1 起床
ピピピピッピピピピッピピピピッ
んー……
ピピピピッピピピピッピピピピッ
あーアラーム止めなきゃぁ~……
ピピピピッピピピピッピピピピッ
「桜うるさぁい!」
「ひゃあっ!?」
バタンっと開いたドアが勢いよく壁に当たって壊れるのではないかというような大きな音と聞き覚えのある怒っているような大きな声が聞こえて一気に微睡みから覚醒する。
大きな声に驚いてなのか、長年染み付いた条件反射なのか……体を大きく跳ねて飛び起きる。
ピピピピッピピピピッピピピピッ
「あ、椿ちゃん……おはよう……?」
「おはよう……ってそうじゃなくて! このうるさいアラームをいますぐ止めて!
なんでそんなにデカイ音のものを枕の下に入れてるのにすぐ止めないの!? うるさくないの!?」
スッとスマホを操作すると鳴り響いていた大音量の電子音が止まり静かになる8畳の和室……うん、毎朝目にする普段通りの光景、私の部屋だ。一つだけ違うのは目の前に見える双子の妹である椿ちゃんだけだろう。そんな彼女は大層お怒りのご様子。血圧上がっちゃうよ。
「うーん……そう言われてもなぁ……?
遠くの方でアラームがなってるのは分かるから止めなきゃなあ、っていう気持ちはあるんだけどね?
どうしても眠気が勝っちゃうんだよねぇ。『あぁ、ダメだ〜ねむ〜い、腕があがらなぁ〜い……』って。」
寝起きの悪い私はスマホの音量を最大にして枕の下に入れてアラームをセットしないと全く気付かずにひたすら眠り続ける。今でもシカトしちゃったりはするけれど、確実に前よりは起きるようになっている。
昔は目覚まし時計を使っていたけれど、ヘッドボードやサイドボードなどがないために近くに時計を置ける場所がなかったのでちょっと離れた机に置いていた。
目覚ましが鳴り出しても動くのが嫌で、ひたすらシカトしていたらついに耐えきれなくなったのか椿ちゃんにブチ切れられて使用禁止にされてしまった。せめて枕元に置けるものを使え、と。
まぁ結局はスマホでもこうやって怒られてるんだけどね。
「もー……明日もまたすぐに止めなかったら桜にはこの子抱っこさせてあげないからね!? 一生!」
「ちょっと罰重くない!?」
椿ちゃんの言うこの子とは彼女のお腹の中にいる赤ちゃんのことで、保育士をするほど子供が好きな私には妹の子供という絶対可愛いであろう赤ん坊が抱けないなんて拷問に近い。
減刑を求めたところ睨まれたうえにちゃんと起きて止めればいいと怒られてしまったのでしゅんとする。
椿ちゃんと私は二卵性の双子だ。
椿ちゃんはすらっとした美人のお母さんに似てキリッとした顔立ちの綺麗系。
私はちょこっとお腹が出ているけれど優しい笑顔のお父さんに似てほんわか系って感じで可愛い系の顔立ちをしている。
名前も椿と桜だからそれぞれの雰囲気とイメージが合うので良かった。これが逆だったら違和感がある気がするもんね。自分たちの名前だからか椿も桜もどっちも好きな花だ。
「全く……こんなんじゃいつまでたっても結婚どころか彼氏すら出来ないよ?」
現在22歳の私たち。
彼氏いない歴=年齢の私と、20歳になってすぐに中学の時から付き合ってた人と結婚した椿ちゃん。
この差はなんなんだろう……同じ日に生まれた命を分け合っている双子なのにっ……!
片や結婚2年目のラブラブの妊婦、片や彼氏いない歴史=年齢の私! ……ちょっと寂しい。
ちなみに椿ちゃんのお相手は3歳年上で、高卒で実家の精肉店を継いでいる近所のお兄さん。
お父さんみたいにほんわかした人だけど背も高いしいつも優しく椿ちゃんをリードしてる身も心もイケメンな完璧な人だ。うちのお父さんにも身長分けてあげて?
ちなみに椿ちゃんたちは今の年齢を考えればわかると思うけど決してでき婚ではない。普通に恋愛結婚をしてからの愛の結晶だ。
あと半月もしたら産まれるので出産のために昨日から実家に帰ってきている。
そして数年ぶりの私の毎朝恒例アラーム音にクレームをつけにきたのだろう。昔から椿ちゃんの仕事だったもんね。お母さんなんてもうシカトだからね。お父さんは仕事が朝早いので目覚まし被害者にはならない。休みの日は困った顔しながら優しく起こしてくれる。ちなみにスマホの操作はできないけれどアラームの止め方はすぐに覚えてた。
そして実家暮らしの私は毎日1時間かけて仕事場の保育園に通っている。一人暮らしをしない理由は単純明快で、1人で起きられる気がしないから、だ。
「結婚ねぇ……。いつかはしたいと思うけどまだ22歳だし気にしなくていいじゃない? 今は仕事楽しいし。子供達が可愛くって仕方ないよ!」
「まぁ私は確実に早い方だし気にする必要はないんだけどね……。結婚報告したときは皆にでき婚扱いされたしね。あんた達と同じにすんなって感じだわ。
でも桜はずっと彼氏もいないし……結婚とは言わなくても彼氏くらいそろそろ考えてもいいと思うけどなぁ……せっかく可愛いのに……色々残念すぎるわ……」
そういって苦笑する。
まぁ20歳で結婚するとでき婚って思われちゃうのも仕方ないよねぇ。何を隠そう私もでき婚で結婚が早まったのかと思った1人だし。
ていうか残念とか酷くない? どのへんがですか……ちょっと人より小さいものが好きなで子供達に突っぱねられるくらい頬ずりしたり、ひたすらむちむちのお手手を触り続けたり、ぷりんと出てるお尻にかじりついたりするところですかね?
「ってそういえばなんで今日こんなにアラーム早いの? いつも休みの日って昼頃まで寝てなかったっけ?」
「あっ、そうだった!
今日は仲の良い保育園の先生たちと園の近くに新しくできた人気のカフェにいく約束してるから早くに集合なんだった!」
「あぁ、なんか前に言ってたやつね。
そこのカフェ私も行きたいのよね……でも流石にこの時期にわざわざ混んでるところに行く勇気はないわね……」
流石に出産間際の臨月の妊婦を連れ回したくないし何かあったら嫌なのでやめてください。
閲覧ありがとうございます。
ゆっくりまったり投稿していきます。
他作品と同時進行ですので不定期更新です。
せめて日本は離れた方がいいかなと思ったので5話までは一気に投稿します。
これからよろしくお願いします。
次回予告
『森ガールは男ウケが悪い。』です。
二話は予告し辛い内容でした……(内容がないともいう)