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縛り勇者の異世界無双 ~腕一本縛りではじまる余裕の異世界攻略~  作者: 延野正行


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第21話 反撃と魔族

 どごおおぉぉぉぉおぉおぉおぉおぉおぉおんんんん!!


 轟音がとどろく。

 けほけほ、と土煙に咽びながら現れたのは、俺だ。


 周囲を見渡す。


 どうやら、王宮の裏手にある庭に出たらしい。

 綺麗に手入れがされた庭に瓦礫が降り注ぎ、まるで戦場のようである。

 その中で、噴水がちょろちょろと呑気な音を立てていた。


「お主、もうちょっと遠慮というのを知らないのか? これでも、余らはお尋ね者なんだぞ」


「俺たちは何もやましいことはしていない。違うか?」


「ほほっ……。はっきり言いおるのぉ」


「悪いのは、魔族だ。だから、ぶっ飛ばす!」


 パチン、拳を打ち鳴らした。


 カタナは手元にないが、俺にはまだ拳がある。

 何より『縛りプレイ』がある!


「王様は隠れていてくれ」


「良かろう。余のことは捨て置け。1発かましてこい!」


「ああ!」


 俺は王を置いて、飛び出す。

 騒ぎを聞きつけた衛士たちが、ぞろぞろと集まってきた。


 こいつらは、魔族に騙されているだけだ。

 傷つけるわけにはいかない。


「いたぞ! 外れ勇者だ!!」

「外れ勇者を捕まえろ!」

「相手は外れ勇者だ! のしちまえ!」


 ぶちっ!


 前言撤回!

 ちょっとお灸を据える必要性があるようだ。


 俺は拳を振り上げる。


「衛士たちを死なない程度に痛めつける!!」



 『縛り;衛士たちを死なない程度に痛めつける』を確認しました。

 『縛り』ますか?  Y/N



 YES!



 確認しました。『縛りプレイ』を開始します。



 ステータスを確認せず、俺は大きく飛び上がった。

 衛士たちの群れに突撃する。


 ゴッ!!


 地面に己の拳を叩きつけた。

 俺は地面を割った。

 大きく陥没する。

 瓦礫と一緒に、衝撃波が衛士たちを襲った。


「「「「ぐわあああああああああああ!!!!」」」」


 衛士たちは吹き飛ばされていく。

 地面に叩きつけられると、気を失った。

 一部意識もある者もいるが、大きく陥没した跡を見て、おののいている。

 完全に戦意を失っていた。


 ふむ。

 どうやら、死者はいないようだ。

 衝撃で気を失っているのが、ほとんどだな。


 いくら王が偽物だったとはいえ、異世界に来たばかりの人間を虐げるのは間違っている。

 ネレムさんや、ウォルナーさんは、そんな素性の俺でも優しくしてくれた。

 こいつらには、そういう心が足りない。

 今回の事件で、大いに反省してもらおう。


 ふん、と俺は鼻を鳴らし、謁見の間へと向かうのだった。



 ◆◇◆◇◆



 謁見の間の大扉をぶち壊す。

 扉は派手な音を立てて、部屋の中で跳ね上がると、赤い絨毯の上に広がった。


 俺は踏み込む。


 薄暗い。

 燭台1つ灯っておらず、カーテンも閉め切られていた。


 ゆっくりと前へと歩いていく。

 俺の靴音だけが妙に響いた。


 誰もいない。


 否――。


 いる……。


 正面だ。


 玉座の前に人影が動いた。

 現れたのは、王だ。

 おそらく偽の王だろう。


 胸元まで伸びた髭は艶があり、恰幅もいい。

 着ている物も豪奢だった。

 真王には申し訳ないが、よっぽど王様としての貫禄がある。

 だが、どことなく冷たい印象は、俺が召喚された当時から変わらなかった。


「またお前か、外れ勇者。とうとう我が国に弓を引くとはな」


「くさい芝居はやめろ。お前が、魔族だということは知ってるぞ」


「ほほう……」


 その時だった。

 偽王の瞳が変わる。

 それは表情が変わったというものではない。

 言葉通り、紫色から赤黒い色へと変色したのだ。


 やはり、爺さんがいった事は本当だったらしい。


 すると、偽王は鼻で笑った。


「それがどうしたというのだ?」


「なに?」


「外れ勇者と、オレ様(ヽヽヽ)の言葉。民はどっちを信じるかな」


「はっ! 関係ないね、そんなこと」


 バチッと拳を打ち鳴らす。


 魔法やスキルがある世界で、証明しろなんていわれても無駄な努力だ。

 裁判をやったところで、俺は勝てないだろう。

 ならば、やることは1つである。


 ぶっ飛ばす!


 とりあえず殴る。

 今までの所業も含めてな。


「野蛮だな」


「勝手に人を召喚して、人の記憶を奪って、さらにスキルに細工したヤツがいうことかよ」


「ほう……。そこまで知っているのか」


「覚悟しろよ、王。いや、偽王(ぎおう)!」


「息巻くのは結構だが、これを見てまだそんなことを言えるかな」



「リックお兄ちゃん!」

「ご主人様……!」



 玉座の横。

 袖の方から現れたのは、ルーナとティレルだった。

 後ろ手に縄で縛られ、兵士に押さえつけられている。

 どうやら、兵士は意識がないらしい。

 虚ろな目が薄暗い謁見の間の中で、ぼうと光っていた。


「ぐっ!」


「おっと……。1歩も動くなよ。動いた瞬間、女たちの首が飛ぶ。お前が如何に素早かろうが、1人ぐらいなら殺せよう」


 その通りだった。

 確かに俺の素早さなら、助けるのは容易い。

 だが、どっちかが死んでしまう。

 たとえ縛ったとしても難しいだろう。


 一か八か……。

 いや、ダメだ。

 もし、どちらかが死んだら……。


 身が竦む。

 俺は完全に動けなくなってしまった。


「ぐははははは! 良い子だ。そのままゆっくりと首をねじ切ってくれる」


 偽王は玉座を立つ。

 ゆっくりと俺の方に歩いてきた。


 その時だった。



「まったく……。勇者も、偽王も詰めが甘いのぉ」



 直後、「うっ!」とうめき声が聞こえる。

 ルーナとティレルの後ろにいた兵士が崩れ落ちた。


 その影から、陽炎のように現れたのは、真王である。


「爺さん!」


「貴様、本物の王か! 何故、生きている!?」


「ほっほっほっ。余には得意技があってな」


「おのれ! かくなる上は!!」


 偽王は手を掲げる。

 炎が渦を巻き、ルーナたちや真王がいる場所に迫った。


 だが、真王は落ち着いていた。

 2人の縄を解くと、そっと肩に手を置く。

 すると、3人は闇に溶け込むように消えてしまった。

 その場所を炎が貫く。

 手応えはない。

 それどころか気配すら感じられなかった。


「なんだ、今のは……」


「余の得意技よ」


 いつの間にか、真王が立っていた。

 ルーナとティレルもいる。


「リックお兄ちゃん!」


 ルーナは抱きついてきた。

 後ろでティレルも、涙を払っている。

 良かった。

 2人とも無事のようだ。


 しかし、一体どうやって?


 俺は顔を上げて、真王を見つめる。

 いつも通り、「ほっほっほっ」と笑ってから、答えた。


「余の得意技よ。すなわち――」



 スキル『気配遮断』



「なっ! スキル!!」


 スキルって確か勇者しか使えないんじゃ。

 いや、ちょっと待て。

 もしかして、真王って。


「爺さん、勇者だったのか!?」


「ふむ。まあ、そういう時もあったかの」


 とぼけるように明後日の方向を向く。

 しかし、俺には1つ疑問があった。


「で、でも……。髪と目が……」


「そりゃあ、年だからな。色は抜け落ちるし、目は濁るものじゃ」


 そういうことか。

 盲点だったぜ。

 まさか勇者が王様をやってるなんて。


「積もる話は後じゃ。どうやら、やっこさん。本気になったようじゃぞ」


 後ろを振り返る。


 直後、偽王は唸りを上げた。

 すると、みるみる身体が膨らんでいく。

 着ているものが一瞬にして弾かれた。

 その下から現れたのは、黒鉄の筋肉。

 さらに鋭い爪に、頭から黒曜の角が伸びていく。


 背中から翼を生やし、玉座の前で大きく広げた。


『があああああああああああああああ!!』


 空気を震わせる。

 俺たちの前に現れたのは、悪魔だった。


「どうやら、ここからがクライマックスじゃ」


「ああ。そのようだな。爺さん、2人を頼む」


「任せておけ」


「リックお兄ちゃん!」


「ん?」


 ルーナは拳を突き出す。

 エメラルドグリーンの瞳で、俺を見つめた。

 はっきりとこう言う。


「勝って! 勇者のお兄ちゃん!!」


 全身が震えた。

 武者震いというヤツだろうか。

 ともかく、俺は奮い立った。

 力が漲る。

 それはどんな縛りよりも、俺を強くした。


「任せろ……!」


 軽くルーナの拳にグータッチする。


 そして、振り返った。

 肩を回す。


 さあ、ぶっ飛ばしてやる!



 Pick up!


  名前    リック

  年齢    22

  種族    人間

  職業    勇者

 ――――――――――――――

  レベル      2

  攻撃力   1280

  防御力    780

  素早さ    470

  スタミナ   700

  状態耐性   810

 ――――――――――――――

  スキル   縛りプレイ

        物体縛り

        居合い Lv5

 ――――――――――――――

  現在の縛り 武器『カタナ』縛り(永続)

 ――――――――――――――

  称号    ギルドマスター

        呪解マスター

        達人 Lv3

 ――――――――――――――

  補正    武器強度  +Lv80

        武器切れ味 +Lv70


いよいよクライマックスです!

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