第三幕:見合いの真相
ある晴れた日の午後のこと
太郎は花子に湖に呼び出されました
「剛がプロポーズしてくれたの」
花子は戸惑いながら言いました。
太郎はショックで言葉を失いました。
「どうしたらいいかな?」
花子は上目遣いでそう言いました。
「好きにしろよ」
太郎はおもわず口走ってしまいました。
花子はなぜか浮かない顔をしました
「そんな投げやりな言い方ないでしょ!」
涙ながらに叫ぶと、花子は脱兎の如く飛び出していきました。
日曜日の朝、太郎は家でくつろいでいました。
扉を激しく叩く音がした。
太郎が玄関に出ると、友人が立っていた。
「何だよ朝っぱらから。」
太郎は不機嫌そうに友人を見た。
「なにって、今日は花子のお見合いの日だぞ!」
友人は太郎を睨んだ。
「俺には関係ないだろう。何だよ全く」
太郎は吐き捨てるように言った。
「あいつをほっとくのかよ!あいつはな、脅されてるんだぞ!」
友人は物凄い剣幕で詰め寄った。
「脅しって何の話だよ?」
太郎は不安そうに友人を見た。
「あのボンボンの剛がな。自分と結婚しないとお前の会社を潰すって脅してるんだよ」
友人は声を荒げた。
「聞いてないよ、そんなの!」
太郎は心底驚いた。
「馬鹿野郎!花子はお前が本気で好きだから一緒になりたいんだよ!
同情でなんかなりたくないんだよ!そんなのも分らんのか!」
友人は怒鳴り始めた。
太郎は慌てて花子の家に飛び込みました。
お見合いの真っ最中だった。
「なんだね、君は!」
社長は驚いて叫んだ。
その場の全員の冷たい視線がこっちに向いた。
「花子の彼氏です。お嬢さんをください!」
「おかしいのかね、君は!警察呼ぶぞ!」
「社長と息子さんとで話をさせてください」
太郎ははっきりと言いました。
「話を聞いてたのかね、君は!」
社長は怒った。
「警察へ行ってもかまいませんが…」
太郎は剛を睨んだ。
「父さん、話だけでも聞いておこうよ」
剛は青ざめて言った。
「お前何か・・・」
社長は息子の態度に不安そうな顔をした。
「手短にしてくれよ」
社長は不機嫌そうに太郎を見た。
太郎は脅しの経緯を話した。
「お前は本当にやったのか?」
社長は息子を睨みつけた。
「だって彼女が欲しかっ・・・」
息子が言うが早いか社長の張り手が飛んだ。
「ふざけるな!」
情けないと言わんばかりの目で、社長は息子を見た。
同席の人々は驚いた表情で社長の方を見ていた。
「取り込み中すいませんが…この話はなかったということでよろしいですか?」
太郎はあっさりと言った。
「もちろんだよ・・・家のバカ息子がすまんかったな」
社長はうなだれて言った。
そして社長は同席した人々に頭をこすり付けて詫びを入れていった。
彼らは次々と屋敷を出て行った。
社長と息子、花子、太郎だけが残された。
「では僕はこの辺で…」
太郎はそそくさとその場を立ち去ろうとした。
「君、このことは警察には内密に・・・」
社長は震えながら言った。
「いいですよ、ただ・・・」
太郎は考え込むしぐさを取った。
「なんだね?何でも言ってみたまえ」
社長には先ほどまでも傲慢な態度は微塵もなかった。
むしろ卑屈なまでに縮こまっていた。
「ご子息が手を引くと約束してもらえればそれで十分です」
太郎はきっぱりと言った。
「もちろん、きっちりお灸をすえておくよ」
社長は安堵した表情を見せた。
「親父・・・」
息子は何か言いかけた。
しかし社長は仁王のごとき顔を見て、それ以上言葉が出なかった。
「では、失礼します」
太郎はそういって障子を開けた。
「お父上によろしくな」
社長は弱々しく太郎を見た。
「はい。では御機嫌よう」
太郎はさわやかに言い残して出て行った。
その直後
「ばっかもーーーん!」
豪雷が屋敷じゅうに轟いた