3 確認
テーブルの真ん中に全員が見えるようにノートを置いて覗き込むと佑太郎くんの綺麗な字で全員分のステータスが書いてある。
名前もわざわざ聞いてステータス表示とは別に漢字で日本名で書いてある。
私が赤、観月ちゃんが黒、太一くんが青、佑太郎くんが緑で書かれていて固有スキルには黄色の蛍光ペンで分かりやすく線を引いてある。
女子のノートか!
ちなみに全員分佑太郎くんが書いた理由は、太一くんの文字が汚いのは男の子だからまぁ笑えたんだけど、観月ちゃんの文字がミミズが這ったような文字だったからやめた。
数字もダイナミックな感じだった。
たまに本人も分からなくなるらしいダイナミックさなのでノートの所持者である、すでに字の綺麗さが発覚してる佑太郎くんにお願いした。
【名前】サクラ・サエキ(冴木 桜)
【年齢】22
【レベル】1
【筋力】36
【知力】53
【敏捷性】20
【生命力】10
【職業】保育士
【スキル】鑑定* 所持界越え* 亜空間 言語全翻訳 多種コミュニケーション
【称号】異世界からの迷い人 愛の女神の加護
【名前】ミツキ・クラハシ(倉橋 観月)
【年齢】20
【レベル】1
【筋力】580
【知力】42
【敏捷性】631
【生命力】493
【職業】勇者
【スキル】鑑定* 光属性魔法* 火属性魔法
【称号】異世界からの旅人
【名前】タイチ・モチヅキ(望月 太一)
【年齢】19
【レベル】1
【筋力】83
【知力】869
【敏捷性】150
【生命力】30
【職業】魔術師
【スキル】鑑定* 空間魔法* 火属性魔法 水属性魔法 風属性魔法 地属性魔法 雷属性魔法 闇属性魔法 収納
【称号】異世界からの旅人
【名前】ユウタロウ・サトウ(佐藤 佑太郎)
【年齢】16
【レベル】1
【筋力】69
【知力】743
【敏捷性】40
【生命力】26
【職業】治癒術師
【スキル】鑑定* 治癒
【称号】異世界からの旅人
「……冴木さ「いや待って! 確かに全体的にへぼいけど! でもっもごっむーっ!」……いや、まだなにも言ってないし、多分言おうとしてたのと違うし。」
ふぇ?
太一くんの言葉を遮って弁解らしきものを口にししようとしたら口を塞がれた。
異性にこんな風に口を塞がれるなんて経験をしたことがないから、もごもごしてたら唇に当たった太一くんの手の温かさに顔が赤くなっていくのがわかる。
何故赤くなっているのか分からなかったみたいで怪訝そうにされたけど手を離してくれたので落ち着こうと思って太一くんから距離を取る。
観月ちゃんと佑太郎くんの間に座ればよかつた……。
ちなみに観月ちゃんは私の様子を見て察したらしくニヤニヤしている。
くそぅ……察する能力高いな……。
「冴木さんのパラメーターが俺たちと比べると低いのは事実だけど、大事なのはそこじゃなくて。
冴木さんだけ俺たちと明らかに違うことがいくつかある。
1つ目、パラメーターの低さ。
それぞれ職業に関係ありそうなものが3桁あるが冴木さんはない。
まぁ、保育士にどのパラメーターも大して関係ないんじゃないかって話だが。
2つ目、非戦闘職なこと。
保育士が実は戦う保育士さんとかだったら別だが、俺たちの知ってる保育士は戦わないし数値を見る限りはまぁこの世界でも戦わないだろう。
そもそも戦闘に関係ない職業だと分かったから神官長も国王も興味なかったんだろうしな。
そして3つ目、称号だ。
特に称号はおかしい。
愛の女神の加護とやらがついてるのも謎なんだが……俺たちは『異世界からの旅人』なのに1人だけ『異世界からの迷い人』だ。
それら全てを見たうえで俺が立てた仮説が1つ、冴木さんは俺たちの召喚に巻き込まれたんじゃないか?
召喚されるべき人間は本来は3人だけだったんじゃないか?
電車も倉橋先輩が乗った駅から多分閉じ込められた。
俺はこの中だと一番最初にあの車両に乗ったが今思うと不自然なほどあの車両は空いていた。
隣の車両には人が入ってきていたのにあの後ろから2つ目の車両は俺たち以外誰も入ってこなかったんだ。
冴木さんが乗った駅の1つ手前はホーム後方が改札口側だったにも関わらず、だ。」
「じゃ、じゃあなんで桜さんだけ電車に乗ることが出来たのかって話になりませんか……?」
「そう、だから仮説。
冴木さんが乗ってきた謎は解明されない。
たまたま迷い込んだ、としか思えないかな……迷い人だし。
1人だけ非戦闘職なことと称号が迷い人だからそうなんじゃないかって思っただけで確かめる方法はないし、ここにいる事実は変えられない。
どうしたって日本人……いや、地球人は俺たち4人しかいないって事実はかわんねぇよ。」
巻き込まれ、かぁ……
ありえない話ではないよねぇ、私だけ職業本当おかしいもんね……保育士ってなんだよ、保育士(笑)だよ、まじで。
「まぁ……私の待遇がどうなるかは分かんないし、ここを出て行くにしてもある程度はここで情報を集めた方がいいと思うんだよね。
魔王が本当にいたとしてもいなかったとしても、このままだと帰れないし、この世界のことも何も知らない。
今のまま外に出ても本当に戦えるのかも分からな……ってあれ?
そういえば皆がいなくなった後に幽霊みたいな人が出てきて話しかけられた。」
なんか色々いっぱいいっぱいで1人になったときのこと忘れてた。
「あたしたちが消えた後すぐに来なかったのはその人と話してたから?」
「3人が消えちゃった後に1人で怖くなっちゃって泣いちゃってたら、なんか声が聞こえて顔を上げたら透けた綺麗な女の人が目の前にいたの。
なんて言ってたかな……助けてあげられなくてごめんとか、巻き込まれたとか、せめて愛される力をーとか……
あ、力が弱くて助けられないみたいな感じで言ってた気がする?
話したっていうか、一方的に話しかけられて気付いたら意識失ってここにいた。」
「なるほど?
綺麗な幽霊みたいに透けた女の人ねぇ……。
まぁでも巻き込まれたのは確実なのかな。」
「地球の女神様とか……ですかね?
愛される力をくれるとかだと称号にもある愛の女神……ヴィーナスとか?」
うーん、綺麗だったしありえる。
でも私はそれ聞くと某セーラー服の戦士を思い出しちゃうから、髪の色オレンジじゃなくて黒だったよ、と言いたい。
けど絶対佑太郎くんに伝わらないからやめとく。
「まぁ調べることすら出来ないし、それは置いとこうよ!
巻き込まれたもなにもあたしたちだって同じようなもんじゃん?
きたくて来たわけじゃないんだからさ。
愛される力を桜がもらっているなら悪いものではないしさ、とりあえずこれからどうするか考えよう。」
桜ちゃんだけへっぽこです。
次回予告
『桜ちゃんが役立たずから脱却!』