6 侵入 - 1
侵入するのは私と太一くんの2人だ。
私は読む係で太一くんは侵入係。
私や佑太郎くんだと部屋の前にいる護衛を撒けない等侵入に不備があるし私以外だと勉強してない文字で読めない可能性がある。
私が読むために持ち出しをしなければいけないことを考えると無駄に往復することになる。
持ち出すにしても本に持ち出し防止用魔法でもかかってたら解除出来るのも太一くんだけだし、私がその場で読めば解除する必要もない。
なので2人で侵入することは初めから決まっていた。
まぁ掻っ払ってく可能性は無きにしも非ずなんだけどね。
あ、うん、侵入すること自体も立入禁止区域があることを知った時には決まってました。
だって王族や上層部しか読めない本とか読んでくださいって言ってるようなもんだよね?
何か隠してますって言ってるようなもんじゃない?
私たちの良心は召喚されたときに電車内に落としてきちゃったみたいだから仕方ない。
ちなみに侵入して本を読むって言い出したのは私。
それにすぐ賛成したのは観月ちゃん。
ちょっと考えたあとに「結界なんかがあっても俺の魔法で上書き解除すれば侵入ができるんじゃないか?」って答えたのが太一くん。
良心が残っていて反対したのが佑太郎くん。
『いきなり勝手に召喚されて言うこと聞いて人殺しさせられる(かもしれない)くらいなら真実をしっかり見て自分で行動したい』って太一くんが言ったら良心をポイ捨てしたのも佑太郎くん。
我ら勇者様御一行が『正義』なのだよ、キミィ。
動きとしては太一くんが私の部屋まで転移して迎えにきてくれ、私を連れて転移して書庫の前に出る。そして歩いて普通に入って立入禁止区域に行く、と。
なんか太一くんが調べてみたら書庫の中は魔力探知の結界が強固にかかっているらしくて魔法で侵入するとバレるらしく、警報がなるので歩いて入らないといけないらしい。
何故か歩いて入る分には深夜だろうが全く問題ないらしい。
魔力感知はするけど書庫内に侵入することは簡単に可能。
予定通り行動し、地味に広くて疲れる書庫を奥に奥に進んでいくと見覚えのある立入禁止区域一層目の扉が見えた。
扉の鍵を太一くんが土魔法で複製してアッサリ開ける。
何でか図書室全体には探知の魔法があるのに立入禁止区域一層目の扉はヘアピンとかでガチャガチャできそうなタイプの原始的な鍵。何故。
なんなんだろうこのアンバランスさは。
一層目の扉を開けて更に進むと二層目の扉が見えた。
その扉自体はなんの変哲もない一層目と同じ鍵付きの扉だったので鍵穴に合わせて土魔法で鍵を作って開ける。
扉の向こうには禁書扱いの本が……と思っていたのに開けて見えたのは魔法で出来た膜のようなもの。
流石にただの鍵だけで終わりってことはないらしい。
けどこの厳重な感じがますます怪しいよね。
「やっぱりあれだけじゃなかったか。
まぁこれくらいしてくれないと俺いる意味もないからな。
んじゃ、結界に干渉してバレないように上書きして解除って感じか?
結界は全部で三重って感じか? ……はんっチョロいな。
一応言っとくけどバレたら打ち合わせ通り即逃げるからな、俺から離れるなよ。」
失敗したときは太一くんの転位魔法を使って佑太郎くんと観月ちゃんを回収したのちそのまま王宮からおさらばすることが決まってる。
ちなみに資金は勇者様御一行もお仕事扱いで給料とかなんとかで先日少しもらったところだ。
城にいる間の物資はなんでも支給されてるから、市井にでかける際にでもってもらったけど出入り許可は今のところまだ出ていない。
何のためにくれたんだよこの金。
あ、ちなみに単位はゼニーで
1ゼニー=石貨
10ゼニー=銅貨
100ゼニー=銀貨
1,000ゼニー=金貨
10,000ゼニー=硬貨
100,000ゼニー=虹貨
1,000,000ゼニー=黒貨
となる。
硬貨はダイヤモンドみたいな鉱石っぽい貨幣で、綺麗な見た目をしてるけどめちゃくちゃ硬くて傷もつかない凄いやつらしい。
そのくせ貨幣価値は上から三番目っていう微妙な位置。
あとは名前の通りの色をしている。
虹貨が虹色っていうよりもテカリ具合とかがもう玉虫色にしか見えない。玉虫貨に改名するべきだよ、これ。
一月の給料としては騎士が硬貨2枚、お城のメイドさんたちら硬貨1枚、一般の街の人たちだと大体金貨8枚くらい、らしい。
ちなみに私たちがもらったのは硬貨2枚、金貨5枚、銀貨10枚の26,000ゼニーだ。
今回は初めてだから買い物しやすいようにバラをくれただけらしく、次からは硬貨2枚らしい。
なんていうか、勇者様給料少なくない?
異世界から呼び出されたのに騎士と同じなの? 特別待遇ないわけ? もうっ……。
「じゃ、始めるぞ。」
次回予告『その笑い方やめなさいねっ』