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異世界保育士さん  作者: なの
1.プロローグ
4/23

4 挨拶

「な、なにこれ……?」


 言葉を発したのは自分だったか他の誰かだったか。全員の言葉を代弁したかのように思わず溢れてしまったというような誰かの呆然とした呟きが聞こえる。


 外が真っ暗で前方後方どちらの車両もないとか、どうみても異常事態。


 無言で立ち上がった女の子は椅子に膝を立てて窓の外を上下左右見える範囲覗き込む。そして次に後方の車両の扉を覗き込む。効率を考えたのか少しでも動きたかったのか、同じように私服の少年が前方の車両を見に行く。


「なんも見えないですね。真っ暗っていうか、真っ黒って感じかも。」


「前の車両の方もそんな感じ。」


 なんとなく窓は開くのだろうかと思って試しにガタガタしてみても開かなかったが、他の全員がギョッとしたように慌てて声をかけてきた。


「ちょっとちょっとおねーさん!?」

「ちょ、開けるのは流石に不味くないか!?」

「なっ、何かあるかもしれないから危ないかもしれないですよ!?」


 赤メッシュちゃん、私服男子、制服男子の順で全員に怒られてしゅんとしてしまった。だって開くのかなって思っちゃったから……。


「……とりあえず状況打破するためにも落ち着くのが必要な気がするし、近くに座って自己紹介でもしません?」


 私の予想だにしてなかったであろう動きにも苦笑しながら妥当だと思える提案をしてくる女の子。

 仕切るの向いてないので仕切れるタイプの子がいてくれてよかった。


 男の子たちはあんまり向いてなさそうだもんね。

 片やちょっとヘタレ感ある男子高校生、どうみても一番年下で仕切るのには向いてない。

 片やあまり喋らなさそうな雰囲気のある少し目つき悪い男子。いや、目つき関係ないか。


 うん、よかった。


 全員うなづいて車両の真ん中あたりの椅子に対面で座る。無意識か男女で別れたので一つ席を空けて隣は赤メッシュちゃんで前には高校生、斜め前には私服男子という感じ。


「じゃあ言い出しっぺということであたしから。

 倉橋観月、R大2年の20歳。あー趣味は見た目で分かるかもだけどバンド、ボーカルしてます。」


「……望月太一、俺もR大。まだ1年なので後輩のようですが。趣味というか特技はバスケ。」


 おお、まさかの同じ大学の子。知り合いじゃないみたいだけど、なんかちょっと気持ち的に楽だね、それは。

 ていうかR大って結構頭いいところで私じゃあ絶対行けないわ。


「えぇっ!? 望月太一ってK大附属の望月太一先輩ですか!?」


「お前俺のこと知ってるのか。」


「知ってるも何も! 僕たまたま友達に連れて行かれたバスケの試合で見た貴方のプレイに憧れてバスケ始めたんです! 貴方が通ってた学校に行きたくてK大附属に入学したくらいで……!

 怪我して引退したって聞いた時本当にびっくりして……。

 って、あっ、すいません、興奮してしまいました……。

 僕はK大附属高校1年佐藤佑太郎です。先月16歳になりました。」


 ぺこりと頭を下げる制服男子改めて佐藤佑太郎くん。

 可愛い。


 が、やばい。年齢がどんどん下がっててとても年齢を言いたくない状況になってきた。

 しかもそれぞれなんかしらの繋がりがあるけど私には全くないっていう……。

 どうみても次は貴女の番ですよって視線がざくざくと刺さる……。


「うー……みんな学生って自己紹介しにくいよ……


 冴木桜、22歳の保育士、です……。趣味はー……うーん! 子供達と戯れること……かなぁ?」


 しかも困ったことにこれといった趣味がない! 子供達にすりすりはぁはぁするくらい……かな……でもそんなこと言えないからオブラートに包んで見たけれど趣味といえない気がする。

 基本的に器用貧乏で特化した特技っていうものがないし、浅く広くなんでも楽しんじゃうんだよね……。


「ぶはっ、子供と戯れるのって保育士なら仕事のうちじゃないですか、それ。ははっ、仕事中毒。」


 何故か笑われた。解せぬ。


「あはっ、ごめんなさい笑ってしまって。

 とりあえずあたしのことは名前で呼んでください。あ、君たちもね。


 で、一番上じゃないのにいうのもなんだけど、敬語やめちゃっていいかな。

 見た目でなんとなく分かるかもしれないんだけどさ、敬語苦手なんだよね~。

 みんなの名前も呼び捨てしていいかな? 冴木さんのことも。」


「あ、私も敬語なくていいよ。

 名前も全然桜って呼んでくれて構わないよー。みんなのことも名前で呼んでいいかな? えっと、観月ちゃんと太一くんと佑太郎くんって呼んでいい?」


 軽く小首を傾げて聞いてみると観月ちゃんは苦笑しながら、太一くんは無表情だけとしっかりこちらを見ながら、佑太郎くんは顔を赤くしながら頷いてくれた。

 どうやら観月ちゃんにはわざと小首を傾げたことはばれたご様子。

 アイドルみたいに可愛くはないけどクラスで上位かなーってくらいには可愛らしいお顔なはずなので、最大限に可愛く見せなきゃ人生損だと思ってるからわざと傾げてしまう。

 とはいっても既に無意識にやってるからやった後にあ、今傾げたなーって思う程度なんだけどね。

 まぁ、そんなことしてるのに彼氏できたことないけどさ……無駄な動きだよね。


「は、はい。では僕は太一先輩、観月さん、桜さん、と呼ばせてください……。

 敬語は……年も少し離れてますし……と、とりあえず慣れるまでこのままで……」


「俺は苗字のが楽なんで冴木さん、倉橋先輩、佐藤、と。」


 歩み寄る気はあまり無さそうな無表情キャラっぽい見た目をしてるけど無口なわけじゃないんだなぁ。

 普通に喋る……。やっぱりむっすりしてる無口キャラは二次元のみの代物なのか。


 ちなみに太一くんも佑太郎くんもイケメンだからイケメンの知り合いができたことにこんな状況なから少し喜んでしまう。

 太一くんは少し目つき悪いうえに無表情だからかちょっと怖めのクール系イケメン。

 佑太郎くんはイケメンっていうかまだ幼いからか可愛い系でワンコっぽい。あれだ、年上のお姉様から可愛がられる感じの子。

 あ、ちなみに観月ちゃんは女の子だけどキリッとしたイケメンです。

 うん、女の子だっていうのは見れば分かるんだけど、なんか雰囲気がイケメンだわ。


 こんな状況じゃなければ……ウハウハな逆ハーレムなんだけどなぁ。







次回予告

『フハハハハ!無表情キャラだと思ったか!それは罠だ!!』

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