6 侵入 - 2
太一くんの声にハッとして顔を上げると結界の薄い膜に手を伸ばしていた。
一重目には触れると電流が流れる結界。
触れる手前で手を止めて雷魔法を同じ量の魔力を流して術者の上書きをするらしい。
少なくても干渉できないし多くても術者に感知されてしまうらしく上書き解除は繊細な作業となるらしい。
細かいことは魔法が使えないから分からないけど、多分魔法が使えたとしても同じことをやれって言われても不器用な私には無理な気がする。
「よし……まずは1つ。」
後ろでハラハラと眺めていると一瞬黄色く光ったと思ったら薄い空気の膜のようなものが消えた。
術者の権限の上書きが成功したらしく、ほっと息をつく。
話しかけたり触れた瞬間に集中を切らしてしまうかもしれないのでやっている最中は太一くんの後ろで無言で見つめるくらいしかできない。
太一くんが調べてみた結果、どうやら二重目の結界は触れると呪いが発動するものらしい。
「呪いっていうか、幻覚を見させられるって感じか? うん、ラリっちゃうっぽい。」
ラリっちゃうっぽいって……結果を見ると怖いことなはずなのにあっけらかんと言われると……なんだかなぁ。
どうやら二重目の結界は闇属性の魔法らしいけど、太一くんの一番使い勝手のいい魔法が実は闇属性魔法らしく簡単簡単と口笛を吹いている。
闇魔法はイメージ通りの魔法らしく、魔法の効果とか聞いちゃったあとに得意とかニヤニヤしながら言われるとすっごい外道っぽいからやめようね。
「2つ目っと。」
一重目よりも実にアッサリと黒く光って空気の膜は消えた。
「え、もう終わったの?」
「あぁ。言っただろ? 闇属性は得意だって。」
だからニヤニヤするのやめなさい。無表情はどこにいった!?
良いことだけどっ、最近毎日生き生きとしてるね、君は!
「んじゃ、最後だな。
今度は……ん? ここにきて風魔法?
あぁ……なるほどな。
触れると風魔法で鎌鼬を起こしたうえに隠してある魔道具に風の振動が伝わり警報音が鳴り響く、ってか。
先のでラリってたらどうしようもないだろうなぁ。
1つ目の電流が意識を失わない程度なのはそれでか。イケると油断させて落とすとか。」
そう言いながらクツクツと笑う太一くんの腹は真っ黒だった。
でも、なるほどねぇ……。
死なない程度だから解除しないで無理矢理突破しようとすると2つ目の闇魔法に引っかかるのかぁ。
闇属性魔法の適性がある人って少ないらしいから万が一1つ目を解除されてしまってもやっぱり引っかかると。
よく考えてるなぁ……。
太一くん曰く魔力の波長が同じだから結界全部同じ人が施したもの、らしいけど……闇魔法使える人って性格悪いのかなぁ……。
ジッと太一くんを見つめてしまうのは仕方ないよね。
今のところ第一印象よりも感情の起伏があることが分かって良い、とは思うけど……同時に太一くんの腹黒さがどんどん見えてきているよ。
お姉さんは心配です。
二次元の腹黒は作者の好物ですムシャァ
次回予告『ミミズ語と日本語』




