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二人の出会い

私が住むこの国アルドラでは一般的には結婚適齢期は13歳から20歳までだとされている。

どの家もより良い相手と結婚するため結婚適齢期に入る前から相手を探し回るのが当たり前で、大体は16歳になる頃には婚約者が見つかっている。

だが私が耳にする中では恋愛結婚をした人など殆どいない。それは当たり前だと私は思う。

貴族にとっての婚約とは家と家の結びつきを強固にしてこの国での立場を強くするものだ。


伯爵家の一人娘として生まれた私は次期当主になることはない。

ならば出来るだけ力を持つ家と婚約して跡継ぎを産む事が私の仕事であり、大切に育ててくれた両親に出来る恩返しなのだろうと幼い頃から理解していた。

同じ年頃の少女たちが絵本やドレスに夢中になる中、そんなことを考え令嬢としての勉学に励む私はさぞ可愛げのない子供だったろう。

一度この話をお母様にしたら泣きそうな顔になって抱きしめてくれたが、なぜそんな顔をされたのか未だに分からない。


そして伯爵令嬢であり、美しいお母様に似ていると評判の私にも縁談の話はそれなりに来ていた。

だが結婚相手などに興味の無い私はそういった話を全て両親に丸投げしていた。

両親に任せていれば余りにも酷い相手と結婚させられる事もないだろうし、家にとって都合の良い相手を選んでくれると思っていたからだ。

だから昨日結婚相手がデュークリス公爵家のマルセル様だと知ったときも、大きく心が揺れることはなかった。

こんな事を言っては大勢の令嬢に恨まれてしまうかもしれないが、私は結婚相手に容姿の良さを求めていないし、条件の良い相手ならば誰でもよかった。

でも、お父様は私になるべく良い相手と結婚して欲しくて頑張ってくれていたのだろう。それはとても嬉しく思う。



今私は婚約者となったマルセル様にお目にかかるためデュークリス公爵家を訪れていた。

向かいの一目で一流品だと分かるソファに優雅に腰掛けるのはデュークリス公爵家現当主であるロベール・デュークリス様。今年で36歳になったロベール公爵は威厳に満ち溢れており、見る者を気後れさせるような風格がある。


「良く来たなロヴラン、そしてユリシア、君も来てくれて嬉しいぞ」

「ここに来るのも久しぶりだな」

「初めましてロベール様、ユリシアです」


軽い口調で言うお父様に対して私は淑女らしく一礼して答える。


「そう固くならなくともいい、君の事はロヴランから良く聞いている。ミレーヌさんに似てとても美しいな」

「そうだろう!」


お父様うるさい。


「ありがとうございます」


お母様に似ていると言われるのは私にとってとても嬉しい褒め言葉だ。


「早速だがマルセルを呼ばせよう、今日は二人の顔合わせのために集まったのだからな」

「はい」


今から私の婚約者となる方が来る。そう思っても緊張はなく、落ち着いてマルセル様の到着を待った。


「失礼します」


コンコン、という軽やかなノック音の後に紡がれた爽やかな声。

ドアを開け現れたのは今迄見た事の無い程の美青年だった。

背は高く均衡の取れた体つき、夜空を写したかのような黒髪に澄み切った碧眼。

顔のパーツ一つ一つが完璧過ぎて何処か冷たい印象を受けるが、それが最早神秘的なまでの美しさを持っていた。


「お久しぶりですロヴラン伯爵、そして初めましてユリシア嬢、デュークリス家長男、マルセル・デュークリスです」


そう言って微笑んだ。確かに微笑んだ、筈だ。


「久しぶりだなマルセル殿。最後に会った時よりとても大きくなったな」


マルセル様に何か違和感を感じていた私はお父様の言葉で意識を引き戻した。


「初めましてマルセル様、ユリシアです。お会い出来てとても嬉しく思います」


マルセル様にも同じように淑女の礼をとる。

確かに街で見かければ思わず振り返る程整った容姿だが、それだけだ。


「ロヴラン伯爵、父上、ユリシア嬢のお時間を少し頂いても構いませんか?」


は?...危ない、思わず口に出すところだった。


「構わんよ。婚約者となった身だ、二人きりで話す事もあるだろう」

「そうだな、それがいい」


父親二人は何処か嬉しそうだ。


「ありがとうございます。じゃあ、行こうかユリシア」


にっこりと笑いながら手を差し出す。

さすがご令嬢達に大人気の公爵様だ。エスコートする姿がとても様になっている。

これが私でない何処かの誰かだったなら歓喜の悲鳴をあげるかもしれないな。

そんなどうでもいい事を考えながら出来るだけ自然に頰笑み手を取った。


「庭を案内しよう。優秀な庭師が手掛けた自慢の場所だよ」


そう言われながら引かれるがままマルセル様の後をついて行くのだった。

読んで頂いてありがとうございます。


たくさん書いたつもりなのに通して読んで見るととても少なく感じます。不思議ですね。

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