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異世界保育士さん  作者: なの
2.異世界召喚
18/23

8 日記 - 2

『召喚11日目


 水周りの次は他に何かないのかと催促され始めた。

 一般人にそんな知識を求められても正直困る。

 俺はバスケットボールプレイヤーであって職人じゃない。


 観月の父親が大工だったから少しだけある知識を言ってみる。

 水道設備の方もそうだったんだが、俺はそこまで詳しく言ってないのによくあそこまで本にできるな。

 専門的になりすぎて俺はもう分からないレベルの本になってた。

 木の釘を使わないでいい組み立て方とかしかわからん。

 あぁ敏腕DASH。』




『召喚13日目


 毎日知識を求めに書記官のようなやつらが部屋に訪ねてくる。

 しつこい。

 お前らそんなにいろんな種類の専門知識あんのかよ、ないだろ! と言ってやりたい。

 だが我慢だ。

 出来る限り感情をさらけ出さないでいたい。


 全然思い浮かばなかったから観月の好きだった料理のレシピと料理のさしすせそが重要だぞって言っといた。

 さしすせそってなんですか! ってしつこかった。

 余計なことをいったが、これで醤油とか味噌とか作ってくれないかな。


 これまた敏腕DASHからの知識の流用だ。


(追記 適した豆が今のところ見つかっていないから味噌や醤油までの道のりは遠い。)


 材料の名前が違うのが面倒くさかったが一応こういうやつ、とそれぞれの食材の説明はしといた。

 12日間で食べたことある食材とかだと楽だったなぁ。

 とりあえずオークの肉はただの豚肉の味だった。

 普通に美味かったから観月にも食べさせてあげたい。』



『14日目


 本当にキレそう。我慢だ俺。

 もう早く諦めてもらえるようにいらない知識であろう「動物と仲良くなる方法」という本を書かせた。

 しかもイヌ編とネコ編の2種類だ。


 ちなみに俺はイヌ派だ。

 これでもう俺に役立つ知識はないと分かるだろう。』




『15日目


 予想どおりこなかった。

 俺の勝ちだ。』



『30日目


 この世界に来てもう一ヶ月になる。

 魔王が復活して魔物が増加していると言っていたはずだが魔物退治に連れて行かれることはない。

 俺が見る魔物は専ら食材として料理されてくるやつだけだ。


「勇者様の安全のために訓練をして強化してから」とか言われたが正直城の兵士が50人まとめてきても勝てる自信があるからなぁ。

 一対一も誰にも負けないくらいだから魔物なんて本当は大量発生してないんじゃないかと思う。


 戦争の道具あたりが濃厚だ。』




『41日目


 最近気付いたことがある。

 怪我が異常な速度で回復していく。

 勇者特典なのかなんなのか。

 そして元から濃い方ではなかったが、髭が全く生えてこない。

 剃るのは面倒くさかったからそれ自体は嬉しいのだが何故だろうかと考えた。


 まだ41日だから分からないが、老化が遅くなっているのではないかといつ考えに落ち着いた。


 書物から得た知識によるとこの世界は獣人や亜人がいる。

 寿命も種族によって違うが、この世界では魔力によって変わるらしい。


 人から検知できる量と比べてみると俺の魔力は他の人の何十倍もあるっぽいから相当長生きなのかもしれない。

 異世界特典か、俺がたまたまなのか真相はわからないな。

 寿命が伸びた分老化や毛の成長なんかも遅いのかもしれない。怪我の治りが早い理由は分からないが。


 まさか1人でこんなところで長く生きていかなければいけないとか。

 寂しいなぁ。』




『56日目


 ついにきた、予想していた通り戦争だ。

 もちろんそんな戦争の道具なんてなってやるつもりはない。

 知識もだいぶ手に入れたし、金銭面も貴族たちの貢物があるからそれを持って逃げよう。

 幸い収納魔法があるから荷物は問題ない。

 ……うん、人を戦争の道具にするような国なんだもんな、家財も趣味のいいやつをいただいていこう。


 勇者だからな。

 観月のやってたゲームでは部屋の中を漁るのは当然だったしな。


 俺何回観月のことを書くのだろうか。

 家族よりも会いたいなんて、やっぱりそういう感じなのだろうか。』




『57日目


 もう時間がないので今日この城を抜け出す。

 あと数日したら出兵するらしい。


 改めて読み返してみると観月観月書きすぎて気恥ずかしいが、俺が調べたことが簡単にまとめてあったりするのでこのノートを置いていこうと思う。


 全部日本語で書いてあるからこの世界の人間に読まれることはない。

 万が一俺のように召喚される人間がいたら役立てて欲しいと思う。

 クソみたいな王女がいるこの国ならまたやると思うから。


 書庫の立ち入り禁止区域の二層目にコッソリとしまっておこう。

 きっと今これを読んでる君はそれを見つけたのだろう。

 書庫には鍵しかついてないから侵入は簡単だっただろう?


 俺はこれからエドモン・ダンテスという偽名を使って冒険者として生活していくつもりだ。

「モンテ・クリスト伯」の主人公の名前だな。

 勝手に召喚されて……復讐をすることがあるだろうか……。


 何かあったら俺を訪ねてくれて構わない。

 冒険者ギルドというものがあるらしいからそこに登録しようと思っている。

 世界中どこでもギルドがあるそうで連絡は簡単に取れるという話だから、むしろ訪ねてきてくれると嬉しい。


 エドモン・ダンテスだぞ、忘れるなよ!

 ちなみに神崎貴樹という名も覚えておいてくれると嬉しい。きっともう誰にも呼ばれない名前なはずだから、会えたら読んでくれると嬉しい。

 彼女でも出来たら嬉しいが、寿命が違すぎるし観月よりも好きになれる人はいないだろうからな……ってまた観月って書いてる。

 悪いな、名も知らぬ閲覧者君。


 では君といつか会えることを楽しみにしている。


 ダリア歴853年 9月 3日』








次回予告『自分のことが書いてある日記って恥ずかしいよね、うん。』

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