第二幕:涙と無力
「また二人で会ってるのか」
花子を家の窓から眺めながら、太郎はため息をついた。
太郎は村外れのの湖を散歩するのが好きだった。
「剛みたいに金があったらなー。
花子も少しは振り向いてくれるだろうに」
太郎は人気のない湖を眺めてはそう呟いていた。
太郎はだんだん花子が気になってきた。
ある日のこと。太郎はいつものように湖の周りを散歩していた。
そこであの花子を見かけた。
太郎は思い切って声を掛けてみた。
花子も湖が好きで二人は意気投合した。
それからちょくちょく湖で会うようになった。
ただし友達の域を超えるものではなかった。
太郎はもう一歩親しくなれたらと思っていた。
しかし踏み込めない自分ににいらだっていた。
「俺は平凡な男だし。うちの会社も剛の会社にせっつかれる身だしな。
あいつには逆立ちしても勝てんな」
太郎は一人になるとそう呟くのが常だった。
太郎はかなり花子が気になってきた。
夜になると彼女と剛の話している姿を思い出すのだった。
そして一人枕を濡らすのだった。
「俺は平凡な男だ。あの剛に勝てるとは思えない。しかし、悔しい。
彼女を思う気持ちは負けてるとは思えない。
親父もあいつの会社にたびたび呼ばれてるし。
また無理な注文でもされてるんだろうな
花子は自分をどう思っているのだろう。」
そう呟きながら、太郎は何度も夜中に目を覚ますのだった。