終幕:夫婦になれど
そして1年後
「掃除終わったの」
明るい声が1軒家に響き渡った。
「すぐやるよ」
後から青年の声が返ってきた。
太郎と花子はめでたく夫婦となっていた。
「それにしても、人使い荒いよな」
太郎は縁側に座っていた。
「あら、誰のことかしら?」
驚いて振り向くと、花子が仁王立ちで立っていた。
「あとは炊事、洗濯…」
「わかったよやるって」
太郎は慌てて立ち上がった。
「待った。肝心な仕事があるでしょ?」
花子は微笑んだ。
「何のことかな?」
足を止めながら、太郎の頬を冷汗が伝った。
「夜のお勤めね」
花子は太郎を見つめた。
「わかったよ」
太郎はがくりと首をうなだれた。
「明日は日曜だから一晩中お願いね」
花子は顔を赤らめた。
「はい・・・」
太郎は既に蛇に睨まれた蛙だった。
(剛に花子を譲ってやるんだったかな・・・)
太郎は心の中でつぶやいた。
「何か不満そうな顔してない?」
花子は怪訝な顔を見せた。
「そんな事ないって」
太郎は平静を装って答えた。
内心では花子の勘の鋭さに驚いていた。
「じゃ飯炊いてくる」
太郎は花子と反対方向へと走り去った。
(やっぱり釣りあわなかったかな…)
太郎は距離をとったのを確認してから呟いた。
ふと玄関を見ると、剛が太郎を見ていた
「のぞきとは趣味が悪いな」
太郎は近づいて、いらだたしげに毒づいた
「ずいぶんやつれたな」
「お前、花子にほれてたよな」
「譲ってくれるって言うのか?」
「そうなんだ、実は鬼嫁…」
「後ろの人に相談した方が良くないか?」
剛はからかうように言った
「誰が鬼嫁ですって?」
花子が腕組みをしてにらんでいた。
「親父の使い思い出した」
剛はそそくさと、逃げて行った
太郎は首をつかまれ、屋敷の中へ消えていった
甘酸っぱい恋の物語。感想などもらえれば嬉しいです