった。


 しかし、奴隷と聞くと、その……夜のお世話的なこともするのだろうか。

 だったら、その職場の修行というのは、どういう――。


 俺は辺りを見渡す。

 すると、ポンポンとボーヤーさんに肩を叩かれた。


「残念だけど、お兄さん。うちには夜専門の奴隷はいませんよ」


「な! なんで――いいいい、いや、な、なんのことかな?」


「がはははは……。いるんですわ、兄さんみたいなお客さん。挙動不審だから、すぐにわかるんですよ」


 ぐ! さすがは敏腕プロデューサー。

 どうやら、バレバレらしい。


「リックお兄ちゃん。夜専門の奴隷ってなーに?」


「え? そ、それはだな。……あ、あれだ、ルーナ。夜に子守歌を歌ってくれる奴隷のことだよ」


「ふーん……」


 ルーナは小首を傾げる。

 なんか納得がいっていない様子である。

 もしかして、俺が嘘をついているのバレてる?

 でも、ごめん。

 まだルーナには早すぎるんだ。



 ◆◇◆◇◆



 俺は顔を真っ赤にしながら、しどろもどろに弁解していると、男の叫び声が聞こえた。


 外からだ。

 「まさか――」と、先ほどまで優しげだったボーヤーさんの表情が曇る。

 天幕から出ていった。

 どうやらただならぬ事態が起きたらしい。

 俺もルーナを伴って出ていく。

 ボーヤーさんとともに、別の天幕の中に入っていった。


 そこにいたのは、厳つい禿頭の男。

 そして全身を包帯でグルグル巻きになった少女だった。


 包帯でよく顔が見えないが、おそらくルーナよりはずっと年上だろう。

 所々ピンと包帯からはみ出たブロンド髪は濃く、ルーナのそれとはまた違った美しさがある。

 肌は白く、特徴的だったのが、顔からはみ出た長い耳だった。


 もしかして、エルフという種族かもしれない。


 とても綺麗な種族だとウォルナーさんから聞いた。

 だが、包帯から薄らと見える肌には、ひどい火傷のような跡がある。

 水色の瞳も、まるで汚泥が混ざったように濁っていた。


「ゲルダ、どうしてここに!?」


 ボーヤーさんが尋ねたのは、エルフの奴隷の手を引っ張った厳つい男だった。

 ゲルダという男は、にやりと笑う。


「なにって? 商品を受け取りに来たんだよ」


「ティレルの受け渡しは、3日後のはずだ」


 ボーヤーさんはゲルダを睨む。

 さっきまで俺と和やかに話していた時とは、明らかに違っていた。


「予定が変わったんだよ。うちの顧客が今すぐほしいって言ってきてな。外の馬車で待ってるんだよ」


「今すぐって……。もう顧客を見つけたのか!?」


「オレ様のネットワークを舐めるなよ。超激安価格のエルフっていったら、わんさか飛びついてきたぜ。包帯付き、さらに呪いも付いているって言ったら、逆にそそるとか言ってな。倍の値段を黙って提示してきたよ。世の末だね。変態ばっかりだ」


 ぎゃははははは! 


 ゲルダは下品な笑い声を響かせた。


 ルーナは少し怖くなったのだろう。

 俺の後ろに下がり、服の裾を掴んだ。


「心配するな。可愛がってくれるだろうぜ」


「ボーヤーさん、これって……」


 俺は事情を尋ねる。

 ボーヤーさんは険しい顔のまま事情を話してくれた。


 ティレルは呪い憑きの奴隷エルフだった。

 様々な奴隷商を転々とし、ボーヤーさんのところにやってきた。

 奴隷が同じ奴隷商のところにいられるのは、最大3年間と法律で決められている。

 市場の流動性を高めるためらしい。


「その3年間が過ぎればどうなるんだ?」


「他の奴隷商に売るか、それとも……」


 ボーヤーさんは下を向く。

 その説明を補足したのは、ゲルダという奴隷商だった。


「国に引き渡して、魔導の実験サンプルになるかだ」


「それって――」


「生き残れば幸運ってヤツだな。かといって、放逐したところで運命は一緒だ。いずれくたばるさ。こんな呪い憑きのエルフ」


「ぐっ……」


 ゲルダはティレルの首の巻いた鎖を引っ張る。

 やっと聞いた彼女の声は、重苦しい悲鳴だった。


 ティレルは助けを求めることもない。

 濁った水色の瞳は、まるで涙を絞り尽くしたあとのようだ。

 光はなく、絶望に満ち満ちている。

 己の運命を受け入れているような目だった。


 その彼女を見ながら、俺は「助けてあげたい」と思った。

 何故だかわからない。

 今日、初めて出会った少女に、俺は強く同情していた。


 これが『勇者』の性っていうヤツだろうか。


「ボーヤーさん、俺が彼女を買います」


「兄さんが……? いや、しかし無理だ。交渉の優先権は先に契約したゲルダの方にある」


「でも、このままじゃ。ティレルが可哀想だ」


「わかってる! わかってるんだよ。たった3年間だが、彼女はここにいた。私にとって、ここにいる奴隷は商品であると同時に、家族なんだ。それを手放さなきゃならないなんて――」


 ボーヤーさんはぐっと奥歯を噛んだ。

 この件で、俺以上に心を痛めているのは、ボーヤーさんらしい。

 その彼は出来ないといっている。

 よっぽどのことがなければ、無理なのだろう。


 だったら……。


 せめて……。せめて呪いだけでも解いてあげたい。


 一時でもいい。

 彼女を笑顔にさせたい。

 たとえ、それが俺のエゴであってもだ。


 でも、どうすれば……。


「お兄ちゃん」


 ルーナは俺の服の裾を掴む。


「エルフのお姉ちゃんを助けてあげて」


 懇願した。

 その言葉を聞いた時、俺はすべての疑念を払い飛ばす。

 気がつけば、ティレルの前に立っていた。


 現れた俺を見て、ゲルダは怒声を上げる。


「てめぇ、何をしよってんだ?」


「ティレルの呪いを解く」


 ティレルの方を向き、俺は思考する。


 ステータスが異常に高いからといって、この呪いが解けるわけがない。

 あとはスキル『縛りプレイ』次第だが……。


 俺の言葉を聞き、ゲルダは目を細める。

 黒髪と黒目を見て、何か察したらしい。


「ははーん。お前、噂の外れ勇者だな。はは……。無駄だ、無駄。その呪いは解けないぜ。王都の司祭でも無理だったそうだからな」


「うるせぇ……。黙ってろ。こんな呪い。指先1つで吹(ヽヽヽヽヽヽ)き飛ばしてや(ヽヽヽヽヽヽ)るよ(ヽヽ)


 そう俺が言った瞬間だった。

 いつもの文字が浮かぶ。



 『縛り;呪いを指先1つで吹き飛ばす』を確認しました。

 『縛り』ますか?  Y/N



 俺は呆然とした。

 出来るのか?

 いや、考えている場合じゃない。

 そうだ。俺が出来るのは、『縛る』ことだけだ。


「YESだ」



 確認しました。『縛りプレイ』を開始します。



 その瞬間、頭の中にステータスが浮かび上がった。



  名前    四條 陸 

  年齢    22

  種族    人間

  職業    勇者

 ――――――――――――――

  レベル     1

  攻撃力   580

  防御力   320

  素早さ   320

  スタミナ  140

  状態耐性  810

 ――――――――――――――

  スキル   縛りプレイ

 ――――――――――――――

  現在の縛り 呪いを指先1つで吹き飛ばす

 ――――――――――――――

  称号    ギルドマスター

        呪解マスター



 『状態耐性』が3倍になっていた。

 だが、それ以外の数値は動いていない。

 気になるのは、称号の『呪解マスター』だ。

 おそらくこの称号を得たことによって、状態耐性だけが増幅したのかもしれない。


 これで呪いが解けるのか?

 ええい! ダメもとだ! やってみよう。


 俺はティレルのおでこ付近に指先を近づけた。


 この時、初めて彼女が反応する。

 顎を上げて、「うう……」と呻いた。


「心配するな。軽くコツくだけだから」


 安心させるように笑う。


 そして、俺はティレルのおでこを指で突いた。



 ぶぉぉおおおぉぉぉおおぉぉおぉおぉおぉおぉぉおぉ!!



 瞬間、何か黒い霧のようなものが、ティレルから吐き出されるのだった。


俺「指先ひと~つで~♪ ダウンさ~♪」

呪い「…………」


面白い! 毎秒投稿しろ! 続きが気になる!

と言う方、是非ブクマ・評価お願いします。

作者は結構単純な生物なので、すぐ要望にお応えすると思います。

よろしくお願いします。

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