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真似っこ

「ルミお疲れ。ごめんね、いつもこの時間に帰らせてもらって」

「なに言ってるのよ。それより早くお迎えに行ってやりな」

「うん」

「そう言えば理沙、車の運転はなれた?」

「うん、ペーパードライバー講習、受けてよかったよ!」

「ふーん」

「じゃあ、あと御願いね」

「うん、お疲れ」


そして私は、春風の待つ保育所に急いだ。もちろんBMW で!

保育所は白山にある。意外とすんなり見つかったけど、ちょっと保育料が高いのがたまにきず。

「こんにちわ、龍崎です」

「春風ちゃーん、ママよー!」

「マーマー」

「春風!」

春風は、私の姿を見ると、ちょっとはにかんだような笑顔をみせ、私の腕に飛び込んできた。

「春風、おりこうさんに出来ましたか?」

「うん」

「おりこうでしたよ。それに言葉も大分はっきりしてきましたね」

「そうですか。じゃあ、先生にバイバイは・・」

「バイー、バイー」

「はい、バイバイ。また明日ね!」

「ありがとうございました」


家に帰っても元気いっぱいの春風。

しばらくすると、駿が帰ってきた。

「ただいまー」

「お帰りー」

「ん?・・にーに!」

駿に飛びつく春風。

「駿、おやつあるよ!手を洗ってねー」

「はあーい!」

「あーい!」

「春風もあーい!だってさ」

「今日ね、保育所の先生に、おしゃべりが上手になってきましたねって言われたんだ」

「ふーん」

「それと、あとでパパを車でお迎えに行こうね!」

「はーい」

「あーい!」

私が車を使うようになって、真司さんの帰りは必然的に電車となっている。


そして

「理沙ママ、車の運転上手になったの?」

「うん、この間車の運転を習うところに行って、練習してきたからね」

「そうなんだ」

「春風がいるからね、車で移動した方が便利でしょ!」

「うん」

「さあ、着いたわよ」

「パパ待ってるかなあ・・」


クリニックの入り口を入ると、仕事は終り、受付で皆、談笑しているところだった。もちろんそこには真司さんも。

「こんにちわー!」

「あっ!駿くん。久しぶり」

「ホント。また背が伸びたんじゃない!」

「そしてこっちは春風ちゃんだ!」

「うわ、可愛いー!」

「わざわざごめんね、迎えに来てもらっちゃって」

「あっ!パーパー」

「おう、春風!」

春風はしっかりとした足取りでパパのもとへ。そして、脚にしがみついている。

「春風ちゃん、パパが大好きみたいですね!」

「ええ、まあ・・」

その時、あの音が奥の診察室から聞こえてきた。

キーン!

「あれ?まだ終わってなかったの」

「ああ、院長の知り合いの○○さんだ。終わるぎりぎりに電話があってね」

「そう」

○○さんのよくつかう手ね!


私たちは、この音にはもう慣れっこだけど、ほとんどの人は不快に思ってしまうのだろう。

でももう一人、この音がお気に入りの人物がいた。春風だ!

「あうー、あうー!」

パパに抱っこされている春風。両手をふって大喜び!

「あれ、春風ちゃん、このキーンって音が好きなの?」

「うん、喜んでるわ!」

「きっとママのお腹の中でいつも聞いてたからかも」

「ああ、なるほどね」

「ちなみに駿くんは、この音好き?」

「僕は嫌い!」

「だよね」

「アハハッ・・」


「ねえ駿くん、駿くんは春風ちゃんになんて呼ばれてるの?」って瑞希ちゃん。

「僕はね・・」

「にーに!」

「おっ、春風ちゃん、すごーい!」

「あれ?そう言えばルミはもう帰ったの」

「ええ。多分デートだと思いますよ!」

「あっそう」

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「ええ」

「えー、もう行っちゃうのー春風ちゃーん」

「千穂ちゃん!?」

「春風ちゃん、また遊びに来てね!駿くんもね」

「はーい」

「あーい!」

「あーい!だって・・あー私も早く赤ちゃん欲しくなっちゃったな」

「それじゃあお先に」

「春風、バイバイは」

「バイー!」

「駿くん、バイバイ!」

「バイバイ」


そして私たちはBMW に乗り込んだ。運転はもちろん真司さん。


「山崎さん、すごく急いでたみたいだったなあ」

「えっ、ルミが?」

「夕方頃だったかな、何か考え事でもしてるような感じだったけど」

「そう、何かあったのかな?ちょっと電話してみようかな」

しかし、ルミは電話には出てくれなかった。


真司さんの運転するBMW は、無事我が家に到着。

すると間もなくルミから電話があった。

「もしもし」

「ああ、理沙、ごめん、さっきは電車の中でさあ」

「理沙、何かあったの?」

「何かって?」

「何か悩みごととか」

「もしかして龍崎先生から聞いたの」

「あっ、うん」

「実はさあ、前に話したことあったでしょ、彼のお兄さんのこと」

「ああ、あの引きこもりだっていう」

「うん。私と彼とはね、その後もうまくいってて、ちょくちょく結婚の話なんかもしてるんだけど」

「あら!やったじゃないルミ」

「で、弟の結婚話をどうやって知ったのか 、結婚相手に会わせろって、突然部屋から出てきたっていうのよ」

「それって、いい方向に向いてるんじゃないの!?彼のお兄さんなんだから、会わないわけにいかないでしょ。それに、理由はどうあれ、ご両親も彼もひと安心なんじゃない」

「まあ、いい方にとればそういうことだけど、私としてはさあ不安というか、複雑というか・・」

「なるほどね。そんなことがねー・・」

「今日、これから会うのよ!そのお兄さんに。夕方、彼から電話があってさ」

「今日!こらから!!」

「あーもー、憂鬱。あっ彼が来たわ」

「とりあえず頑張って!ルミ」

「あーい。じゃあ、行ってくる」

「うん、fight!」

そこで電話は切れた。あーいかあ・・ルミも大変だな。


「何だって?山崎さん」

「彼氏のことでちょっとね・・」

「うまくいってないの?」

「その反対」

「はあ?」


「うひゃー、うひゃー」

「なんだそれ?春風」

「きー、きー」

「それ、もしかしてキーンのこと?」

「うん」

「どうしたの?駿」

「春風がさ、キーンって」

「えっ!」

「歯医者さんが好きなの?春風」

「うん!」

「ふーん」

すると

「・・うぎやー、うぎゃー」

「うわ!ビックリしたあ!春風、急に泣き出しちゃったよ」

「お腹空いちゃったかな。ちょっと早いけど、私たちもご飯にしましょうか」

「そうだなあ」

「カレーが出来てるから」

「じゃあ僕が温めてくるよ!」

「ありがとう」

「駿、これを春風にあげてくれる」

「ん?お菓子」

「うん、赤ちゃん用のね」

「ふーん」

「ひとつ食べてみたら」

「うん・・がぷ・・何にも味しないやあ」

「フフフッ」


「さあ出来たぞ!」

「わーい、カれーっ、カレーっ!」

「あーい、あれーっ、あれーっ!」

「ぷっ!今日は駿の真似ばかりね」

「いただきまーす!」

「サラダもいっぱい食べるんだぞ!」

「わかってるー!」

「あってうー」


そして、二人の子供たちはすでに夢の中の午後11時、ルミから電話があった。

「もしもし、ルミ?!」

「理沙」

「どうだった?」

「それがさあ・・・超いい男!」

「えっ?」

「お兄さんよ彼の。まるで桜井くん!」

「あの引きこもりのお兄ちゃんが」

「そう!」

それからルミの話は延々と続いた。気づくともう日付が変わろうとしている。

そして

「あー、私も春風ちゃんと駿くんに会いたかったなあ!」

「わかったわかった!またいつか連れていくわ」

「お願ーい!」

「じゃあね、切るわよ」

「はーい、お休みー」

やっと電話は切れた。

ふうっ!


ルミの話によると、彼のお兄さん、何年も引きこもりをしていた人とは思えないほど社交的で、清潔感のある好青年だったという。そしてお説教までしちゃったとか・・。

「なんで仕事しないんですか!?なんで前に進まないんですか!?なんで外にでて恋をしないんですか!?」って。

そうしたらキョトンとした顔をしてたけど、最後には真顔になって言ってくれたらしい。

「仕事をします!恋もします!前にも進みます!」って。


さすがルミだね!電話の口調は相当酔っぱらってたみたいだけど。お酒の力もあったのかな!?

でも良かったね、また結婚に一歩近づいて・・。




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